「大学ならどこでもいい」わけではない…「大卒<高卒」という年収逆転が生じる"新型格差"社会がくる

「大学ならどこでもいい」わけではない…「大卒<高卒」という年収逆転が生じる"新型格差"社会がくる

止まらない物価高騰で生じる新しい格差とは何か。第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣さんは「所得格差よりはるかに大きな影響を持つ、3つの新型格差がある」という――。 ※本稿は、永濱利廣『新型インフレ 日本経済を蝕む「デフレ後遺症」』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

所得格差より深刻な3つの新型格差

新型インフレがもたらす格差は、所得以外の格差の広がりにもつながりうる。それは、「機会の不平等」「社会的地位の差」「生活の質の差」だ。こうした格差は、もしかすると人生において所得格差よりはるかに大きな影響を持つかもしれない。

一時期盛んに言われた「親ガチャ」や「上級国民」も、新型格差の落とし子のような言葉だ。生まれ落ちた環境によって、機会に恵まれたり機会を奪われたり、社会的地位が固定されたり、生活の質がまるで異なったりすることである。

また、世代間や地域間でも、こうした新しい格差が生じている。そこで新型格差が、なぜ「これから」なのか、主たる3つの要因を順に見ていこう。


1 デジタル化の進展

これから新型格差を生む最大の要因は、デジタル化の進展だろう。AIやIoTなどの技術革新は、労働市場を大きく変えようとしている。

AIやIoTの技術を使いこなせる人材は争奪戦となっている。「新人でも年収1000万超」といった高収入を得られる一方で、そうでない人々は取り残されるかもしれない。

「数年後にホワイトカラーはいなくなる」と言われるのは極端だが、AI技術が発展すれば、特に事務職などのマンパワーは必要性が低下していくだろう。

ただし、AIですべてが置き換わるわけではない。たとえば、短期的な為替予測でChatGPTが「1ドル200円」という非現実的な予測を出したことからもわかるように、AIには依然として限界がある。むしろ、手に職をもつ専門的な技能者の価値は、今後も維持されていくどころか高まっていく可能性すらあるだろう。


2 グローバル化の広がり

グローバル化も新型格差を生む要因だが、こちらは「これから」というよりも、すでに進行しており、国によってはかなりの度合いで進んでいると言っていいだろう。

経済のグローバル化は、新興国を豊かにし、国と国の格差を縮小させてきた。たとえば、日本人が東南アジアのリゾートで「低価格で贅沢な夏休み」を過ごしていた時代は終わり、多くの国で物価も生活水準も上昇している。

しかし、このようなグローバル化は、逆に国内の格差を拡大させる。アメリカを見れば理由は明白だろう。生産拠点の海外移転により、組立てなどの単純労働が新興国に流出し、国内でそうした仕事に従事していた人たちの所得が大きく下がっている。

「地元の高校に行って、地元の企業に就職して、週末は家族と過ごして一生安泰」だったはずの中間層が、低所得者層に転落したのだ。こうした失意や不満は外国人労働者への憎しみや極端な愛国心にかわり、2016年のイギリスのEU離脱決定や2017年の第一次トランプ政権誕生につながる原動力となった。

詳細を見る

この記事を読んだあなたにおすすめ

画像

https://kidsna.com/magazine/article/entertainment-report-240921-26996518

2025.05.28

ニュースカテゴリの記事

「イクメンって言葉が嫌い」は男女の分断を広げる?【てぃ先生×治部れんげ】
子育てや教育のテーマを元に読者から集めた質問にゲストスピーカーと対話する動画記事コンテンツ。