ピント外れの会話にはこれがたりない…会話の質が格段に高い「聴き上手な人」に共通する相槌以外の要素
相手の話し方、声のトーン、体の動かし方、表情から情報を受け取っている
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大切な相手との会話の質を高めるには何をすればいいか。本当に聴き上手な人は五感をフルに使って、相手の話し方、声のトーン、体の動かし方、表情から、なんらかの情報を受け取っているという。臨床心理士の平木典子さん、明治学院大学心理学部心理学科教授の野末武義さんの共著『大切な人とうまくいく「アサーション」』(三笠書房)より紹介しよう――。
人は相手の話の中で自分が一番ピンとくるところに反応する
相手が悩みを打ち明けてくれたり、大変な状況に追い込まれているという話を聞くと、「相手の役に立ちたい」「問題を少しでも解決してあげたい」と思うものです。
それが大切な人であればあるほど、いいところを見せようと無理をしてしまいます。
そんなとき、相手の話を聞きながらも、頭の中では「どんなひと言をかけようか、なんと言ってアドバイスをしようか……」と、そればかり考えてしまい、実はきちんと話を聴けていない場合があります。
または、「相手の話の中で自分が一番ピンとくるところ」に反応することで、相手を理解している“つもり”になることもあります。
多くの人たちが、次のようなピント外れの会話をしているのではないでしょうか。
男性「今日、外回りの営業でたまたま先輩と一緒になって。そうしたらずっと愚痴ばっかり聞かされて」
女性「ふーん」
男性「最近自分の成績が上がらないのは、上司が評価してくれないからだって。まったく、まいったよ」
女性「そんなの、聞いてあげることないじゃない」
男性「いや、一応相手は先輩だし。なんて言ったらいいかわかんなくて……」
女性「そうやって優しいから、相手につけ込まれるのよ。そんな面倒くさい人と一緒になったら今度から、“僕は違う営業先がありますので”ってはっきり言わないと。この間だって……」
男性「(女性の話をさえぎって)もういいよ。まるで俺が悪いみたいじゃん」
男性のほうは、ただ「大変だった。疲れてしまった」ということを聞いてもらいたいだけ。それをわかってくれさえすればいいと思っている。
一方、女性はよかれと思って具体的なアドバイスをしようとしますが、それは相手が「本当に聴いてほしいと思っていること」と食い違ってしまったのです。