学生時代は365日ラグビー漬けの日々だった…ANAファーストクラスでも提供「メゾンカカオ」創業者の意外な経歴
高校は推薦でラグビー強豪校へ、スター選手となったものの…
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【後編】開業時は「1年もたない」と噂された…即位の礼の手土産にもなった「メゾンカカオ」異色の経歴を持つ社長の哲学 メゾンカカオは鎌倉に本社を構えるチョコレート・ブランドだ。2015年に創業し、ANA国際線ファーストクラスや即位の礼の各国首脳への機内手土産として採用されるなど、高い評価を受けている。創業者で社長の石原紳伍さんは、学生時代はラグビー選手として活躍、大学卒業後に入社したリクルートでは営業成績の新記録を達成したという異色の経歴の持ち主だ――。
小学校に配られたヴィーガンチョコレート
2025年2月14日、神奈川県茅ヶ崎市のすべての市立小中学校と県立茅ヶ崎支援学校の生徒および教職員、名古屋市立の全小学校・全特別支援学校小学部の生徒に、花の形をした個包装のチョコレートがひとつずつ配られた。総数、12万9800個。配布したのは、茅ヶ崎市今宿に工場を構える「メゾンカカオ」というチョコレート・ブランドである。
プレゼントされたチョコレートは植物性素材のオーツミルクを使ったヴィーガンチョコレートで、地球環境の保全などを訴えるメゾンカカオの社長の熱いメッセージが添えられていた。
ANAのファーストクラスで提供されたり、G20大阪サミットや即位の礼の土産物に選ばれるなど、華々しい実績を誇るメゾンカカオの社長は、石原紳伍さん(40歳)という。高校時代にラグビーの花形選手として活躍した、異色の経歴の持ち主だ。
石原さんの、一見派手な立ち回りの背後に、いったいどのような哲学が潜んでいるのか。本社のある鎌倉でお話をうかがうことにした。
苛烈を極めたラグビー部での日々
大阪生まれの石原さんの実家は、牛のホルモンを中心とした串焼き屋を経営していた。店は毎日深夜の3時、4時まで営業しており、石原さんは弟とふたり、両親の仕事が終わるまで店の奥の休憩室で眠り、店が終わると両親と一緒に二階に上がって布団に横になるという生活を送った。文字通りの職住一致。両親が働く姿と客の笑い声が、幼少期の「色の濃い」思い出だという。
「実家の近くには鉄工場が多くて、小学校まで通う通りはいつも油が焦げた匂いがしました。ものづくりが、とても身近にある環境でしたね」
中学からラグビーに打ち込み、高校は推薦でラグビーの強豪校に入学。1年生でレギュラーの座を射止め、自他ともに認めるスター選手となった。
だが、強豪校のラグビー部の日常は苛烈を極めた。練習の厳しさもさることながら、先輩後輩の上下関係がとても厳しかった。
「僕がいた当時の話ですが、3年生にひとり、2年生にもひとり『師匠』がいて、練習が終わると、そのふたりがドロドロに汚したユニフォームから下着からスパイクから、すべてを洗濯しなければなりませんでした。師匠がシャワーを浴びている間はバスタオルを持ってシャワールームの中で待機するんです。師匠が飲むドリンクもそれぞれ5リットルずつ、毎日用意しなければなりませんでした……」