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災害レスキューナースの辻直美先生直伝!「子どもを守りぬく防災対策」
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国際災害レスキューナース
国際災害レスキューナース
吹田市市民病院に勤務後、上海での医療提携活動に従事。帰国後、聖路加国際病院救命救急センターに勤務し、その際、地下鉄サリン事件の救急救命にあたり、その後国際災害レスキューナースとして東日本大震災や熊本大地震などの被災地での救命活動、被災者の心のケアも行う。また、自身の育児と同時に同居する舅・姑の介護をすることになり、その経験からベビーの抱っこの仕方、親のあり方、災害時の対応など、育児に関するさまざまな講演会や講座、スリングの商品化などの活動を精力的に行っている。近著に『3秒で泣き止み、3分で寝る まぁるい抱っこ』(講談社)がある。
ママが子どもを抱っこすることで、幸せな気分になれる「まぁるい抱っこ」を提唱する辻直美先生。先生はその「まぁるい抱っこ」の普及活動をしながら、国際災害レスキューナース として、東日本大震災時の救命活動も行ってきました。今回は、その経験から「災害時に子どもを守るポイント」を教えていただきました。
命がけで子どもを守る覚悟を
災害はいつ起こるかわかりませんよね。辻先生曰く「災害時は、ママやパパも焦ったり不安になることもあるでしょう。でも、一番忘れないでほしいのが『自分の身をはってでも子どもを守ろうとする気持ち、覚悟』なんです」
そこで、自分の身をはってでも子どもを守るためには、具体的に災害時にどんなことをしたらよいでしょうか。
災害時の合言葉「よいこ」とは?
「講座などでママやパパから災害時にやるべきことについてよく質問されます。そのときに心がけたいこととして『よいこ』を伝えているんです」と、辻先生。
辻先生が考案し、標榜されている「よいこ」とは、具体的にどのようなことでしょうか。
よ…よく見る(周りの状況を冷静に見る)
災害が起きたときママやパパが周りの状況を冷静にみて、自分たちで判断して動くことが大切です。そのために、普段から防災についての勉強をして知識をつけておくことも必要。
また、ママと子どもがいっしょにいるときに災害が起こるとは限りません。
万一ひとりでも対応できるようにするため、普段から子どもと防災センターなど体験できる施設を大いに活用することも良いでしょう。
い…いそいで避難(安全な場所にできるだけすばやく移動する)
災害時、必ず家にいるとは限りません。家にいない場合は、家族であらかじめ決めておいた安全な場所へ避難することが大事です。
「避難所は、みなさんが想像する以上にプライベートがなく、不衛生なところもあるので、子どもを連れて生活するのはとても過酷な環境です。むやみに避難所に避難しようとするのではなく、家で避難が可能ならば家にとどまることが良い場合もあります。」(辻先生)
こ…声をかける(周りの人へ臨機応変に声かけを!)
国などの支援がくるまでは、特に周りの人との協力が必要不可欠になってきます。
普段から、近所の方と「顔がわかる」関係作りを心がけてください。
地域の防災訓練やお祭り、行事などに積極的に参加し、近所の人とコミュニケーションをとっておくと良いでしょう。
万一に備えて覚えておきたい心得
万一に備えて、子どもたちを守るためにあらかじめやっておきたいことや知っておきたいポイントを聞いてみました。
実際に被災地で救命活動を行っている先生ならではのアドバイスもあるので、ぜひ参考にしてみてください。
防災に役立つ5つのグッズを揃える
あらかじめ準備したい防災グッズは家族構成や状況で異なるので、状況に合わせて準備をする必要があります。
なかでも誰にでも役立ち、持っていて欲しい5つのグッズを先生に教えてもらったので、常備されているか確認を。
防災用の笛
もしも閉じこめられてしまったときに役に立ちます。
よくホイッスルを防災グッズとして準備している人がいますが、それは間違いです。使用時に肺活量が必要なホイッスルは、ホコリを大量に吸ったり、鳴らす際に体力を消耗することがあるので、防災用の笛を用意しましょう。
方位磁石
災害時には、普段目印にしている建物などが倒れてしまいなくなる可能性があるので方位磁石は必須に。
ライト
災害時は、停電する可能性も考えてライトは必ず用意しておきましょう。
はさみ
ビニールや紙などを切ったりするのはもちろん、調理をすることになったとき、はさみが包丁がわりにもなるので、大活躍してくれます。
アルミシート
地面に引いて横になることができます。直接地面に横になるよりも体温の低下も防げるのでアルミシートはとても役に立つでしょう。
我が家で「訓練」してみる
自宅から避難所の場所を把握するだけでなく、実際に災害時を想定して子どもを連れて避難する訓練をしてみましょう。
避難グッズを持っても避難先まで家族みんなが歩けるか、暗い道でも歩けるかなども確認を。頭で考えていたように簡単にはいかないかもしれません。
また、家族でガスや電気を使わない日を作り、ろうそくの明かりや缶詰を使った調理をしてみるなど災害時を想定して訓練を実践しておくことが大切です。
ベビーカーでは避難できない
災害時は、建物が倒れ、道路が通行止めになることもあるので、ベビーカーでの移動はできないと考えておいた方が良いでしょう。エレベーターも止まってしまうので、基本は抱っこでの移動になります。
災害時にも「まぁるい抱っこ」で
上でも述べたように、乳幼児の場合は抱っこでの移動になります。正しい抱っこをすることで迅速に避難が可能になります。
また、避難所でもずっと抱っこしているとママも赤ちゃんも疲れてしまいますよね。ママの負担を最小限に抑えた「まぁるい抱っこ」なら、手のひらで押さえつけないため腱鞘炎などになる心配もなく、長い間抱っこできます。
スキンシップをたっぷりと
災害時、子どもだけでなく、大人も不安やパニックになります。そんな状況のときもまぁるい抱っこは大活躍。大人でも同じ方法で抱きしめたり、スキンシップをとることで心が落ち着いて、少しは冷静に判断できるようになります。
また、大人が不安なときは、子どもはもっと気持ちが不安定になりがちに……。災害時にはいつも以上にスキンシップを大切にし、たくさんふれ合ってください。
正しい知識と備えが大切
災害時、ママやパパにとって何よりも大切なのが「自分の体をはってでも子どもを守ろうする強い気持ち」です。
そのためには「よいこ」が大切になってきます。「よいこ」を頭に入れ、いざというときに備えて、家族構成に応じた災害グッズと先生が誰にでも役立つと紹介してくれた5つのグッズを準備しておきましょう。
正しい判断で動けるように、普段から子どもといっしょにシミュレーションをし、知識をつけておくこと、そして、万一の際には「まぁるい抱っこ」でたっぷりふれ合い、安心させてくださいね。
次回は、子育て中にママがよく感じる「困った……!」に、どう向き合ったらよいか、子どもの心をときほぐす声かけや接し方などを辻直美先生が伝授します!
監修:辻直美(正看護師/育母道代表)
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辻直美
吹田市市民病院に勤務後、上海での医療提携活動に従事。帰国後、聖路加国際病院救命救急センターに勤務し、その際、地下鉄サリン事件の救急救命にあたり、その後国際災害レスキューナースとして東日本大震災や熊本大地震などの被災地での救命活動、被災者の心のケアも行う。また、自身の育児と同時に同居する舅・姑の介護をすることになり、その経験からベビーの抱っこの仕方、親のあり方、災害時の対応など、育児に関するさまざまな講演会や講座、スリングの商品化などの活動を精力的に行っている。近著に『3秒で泣き止み、3分で寝る まぁるい抱っこ』(講談社)がある。