こちらの記事も読まれています
マスク生活が子どもの見た目に影響。口呼吸の危険サインとは
Profile
内科医/東洋医学会漢方専門医/NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長
内科医/東洋医学会漢方専門医/NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長
内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長。1995年山口大学医学部卒業。同大救急医学講座に入局し集中・救急治療への従事を経て2006年みらいクリニック院長に就任。あいうべ体操(息育)、ゆびのば体操(足育)の2つの「ソクイク」で病気にならない体つくりを提供。メディア出演や、講演など幅広く活躍するメディカルエンターテイナー。著書に、『健康でいたければ鼻呼吸にしなさい あいうべ体操と口テープでカラダがよみがえる!』(河出書房新社)がある。
新しい生活様式が呼びかけられ、マスク着用が習慣化している現在。幼い頃からマスク生活を強いられる現代の子どもにとってどのような影響があるのでしょうか。マスク着用から引き起こされる健康トラブル”マスクシンドローム”の危険性と呼吸の重要性が分かった前編。中編では、口呼吸がもたらす弊害についてみらいクリニック院長の今井一彰先生に解説してもらいます。
新型コロナウイルスの流行に伴い、マスク着用が当たり前となった現在。このような「新しい生活様式」が子どもに重大な弊害を及ぼすというみらいクリニック院長の今井一彰先生。
前編では、マスク着用によって引き起こされる口呼吸は、さまざまな健康トラブルの原因となるため、体の機能を正常にするには鼻呼吸の習慣が基本だということを教えてくれました。
およそ7割の子どもが口呼吸になっているという事実は、これからの子どもたちの成長にも大きな影響を及ぼす危険性があると今井先生は指摘します。
中編では、口呼吸の心身への影響と子どもの口呼吸を見分けるサインについて聞きました。
口呼吸がもたらす子どもの成長への弊害
「口呼吸が発症に関係していると考えられる病気は
・アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、ぜんそく、花粉症、鼻炎など)
・呼吸器の病気(インフルエンザ、風邪、肺炎、気管支炎、上咽頭炎など)
・精神の病気(うつ病、パニック障害、全身倦怠感など)
・消化器の病気(便秘、下痢、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、痔、胃炎など)
などたくさんありますが、最も怖いのが、子どもの成長や容貌に大きな影響を与えるということです。
口呼吸のお子さんは、口で呼吸するので、当然ぽかんとするお口になる。それが習慣化すると、顔が長くなっていきます。
これには咀嚼も関係していて、よく噛むことで顎が発達し、人間の顔が丸くなるようになっているのですが、口呼吸をしていると、息を吸うためによく噛まないで飲み込むことが多くなります。そうすると、顎が発達せずに顔はどんどん長くなってしまう。
顔が長くなると、当然鼻が狭くなり、鼻で息をしにくくなります。そうすると、今度はますます口呼吸になるという悪循環が起こります。鼻腔が狭くなると、鼻づまりを引き起こしやすくなり、いびきにも繋がります。
それだけではありません。鼻が狭くなって顔が長くなると、丸い目の玉が押し付けられて前後に長くなります。何が起こるのかというと、眼球の変形によって近視が起こります」
表情までも変えてしまう口呼吸
「口呼吸の子どもは食べ物を飲み込むとき、舌で前歯を押すように飲み込む癖がつきやすくなります。このときに生じる力で口の中では、歯並びが乱れ、いわゆる出っ歯や受け口になったり、上下の噛み合わせが悪くなったりします。
これらは、舌が上あごから離れて下がり、力のバランスが崩れてしまうということが関係しています。
さらに、口呼吸の習慣は、
・下唇が出ていて厚ぼったい
・あごの部分に梅干しのようなふくらみとシワができる
・左右の目の大きさが違う
・目の周りが腫れぼったく、むくむ
など、特有の顔貌を示します。
原因は、口を閉じていないために、顔の筋肉が十分に使われていないからです。マスクを常に着用している現代の子どもたちは、人とのコミュニケーション時に表情を動かす機会が減り、今までよりもさらに表情筋を衰えさせる状況になっています。
新型コロナウイルスの家庭内感染を恐れて、家の中でもマスクを着用するという話もよく耳にしますが、親子がそれぞれ表情が見えない環境で過ごしていることを非常に危惧しています。
子どもというのは、たとえば舌を出したら、同じように「べー」と出したり、にっこりすると笑顔になったり、ミラーニューロンによって同じ動きをしますよね。
コミュニケーションを通じて社会性を育んでいくはずが、マスクをしていると表情が読み取れずに、意思疎通が難しくなってしまう。マスクは表情筋を動しにくいため、無自覚のうちに表情を動かす機会が減っているのです」
歯並びの悪化や表情の変化は、発育過程の子どもが特に陥りやすいと今井先生。その影響は、心の健康にも及ぶといいます。
負の連鎖が引き起こす心の病
「口呼吸はメンタルな部分にも大きく関わっていて、心の病も誘発します。体に負の連鎖を引き起し、なかなか抜けられないという状況を引き起こします。
私たちは普段、嬉しい、楽しいといった気持ちを前頭葉でコントロールしています。
前頭葉は鼻呼吸で冷える仕組みになっているのですが、口呼吸では前頭葉が冷えなくなる。普段、脳はすぐにオーバーヒートしてしまうので、冷やさなければいけないのですが、口呼吸ではそれを冷やすことができません。
メンタルなことに対しては、みなさん、カウンセリングやメンタルセラピーなど、精神科や心療内科といった心理面からのアプローチを連想しますよね。ですが、実は口呼吸がメンタルな部分にも密接に関わっていることを知らない方が多い。
薬を飲んでもなかなか改善されない場合は、呼吸を変えてみてください。鼻呼吸によって体が変わると心の病気も確実に改善します。薬を飲むという選択肢以外に、呼吸を見直すという選択肢があることをぜひ知ってほしいです」
口呼吸になっている危険サイン
さまざまな病気を発症する可能性があるだけでなく、心にも影響を及ぼすという口呼吸。今井先生が前編で指摘したとおり、子どもの口呼吸を保護者が認識していないケースは少なくありません。
「保護者にとって分かりやすい子どもの変化のひとつに、口臭があります。くちびるや口の中の乾燥や、風邪を引くなどでも口臭は発生しますが、口呼吸が習慣化していると、臭いがきつくなります。
もうひとつのポイントは、睡眠時の子どもの状態。寝ているときに口が開いてしまう子どもは口呼吸が重症化しているサインです。起きているときに口が開いているお子さんでも、睡眠時はたいてい口が閉じるんですよ。
そして、口を開けたまま寝ていると、当然いびきをかきます。それが中耳炎の発症率を上げ、抗生剤の使用量の上昇につながるという報告もあります。さらには、心疾患や高血圧など成長した成人後にも影響を与えます。
子どもは、いびきなどをかかずにすやすや眠る。これが普通の状態です。そうでない場合は、正しい鼻呼吸を親が教えていかなければなりません」
実際に、自分の子どもに口呼吸のサインが見られたとき、親である私たちには何ができるのでしょうか。後編では、“子どもの呼吸は親の課題”と語る今井先生に、子どもの口呼吸への対策について解説してもらいます。
Profile
今井一彰
内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長。1995年山口大学医学部卒業。同大救急医学講座に入局し集中・救急治療への従事を経て2006年みらいクリニック院長に就任。あいうべ体操(息育)、ゆびのば体操(足育)の2つの「ソクイク」で病気にならない体つくりを提供。メディア出演や、講演など幅広く活躍するメディカルエンターテイナー。著書に、『健康でいたければ鼻呼吸にしなさい あいうべ体操と口テープでカラダがよみがえる!』(河出書房新社)がある。