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【皮膚科医が教える】ヒアリとマダニ対策。子どもを守る5つの予防対策法。
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神奈川県立こども医療センター皮膚科医
神奈川県立こども医療センター皮膚科医
滋賀医科大学医学部卒業 。横浜市立大学皮膚科講師を経て、1994年より神奈川県立こども医療センター皮膚科医長、2002年より現職。 横浜市立大学皮膚科臨床教授を兼任。日本皮膚科学会、日本小児皮膚科学会 、日本臨床皮膚科学会会員。NHK「すくすく子育て」などにも出演。3人の子どもを育てた先輩ママでもある。
ヒアリやマダニに子どもが刺されないための予防対策法、刺された場合の症状とママやパパがやるべき応急ケアについて、皮膚科医の馬場先生が解説します。
ヒアリとマダニへの知識や対策は万全?
ヒアリとマダニの話題に不安を感じているママも多いのではないでしょうか。
筆者には5歳と3歳の子どもがいます。公園などに行くたびに虫を観察したり、さわったり……。自然の生き物に触れることは大歓迎ですが、虫刺されトラブルのことを考えるとやはりヒヤヒヤしてしまいます。
そこで、刺されると大きなトラブルにもつながりやすいヒアリとマダニから子どもを守るための対策法や、万一刺された場合の症状や、親がまずやるべきケアなどを小児皮膚科医の馬場直子先生に聞いてみました。
ヒアリは刺されると死に至ることも
ヒアリの大きさは約2.0mm~6.0mmで、日本在来のアリと極端に大きさは変わらないようです。国内で発見されている場所は数か所ですが、実際にはどこまで上陸しているかは検証中といえます。
一番のポイントは毒性が強く、お尻にある毒針で積極的に刺すことです。刺されると、まるで火傷をしたときのような激しい痛みが。場合によっては、アレルギー反応の一種「アナフィラキシーショック」を引き起こし、死に至るケースもあります。
怖い病気を媒介するマダニ
マダニは野山などに生息。家の布団やカーペットにいるダニとは種類が異なります(布団やカーペットにいるダニは、ツメダニやヒョウヒダニ)。
人の肌のやわらかい部分にくっつき、ゆっくりと血を吸い続けるのが特徴です。通常3mm程度の大きさですが、吸血後には1cm以上に巨大化することもあります。なによりもやっかいのが、怖い病気のウイルスを媒介する点です。なかでも症状として嘔吐や下痢、発熱がみられる「重症熱性血小板減少症候群」は、国内で致死した例もあるので注意しましょう。
ヒアリ、マダニから子どもを守る予防対策法
ヒアリやマダニによるトラブルから子どもを守るにはどうしたらいいでしょうか。
馬場先生曰く「ヒアリ、マダニともに対策法は同じです。ヒアリやマダニが多くいそうな場所に行くときは、短時間であってもきちんと対策しておいた方がいいでしょう」。
では、具体的にどんな対策をしたらいいかを紹介していきます。
1:肌を露出しない
長ズボンや長袖を着用し、肌を露出しないことがとても大切です。また、顔部分はつばの広い帽子で、首まわりはタオルなどをまいてガードするといいでしょう。ハイソックスを着用すると、ズボン+ソックスでWガードできます。靴もできれば長靴やハイカットタイプのものがベターです。
2:むやみに素手でさわらない
子どもは虫を見つけたら手ですぐに触ったり、つかまえたがりますよね。できるだけ素手でさわらないよう、ママが気をつけてみてあげましょう。
また、軍手など手袋を着用するのも1つの方法です。ただし手袋の口から腕などに這い上がっていってしまうこともあるので、要注意です。
3:虫よけ剤を活用する
生後6カ月以降なら市販の蚊やダニ対策の虫よけ剤を活用しましょう。
虫よけ剤には、「ディート」という虫よけ成分や、マダニに効果があるといわれる「イカリジン」※1という虫よけ成分などが入っているものが販売されています。「ディート」に比べると「イカリジン」の方が毒性が弱いといわれており、小さな子どもでも使いやすいようです。いずれも虫よけパワーが期待できる反面、多少人体への影響も懸念されているので、使うときは、用法や用量を守るようにしてください。
4:虫よけ剤は一度手に噴霧を
スプレーやミストタイプの虫よけ剤を直接子どもの肌に噴霧するのは、避けましょう。
一度虫よけ剤をママの手にふきつけ、それを子どもの肌の露出部に塗るようにします。腕や足、首などの露出部にはまんべんなく塗りますが、顔、特に目や口の周りは避けてください。
帰宅後はきちんと石けんで洗い流してあげてください。
5:複数の方法で対策するのが望ましい
ママの中には「虫よけ剤をしたから、対策は万全!」と思っている人もいるかもしれませんが、残念ながら虫よけ剤は100%ではありません。
「虫よけ剤+長袖、長ズボン」など、複数で対策を講じるのが良いでしょう。
ヒアリに子どもが刺された時の応急ケア方法
もし子どもがヒアリに刺されてしまった場合は、どうしたらいいでしょうか。
「刺されたら、できるだけ速やかに医療機関を受診することが大切です。その前に痛みやかゆみがやってくるので、
《痛み対策》《かゆみ対策》
をしてあげましょう。
また、とても重要なのが
《アナフィラキシーショック》
をきたしていないかです。注意深く子どもの様子を観察してあげてください」と、馬場先生。
ヒアリにさされた可能性があれば、症状がおさまったとしても必ず一度は医療機関を受診しましょう。特に
・発疹が出ている
・元気がなく、ぐったりしている
・熱がある
・かゆがっている
・不機嫌
などの様子が見られたときは、医療機関へ連絡、受診をしてください。
それぞれどういったケアをしたらいいかを解説していきます。
痛み対策のポイント
個人差もありますが、刺された直後は火傷のような激しい痛みが出ます。すぐに冷水につける、シャワーで流すなど、冷やして痛みをやわらげてください。
保冷剤や氷が用意できるときは、タオルにくるみ、患部にあててあげましょう。その後に消炎鎮痛剤の外用薬(市販の虫刺され薬、ステロイド外用薬)を塗布します。あまり痛がる場合が消炎鎮痛剤(カロナールなどの痛み止め)を服用させてください。
かゆみ対策のポイント
痛みが引いた後にかゆみがやってきます。冷水や保冷材などで患部を冷やしてかゆみを緩和させてあげましょう。市販の虫刺され薬やステロイド外用薬を塗った後、かかりつけ医へ行きましょう。できれば病院到着前に電話で症状を離しておくなどすると
2時間まではアナフィラキシーショックに要注意!
刺されて、2時間くらいまでは、アナフィラキシーショックの症状を起こしていないか、よく観察しましょう。
観察ポイントは、以下の通りです。1つでも当てはまるものがあったら、大至急医療機関へ行ってください。
《観察のポイント》
・刺された部位以外にも皮膚が赤くなっていないか(じんましんが出ていないか)
・息苦しさはないか
・めまいはないか
・意識がはっきりしているか(ぼーっとしていないか、眠そうにしていないか)
もし、家に本人や家族のアレルギー疾患のためにエピペンの常備があれば、使用してもOKです。
マダニに刺されたときの応急ケア
マダニに刺された時や、子どもの肌にマダニがくっついているのを見つけた時の対処法を聞いてみました。
ヒアリ同様、さされたとわかったら必ず医療機関で診察してもらうことが重要です。発疹が出ている、ぐったりしている、発熱があるときは速やかに受診を。
刺された部位の腫れやかゆみを確認
刺された部位の腫れを確認しましょう。腫れがひどい場合や熱を持っている場合は、患部を冷やして医療機関へ行きましょう。マダニは刺したときにかゆみを抑える成分を一緒に出すため、さほどかゆみは感じないことが多いようです。
肌から無理に取るのはNG
マダニが肌にくっついている場合、無理に手で取ろうとするとマダニの口顎などが肌内部に残ってしまうことも……。ママが無理に取ろうとするのはNGです。病院で取ってもらいましょう。
1~2週間以内の体調不良に要注意
マダニは、発熱を伴うライム病や、死に至ることもある重症熱性血小板減少症候群などの病気のウイルスを媒介する可能性があります。それらウイルスの潜伏期間は1~2週間なので、刺された後や野山や登山などに行った後、発熱や嘔吐、下痢などの症状があらわれたら、マダニを疑いすみやかに医療機関を受診してください。
ヒアリやマダニから子どもを守る対策を
ヒアリとマダニの予防は共通しています。
ヒアリやマダニから子どもをしっかり守るためには、複数の対策を講じることが望ましいでしょう。長袖、長ズボンで肌の露出部を減らすことや、虫よけ剤を活用しての予防が大切です。また、ヒアリ対策の大きなポイントとして、子どもが刺されてしまった時は、アナフィラキシーショックをきたしていないかしっかり観察することが肝心です。
マダニ対策の重要点は、肌に付着しているのをみつけたら無理に取ろうとせず、速やかへ医療機関を受診しましょう。ヒアリやマダニに刺されてから1~2週間以内の体調不良を見逃さないよう、いつも以上に子どもの様子に気を配ってあげてくださいね。
監修:馬場直子(神奈川県立こども医療センター皮膚科医)
滋賀医科大学医学部卒業 横浜市立大学皮膚科講師を経て、1994年より神奈川県立こども医療センター皮膚科医長、2002年より現職。 横浜市立大学皮膚科臨床教授を兼任 、 日本皮膚科学会、日本小児皮膚科学会 、日本臨床皮膚科学会会員。NHK「すくすく子育て」などにも出演。3人の子どもを育てた先輩ママでもある。