【目育#03】眼球運動機能や両眼視機能が発達しない?デジタルデバイスの危険性

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2021.05.28

学校での授業、読書、テレビやスマートフォン。子どもたちの視力を気にする保護者も多い一方、子どもは、たとえ見えにくくても自分が「見えにくい」ことに気づかない。保護者が見逃してはならない、子どもの眼が発するサインとは?桃山学院大学名誉教授、髙橋ひとみ先生に聞く。

視覚の発達にはタイムリミットがあり、感受性期を過ぎると視神経の回路が作られなくなり、十分に回路が形成されていない場合、弱視になってしまう。

第2回は、そのメカニズムや、保護者が見逃してはいけない子どもの眼のサインについて教えてもらった。

第3回は、デジタルデバイスが子どもの眼に及ぼす影響と、子どもの眼を守るために保護者ができることを聞いていく。

高橋ひとみ(たかはし・ひとみ)/桃山学院大学名誉教授。2007年度東京大学大学院教育学研究科私学研修員。2012年度金沢大学医薬保健研究域医学系私学研修員。専門は健康教育学分野で、長年近見視力をテーマにした研究に取り組む。2015年、『「たべたのだあれ」視力検査キット』(フレーベル館)を考案し「第9回キッズデザイン賞」および「2015年経済産業大臣賞」を受賞。主な著書には『3歳からできる視力検査』(自由企画社)『たべたのだれかな』(自由企画社)『はっきりみえているかな?』(金の星社)などがある。
高橋ひとみ(たかはし・ひとみ)/桃山学院大学名誉教授。2007年度東京大学大学院教育学研究科私学研修員。2012年度金沢大学医薬保健研究域医学系私学研修員。専門は健康教育学分野で、長年近見視力をテーマにした研究に取り組む。2015年、『「たべたのだあれ」視力検査キット』(フレーベル館)を考案し「第9回キッズデザイン賞」および「2015年経済産業大臣賞」を受賞。主な著書には『3歳からできる視力検査』(自由企画社)『たべたのだれかな』(自由企画社)『はっきりみえているかな?』(金の星社)などがある。
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デジタルデバイスの普及により「調節機能不良」の子どもが増加

乳幼児期は遠視が多いのですが、小学校入学以降は近視の子どもが多くなります。

近視の原因や進み方は分かっていませんが、遺伝的要素説・近業説・体質説・環境因子説などの説があり、これらが相互に影響しているといわれています。

幼児期の近視には近業が関与しています。

生まれたばかりの子どもの眼球は約17㎜。乳幼児は眼球が小さいために網膜より後ろにピントが合います。そのため、この時期の子どもの多くは遠視です。

この時期に近くを見る機会が多いと、網膜上にピントを合わせようとして、適応本能から眼軸(角膜から網膜までの距離)が後ろに伸びてしまいます。

そのため眼球は楕円形になり、楕円形のまま成長するので、眼球が円形なら網膜上にピントが合うはずが、網膜より前にピントが合うことになります。

網膜より前にピントが合うのは近視です。特に眼軸が伸びたことによる近視を「軸性近視」といいます。

近くを見るスマホなどの使用開始年齢が早いほど軸性近視のリスクは高まります。

iStock.com/smirart
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子どもの視力不良の原因で最も多いのは「近視」ですが、最近では「調節機能不良」の子どもが増えています。

調節機能とは、網膜上に像を結ぶためにピントを合わせる機能のこと。近くのものを見るときは、毛様体筋が緊張し、水晶体を厚くすることによってピントを合わせます。

毛様体の緊張と距離の関係は、荷物の重さに例えることができます。「対象物との距離が近い」ほど「持つ荷物が重い」ことになります。その時間が長く、頻度が多いほど疲れます。

毛様体筋も酷使すれば疲れ果て、それが続けばピントの調節機能が衰えてしまいます。

眼の調節機能が衰えると、視力が不安定になり、見えたり見えなかったりします。この状態が続くとピントを合わせることが困難になり、視力が低下します。

さらに、テレビよりパソコン、パソコンよりスマホ……というように画面が小さくなればなるほど、視線を動かさないで見つめ続けるため、眼は疲れます。

日々の勉強に加えゲームやスマホなどによって「近くを見る作業」が多くなり、子どもの眼に影響を及ぼしています。

iStock.com/Diy13
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近くを見る機会が多いと、毛様体筋が過緊張をします。過緊張が続くと調節機能が低下します。その結果、水晶体を分厚くすることができなくなります。

すなわち、老視(老眼)と同じ状態です。一般的に「スマホ老眼」と呼ばれ、近くが見づらくなります。

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「眼球運動機能・両眼視機能が発達しない?」デジタルデバイスの危険

スマホなどのデジタルデバイスが、子どもの眼に与える影響はもうひとつ。それは「眼球運動機能」と「両眼視機能」の低下です。

「眼球運動機能」とは、眼球についている6本の外眼筋がバランスよく働いて、眼球を上下左右に動かす機能のこと。

「両眼視機能」とは、両眼でものを見る機能のこと。ヒトはふたつの眼を持っているため、わずかに角度のズレが生じています。それぞれの眼に入った情報を脳内で統合することにより、立体的な像を作り出しているのです。

眼球運動機能と両眼視機能は、ともに視覚の感受性期に発達しますが、感受性期に平面な画面にもかかわらず物を立体的に見せるモニター画面を頻繁に見ていると、これらの機能が十分に発達しません。

iStock.com/kohei_hara
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最近、幼児がタブレットに興じている姿をよく目にしますし、子どもを静かにさせるために、おもちゃ代わりにタブレットを与える話も耳にします。

お母さんも、我が子がタブレットを使いこなせるのが自慢のようです。端から見ても、その操作技術には目を見張りますが、眼への影響を考えると望ましくありません。

3Dに目を動かせる屋外での活動をしてトレーニング

調節機能不良は「近くを固視する」ことの多い生活環境が関与しています。

時代の流れに逆らうことは難しく、今後ますますデジタル化するであろう社会の中で、デジタルデバイスの使用は避けられません。

iStock.com/chachamal
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使用することで眼が悪くなるかというとそうではなく、大切なのは時間と距離と頻度のバランスをふまえた使い方です。

IT機器の長時間継続使用は、眼を疲れさせるため、継続時間と頻度と一日の合計時間に留意して使うと、「眼の疲れ」を軽減できます。

そしてデジタルデバイスとの距離です。デバイスとの距離を保つためには姿勢が重要です。眼を疲れさせないIT機器の使用環境をみていきましょう。

そのほか運動、栄養、休養に留意した生活を送ることも大切です。

運動は体力向上につながり、腹筋や背筋などの筋力がつくことによってよい姿勢を保つことができるうえに、血液の循環がよくなることで眼の機能を高めます。

また、ボール遊びや鬼ごっこなど、子どもは屋外で遊んでいるときにはボールや人を追って眼を動かします。遠くと近く、右と左、上と下 を3Dに見ることで、毛様体筋は緊張と弛緩を繰り返し、無意識のうちにビジョントレーニングをしているのです。

加えて、運動による適度な疲れは、就寝時刻を早め、深い睡眠を誘い、十分な睡眠は身体だけでなく脳や眼の疲れをとってくれます。

iStock.com/Sushiman
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ドライアイや眼の疲れを予防するために、ビタミン類やカルシウム、ミネラルを含んだ食品を摂取しましょう。

就寝前にデジタルデバイスを見ていると、脳内のメラトニンが減少し寝付きが悪くなったり、眠りが浅くなることも報告されています。これが長期に渡ると、デジタル時差ボケと呼ばれるようになりますが、近年増加傾向にあります。

子どもの眼を守りながら、デジタルデバイスと上手に付き合っていくために、生活環境を見直してみてはいかがでしょうか。


<取材・執筆>KIDSNA編集部

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