子どもの7割が口呼吸。マスク生活で見落としがちな呼吸の重要性

子どもの7割が口呼吸。マスク生活で見落としがちな呼吸の重要性

新型コロナウイルスの流行に伴い、マスク着用が当たり前となった現在。このような「新しい生活様式」が子どもに重大な弊害を及ぼすというみらいクリニック院長の今井一彰先生。前編では、マスク着用の習慣がもたらす健康被害と口呼吸についての危険性について聞きました。

今井一彰(みらいクリニック)

マスク着用が引き起こす子どもの健康被害

新型コロナウイルスの流行に伴い、「新しい生活様式」が社会に浸透しつつあります。一人ひとりの感染対策が問われるなか、その中のひとつとして挙げられるのが、人との間隔が十分に取れない場合に行うマスク着用です。

特に注意が必要なのは子どもたち。マスク着用によって子どもの心身に“マスクシンドローム”とも言うべきさまざまな症状をもたらしていると、みらいクリニック院長の今井一彰先生はいいます。

「マスク生活が当たり前となった今、マスク着用による子どものさまざまな健康トラブルが起こっています。

マスクシンドロームの症状として

・歯肉炎
・虫歯
・喘息
・アトピー
・歯並びへの影響 など

を挙げていますが、なかでも1番多いのが歯肉炎です。

そして、歯肉炎の症状を引き起こす大きな原因になっているのが口呼吸。

マスクをしていると、人に見られていないからと気が抜けることや、マスクの細かい網目によって感じる息苦しさによって、無意識のうちに口呼吸になりやすい。
iStock.com/Phynart Studio
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口呼吸は、虫歯のリスクも高めるだけでなく、実は感染症にかかりやすいという研究結果もあります。

長崎県の子ども園の調査によると、インフルエンザにかかる子どもは口の中が荒れていました。虫歯が多い、歯垢が多いなど口腔内の環境が悪いほど、感染症にかかりやすいことがわかっています」

子どもの呼吸回数は1日に約3万回

口腔内の環境が悪いと感染症にかかりやすい理由には、呼吸を鼻でするか、口でするのかということも関わっていると今井先生は指摘します。

「人の呼吸は一日におよそ2万回。子どもの場合は、呼吸回数が多いので3万回にも及びます。

鼻呼吸の場合は、鼻にたくさんフィルターがあるので、温かくて湿った、そしてきれいな空気を送ることができるのですが、口呼吸の場合はそういった機能が働かないので、それだけ体内への影響に差が出ることになる。

たとえば、冬のような寒い時期には、乾いた空気や冷たい空気、そして汚い空気を、口から吸うことで、一気に感染症にかかりやすくなってしまうということが起きます。
iStock.com/Sasha_Suzi
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3万回の呼吸を量で考えると、季節によって多少変わってきますが、およそ10kg。空気はもともと軽いですから、1日に吸う空気の量がどれほど多いかということが想像しやすいと思います。

汚い空気の中にいたとしたときに、それを鼻呼吸でするか、口呼吸でするかで体にかかる負担が大きく変わってくるのです」

呼吸の仕方で感染リスクが変わる

「遺伝性の病気や中毒、ケガなどは当てはまりませんが、人間の体は本来正しい使い方をすれば、健康が保たれるようにできています。つまり、体を正しく使ってさえいれば病気にかかりにくくなります。

呼吸がまさにそう。本来、鼻呼吸が正しい体の使い方のはずですが、口呼吸という誤った使い方をするから、体調が悪くなってさまざまな病気を発症する。

体の器官には、それぞれに役割がありますが、鼻には鼻だけの役割があります。私たちが鼻を意識するのは、ふつう匂いを嗅いだときでしょう。

ところが、鼻には、匂いを嗅ぐ以上に高度なからだの機能と健康、命を守るという大事な役割があります。それが呼吸をするということ。

鼻は呼吸をする器官であり、命の入口ともいえる重要な器官。私たちの体は、鼻で呼吸することによって正常に働くようになっているんですよ。

口呼吸をしていると、体を守る仕組みである本来の機能が使えなくなる=体にストレスがかかっている状態に。さらに、鼻というフィルターを通さず、直接リンパ組織に空気が触れることによって、より感染しやすい状況になってしまうのです」

のどには、”ワルダイエルのリンパ輪”というリンパ組織の集団があり、その名前のもとになった、19世紀のドイツの解剖学者ハインリンヒ・ワルダイエル博士は、『すべての病的現象は、このリンパ組織の感染に始まる』と指摘しています。
ワルダイエル
「病気になる過程は4ステップ。

①病原体が口からどんどん侵入する
②リンパ組織自体が悪玉菌のたまり場となり、十分に働けなくなる
③免疫の作用が低下し、その結果として免疫システムに異常が起こる
④全身にさまざまなトラブルをもたらす

風邪やインフルエンザなどの感染症を防ぐには、のどのリンパ組織をいかに感染させないかということが重要です。

鼻での呼吸は、口からの病原体や有害物質の侵入を防いだり、体の冷えを抑えたりと、私たちの体が正常に機能するための役割があります。そのため、鼻呼吸という基本をしっかり守ることが何より求められるのです」

呼吸は免疫の3本柱のひとつ

「よく免疫力を高めるための方法として食事や睡眠が挙げられますが、呼吸はそれらと並んで免疫機能を正常にするための立派な柱のひとつ。

呼吸ができなければ睡眠時無呼吸症候群といわれるように、質のよい睡眠はとれないですし、鼻炎の影響で口呼吸になり満足な咀嚼ができないというように、食事にも影響を及ぼしてしまいます。

呼吸はすべての健康の源なのですが、気づいている方がとても少ないですね。たとえば、インフルエンザ対策では、感染予防をしようと手洗いやうがい、マスク着用に必死になりがちですが、呼吸を見直すということはなかなかしないのではないでしょうか。
iStock.com/SanyaSM
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そして、最も私が危惧しているのが、子どものおよそ7割が口呼吸になっているということです。

保護者の申告だと、子どもの口呼吸の割合は2割くらいとなっていますが、専門家や歯科医、耳鼻科医から見ると、その率は6割ぐらいに上がります。小学校の調査でも約7割のお子さんが口呼吸という結果が出ている。

なぜ、保護者が自分の子どもが口呼吸になっているかどうかを見分けられないのかというと、口呼吸は病気ではなく、人間の癖ということが関係しているから。

子どもが口呼吸かどうか確認する際は、口呼吸じゃないだろうという目で見るのではなく、口呼吸かもしれない、口呼吸だろうという前提で見ることが重要。

これからますます感染症が流行る季節になっていきますが、自分の体を正常に働かせることで免疫を高められるよう、お子さんといっしょに呼吸を見直してみてください」

子どもの口呼吸は、感染から体を守るということだけでなく、子どもの成長にも大きな影響を与えると今井先生は指摘します。中編では、口呼吸の心身への影響と子どもの口呼吸を見分けるサインについて解説します。
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今井一彰(みらいクリニック)

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内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長。1995年山口大学医学部卒業。同大救急医学講座に入局し集中・救急治療への従事を経て2006年みらいクリニック院長に就任。あいうべ体操(息育)、ゆびのば体操(足育)の2つの「ソクイク」で病気にならない体つくりを提供。メディア出演や、講演など幅広く活躍するメディカルエンターテイナー。著書に、『健康でいたければ鼻呼吸にしなさい あいうべ体操と口テープでカラダがよみがえる!』(河出書房新社)がある。

2020年12月08日

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