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子どもの中耳炎を熱や痛みなど症状でみる早期発見のポイント
Profile
横浜市立大学医学部卒。耳鼻咽喉科専門医。補聴器相談医。大学病院や地域の中核病院で研鑽を積んだ後、おひさまクリニックにて耳鼻咽喉科を担当。小児から高齢者まで幅広く対応しています。
中耳炎は幼児期の子どもがかかりやすい病気のひとつ。子どもが耳を痛がる場合は、もしかしたら中耳炎にかかっているかもしれません。今回は、中耳炎の症状や早期発見のポイント、治療法と予防について解説します。
3歳までに70%の子どもがかかる中耳炎
中耳炎とは、鼓膜の内側にある「中耳」という部分に、細菌やウイルスが入り込んで炎症を起こす病気です。
放っておくとひどくなったり、難聴になったりする場合もあるため、早めに気付いて治療をすることが大切です。
中耳炎は、特に生後5カ月頃から2~3歳までの頃になりやすく、3歳までにおよそ70%の子どもがかかるといわれています。なぜ子どもは中耳炎にかかりやすいのでしょうか。
子どもが中耳炎にかかりやすい理由
子どもが中耳炎にかかりやすい理由には2つあります。
まず一つ目は、子どもは免疫が未発達で抵抗力が弱いということ。
通常は耳にばい菌が入っても簡単には中耳炎になりません。しかし、抵抗力の弱さから風邪を引いて鼻の奥の上咽頭の菌のバランスが崩れやすい子どもは、中耳にばい菌が入ってしまう可能性が高くなっています。
二つ目は、耳の器官の形状の違いです。子どもの耳と鼻をつないでいる耳管(じかん)は、大人と比べて太くて短くなっています。
のどから耳にかけて緩やかで水平に近い角度になっているため、上咽頭の菌が中耳に入りやすいのです。
しかし、成長にともない耳管の形状は大人の耳管に近づきます。年齢があがるほど中耳炎にかかる子どもは少なくなっていきます。
子どもの中耳炎は4種類
子どもの中耳炎には、
- 急性中耳炎
- 滲出性中耳炎
- 慢性中耳炎
- 真珠腫性中耳炎
などがありますが、特に幼児期の子どもに多いのが細菌やウイルスが中耳に感染して炎症を起こす急性中耳炎です。
これには、風邪症状を起こすウイルスが200種類以上あるため子どもは風邪を引きやすいということと、先ほど説明した耳管の形状によって細菌やウイルスが中耳に移動しやすいということが関係しています。
そして、中耳に浸出液がたまっている場合は、滲出性中耳炎と診断され、長く続いたりくりかえして慢性中耳炎になることもあります。
真珠腫性中耳炎とは、鼓室という鼓膜の奥の空間に真珠のような組織が大きくなっていき耳の組織を破壊していく病気です。
痛みやめまいが出始めてから初めて気づくケースもあるので注意が必要です。
中耳炎を疑う子どものサインと症状
子どもが小さい場合は、耳の痛みや異変をうまく伝えることができません。風邪を引いてから少し遅れて発症することが多いので、保護者が注意深く子どもの様子を見守ることが大切です。
急性中耳炎のサインには、
- 耳を痛がる
- 発熱
- 耳垂れ
があります。赤ちゃんの場合は、しきりに耳をいじったり、頭を振ったり、なかなか泣き止まない様子がみられることも。
熱は夕方から夜にかけて高くなる傾向があり、耳垂れは膿が出てきているサインです。耳に痛みがある場合はすぐに気づくことができますが、水がたまって聞こえづらいという場合は、なかなか保護者が気づきにくい場合もあります。
また、黄色や緑、茶色など色がついている鼻水は、感染症がうたがわれ、中耳炎の可能性が高くなります。子どもの鼻水が続く場合や、気になる症状がある場合はすぐに耳鼻科を受診しましょう。
中耳炎の治療と過ごし方の注意点
中耳炎の治療方法と鼓膜切開の目安
中耳炎の診断は、問診と耳鏡や内視鏡により鼓膜の所見を確認して判断します。耳垂れが出る場合は細菌検査で原因菌を調べたり、難聴が合併した場合はその程度を聴力検査で調べます。
中耳炎は、適切な治療を行えば完治する病気ですが、治療を途中でやめてしまう反復性中耳炎(はんぷくせいちゅうじえん)、慢性中耳炎(まんせいちゅうじえん)に移行する場合もあるので完治させることが大切です。
軽症の場合は経過観察を行い、症状が強い場合は抗菌薬を使って治療をします。抗菌薬に耐性のある菌もいるため、薬を飲んでもなかなか治らないときは再度受診しましょう。
熱がつづく場合や、滲出液や膿が溜まっている場合は、鼓膜に専用の鼓膜切開刀で穴を開ける鼓膜切開の処置をとることも。通常、鼓膜の穴は自然に閉じていきますが、炎症が長引いてなかなか閉じない場合は鼓膜パッチ術を行うケースもあります。
中耳炎はうつる?保育園や幼稚園を休ませるかどうか
子どもが中耳炎になったときに、気になるのがお風呂や登園のことではないでしょうか。中耳炎は、基本的に人にうつる心配がないので、お風呂もプールも入ることが可能です。
鼓膜に穴が開いている場合は、耳の中に水が入らないように注意しましょう。症状によっては控えた方がよい場合もあるので必ず医師に確認してください。
園を休ませるかどうかについては、熱の有無や子どもの様子に応じて考えましょう。園によっては登園に関するルールを設けていることもあるので、事前に確認しておきましょう。
中耳炎にならないために予防ケアを心がけて
中耳炎の予防には、日頃から鼻水をためたままにしないことが重要です。
赤ちゃんや小さい子どもの場合は、保護者が鼻吸い器を使って鼻水をとってあげましょう。過度な吸引は、粘膜が傷ついて鼻出血が出ることもあり注意が必要です。吸引で呼吸がしやすく、楽になることを覚えると好んで吸引してほしがる子どももいます。
できるだけ鼻をこまめにかみ、鼻をすする行為は極力控えるということも大切です。
鼻すすりは、耳管に鼻水が流れて炎症を起こしやすくなってしまう危険があるので、癖にならないよう声をかけてあげることも忘れないようにしたいですね。
また、栄養バランスのとれた食事や、睡眠時間の確保を意識して体の免疫を高めることも中耳炎の予防につながります。
マスクの着用や手洗いうがいも徹底し、風邪をひかない生活習慣を心がけながら過ごしましょう。
監修:金髙清佳(おひさまクリニック)
Profile
金髙清佳(おひさまクリニック)
横浜市立大学医学部卒。耳鼻咽喉科専門医。補聴器相談医。大学病院や地域の中核病院で研鑽を積んだ後、おひさまクリニックにて耳鼻咽喉科を担当。小児から高齢者まで幅広く対応しています。
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