安定的に「まわっている」会社がこれから一番危ない…「未曾有の人口減少」を正しく認識できない企業の末路
「ゆでガエル」企業が、緩やかに衰退する日本経済で直面すること
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生産の上がらない日本の閉塞感を打破するにはどうすればいいか。複数の中堅・中小企業やスタートアップの経営をしてきた小松裕介さんは「現時点において日本企業は『まわっている』ために『ゆでガエル』の状況にあって、緩やかに日本経済は減退していっている。今、迫りくる危機を正しく認識することが必要だ」という――。(第4回/全4回) ※本稿は、小松裕介『1+1が10になる組織のつくりかた チームのタスク管理による生産性向上』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
生産性が上がらない根本にある「人間の性」
生産性が上がらない最も根本的で厄介な理由は「危機感がないから」である。
会社経営という仕事を長年していて思うのは、人間は、変わらなければならない明確な必要性がなければ、そう変われるものではないということだ。
私が企業再生で会社経営に携わらせてもらう時には、徹底的に情報開示を行う。
企業再生が必要になるまで傾いてしまう会社の多くは、経営者が途中から自分に都合の良い情報だけを発信するようになり、悪い情報を隠し始める。
もちろん傾いた会社の社員もなんとなく自分の会社の業績が悪いことを認識しているが、変化を嫌がるため、経営者が正しく情報開示しないことを理由として行動を変えようと思わないのである。
以前、サービス業の会社の企業再生をしていた時に、とある事業が明らかに来客数が少なく大赤字に陥っていたため、そのことを経営会議で指摘した。すると、その会社の幹部社員たちは大赤字であることをあたかも初めて知ったかのような口ぶりで答え始めたのである。
もちろん、彼らがその事実に気付いていないはずはない。幹部社員たちは、当該事業の人員整理や事業閉鎖をしたくなかったから、見て見ぬふりをしていたのだ。
人間は見たいものだけを見る生き物で、自分がやりたくないことについては簡単に嘘をつき知らないふりをする。
私の企業再生の経験から言えることは、経営状況が悪化しており、このままでは会社が存続できない、変わらなければならないという必要性さえ正しく共通認識できれば、再生への目途が立ったと言っても過言ではない、ということだ。