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男性不妊の原因は?病院での検査、治療方法を解説
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「男性不妊」「男性の妊活」という言葉が一般的になりましたが、具体的に何から始めればよいのか、病院でどんな検査や治療をおこなうのか不安…という方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、厚生労働省の妊活に関わる調査結果、男性不妊の主な原因、病院での検査内容や治療の流れについて解説します。
不妊原因の半数は男性側にある
晩婚化が進む近年、不妊治療を受ける夫婦が増えていますが、そもそも不妊とは、「男女ともに健康で、1年間避妊をせずに性交しても妊娠しない場合」と定義されています。
かつて不妊といえば妊娠・出産する女性側の問題と考えられていましたが、男性側にその原因がある「男性不妊」の存在が近年注目を浴び、検査や治療を考えている方もいるのではないでしょうか。
不妊は女性だけの問題ではない
厚生労働省の不妊治療に関する調査によると、約3組に1組の夫婦が不妊を心配したことがある、約5.5組に1組の夫婦が不妊治療、または検査を受けたことがあるという結果が出ています。
不妊にはさまざまな原因があり、主な内容としてあげられるのは女性の排卵がない、病気にかかったことがある、加齢といったもの。さらに、WHO(世界保健機関)によると、不妊の原因の半数は、無精子症、乏精子症など、男性側にあることが明らかになっています。
また、不妊治療と仕事の両立に関する調査では、両立している・考えているという人は、53.2%。両立ができない・できなかったという人は34.7%で、「精神・体調面の負担が大きい」「通院回数が多い」という理由が主にあげられました。
2017年、日本では約17人に1人の割合で、生殖補助医療により子どもが誕生しているという結果も出ており、これは全出生児の約6%にあたり、16.7人に1人は何らかの不妊治療によって誕生していることを示しています。
男性不妊のおもな原因
男性不妊のおもな症状は、
などがありますが、いずれも自分では自覚しづらいという特徴があります。自覚的な症状としては、
などがあげられます。
男性不妊のセルフチェックポイント
男性不妊は以下の項目でセルフチェックすることができます。
ひとつでも当てはまる場合は、一度不妊治療クリニックなどへ相談してみましょう。
また、加齢はもちろんのこと、以下のような生活習慣も製紙に影響を及ぼし、不妊の原因となりえます。
意外とも思えますが精巣は、体温よりも約2~3度低いことで機能する状態に。長風呂やサウナなどに入る習慣のある方は十分注意が必要です。
また、男性不妊になる既往歴として、
- 停留精巣や精巣捻転
- 糖尿病
- 脊髄損傷
- 性感染症
- おたふく風邪時の精巣炎
- 鼠径ヘルニアの手術
- 癌治療で抗がん剤や放射線治療を行った場合
- 避妊手術での精管結紮(パイプカット)
- 精巣癌などで後腹膜リンパ節郭清を行った場合
などがあげられます。
下腹部や外性器の手術歴は、子供の頃に行われていて本人は記憶にないこともあるため、必要に応じ家族へ確認してみてください。
男性不妊の検査内容
男性の不妊検査は、主に精液検査と泌尿器科的検査の2種類。実際に男性が妊活のために通院する場合の、検査や治療方法についてご紹介します。
精液検査
精液検査は、受診されるほとんどの方が受ける検査で、精液を採取し、正常値と比較して数や動き、量、濃度、性状が異常がないか調べるもの。
ただし、精子は日によって量、質とにも変化があるため、悪い結果が出たとしても再度検査を行って問題がない場合もあります。
検査の前1週間弱は精子を出すことを控え、病院で採取、または自宅で採取後すぐに病院に持ち込む方法があります。
高度な不妊治療専門のクリニックでなくとも、精子検査のみをおこなっているクリニックもあるため、まずは精子の状態を知ることから始めましょう。
泌尿器科的検査
泌尿器科的検査は、採血やエコー検査など比較的短時間でできる検査です。
まず診察では、不妊症につながる病気の既往の有無はもちろんのこと、勃起、射精といった性生活の状況を確認。
また、精巣などの外陰部の診察や、触診で精索静脈瘤の有無などをみていきます。
次に陰嚢にエコーを当てて陰嚢・精索・精巣を観察。適切な治療(手術)を行えば、男性機能を改善させる可能性が高い精索静脈瘤の診断にも有効で、稀に精巣がんが発見される場合も。
一方、内分泌検査の採血では、血液中の
- 男性ホルモン(テストステロン)
- 性腺刺激ホルモン(LH、FSH)
- プロラクチン
などを調査。
- 精液異常
- 勃起障害
- 射精障害
がある場合に原因を検索することができます。
これらに加え、精子形成障害の原因となる精子数が極端に少ない、または無精子症の場合、採血から染色体・遺伝子検査もおこない、染色体の変化や遺伝子異常がないか調査します。
病状によってはこのほかにも特殊な検査がありますが、基本的に男性側の検査は1回で終わります。
それに対し女性の検査は月経周期に合わせて採血するなど、1、2か月近くかかる場合もあるため注意が必要です。
検査後の妊活の流れ
男性不妊であることが分かった場合、原因に応じて投薬や治療、手術、人工授精を行います。検査をおこなっても異常が見つからず原因がはっきりとしない場合もありますが、妊娠を目標に治療を行うことは可能です。
主な治療方法は、タイミング法、人工授精、体外受精など。段階を踏みながら治療を進めていきます。
タイミング法
超音波検査やホルモン検査で排卵日を予測して、性交日を指導。妊娠の確率を上げるために、排卵誘発剤を使用するケースもあります。
人工授精
運動率の高い精子を採取し、直接注入する方法。自然妊娠の場合、精子は頸管を通って卵管までたどり着きますが、人工受精は卵子と精子が出会うまでの距離を縮めることで妊娠の確率を高めます。
体外受精
採取した卵子と精子の受精を体外で行ない、受精卵が細胞分裂したことを確認してから子宮に戻す方法。採卵するときに痛みを伴う場合がありますが、他の治療法よりも妊娠率が高い方法です。
体外受精に取り組む場合、ホルモン調整の薬が影響して女性に吐き気や頭痛、めまいなどを誘発することも。卵子の採卵をするとき、痛みを感じることも多く、男性よりも女性の妊活は身体的負担が大きいものといえるでしょう。
最短の不妊治療を目指すためにも、女性の婦人科と男性の泌尿器科などの受診を連携して行うようにしましょう。
妊活は夫婦で協力して前向きに
妊娠を希望する場合、これまで女性ばかりがからだに気を遣ってきましたが、今後は生活習慣の見直しも含め、男性側も積極的に妊活に取り組むことが大切です。
また、妊活が長引けば費用もかさむため、国や自治体の助成をはじめ、勤め先などの支援制度を活用したり、通院のしやすさ、病院の方針、実績件数などから不妊専門の病院を選びましょう。
不妊治療のいちばん最初のステップとして、まず男女ともに検査を行い、原因の特定をおこなうことが、時間も費用も最小限に抑えることにつながります。
そのために、夫婦で腹を割って話し合い、自然な妊娠を目指した診療を行なうのか、自費診療まで考えに入れるのかなど、方針にズレがない状態で妊活始めましょう。
もちろんすべての症状の改善には個人差があり、改善法や解決策も人によって異なります。よい結果が得られないときでも夫婦で協力し、前向きに妊活に取り組みましょう。
出典:「不妊のこと、1人で悩まないで-不妊専門相談センターの相談対応を中心とした取組に関する調査-
監修:杉山力一
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2021.02.12