スポーツを楽しむことと勝ち負けへのこだわり、どちらが大切?【中澤佑二】

スポーツを楽しむことと勝ち負けへのこだわり、どちらが大切?【中澤佑二】

読者からお悩みを募集し、子育て、教育、健康など各分野の専門家にご回答いただく人生相談コーナー。今回は元サッカー日本代表の中澤佑二さんが、「スポーツを楽しむことと勝ち負けへのこだわり、どちらが大切か」というお悩みに答えます。お悩みはオンラインで随時受付中!

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【お悩み】子どものサッカー。楽しければ勝ち負けにこだわる必要はない?

男10歳、男7歳、男0歳のママ
男10歳、男7歳、男0歳のママ

子どもが小学生のサッカークラブチームに所属しています。

勝ち負けにはこだわらない自由な方針のチームのため、息子はただ楽しくやっているようですが、他のチームに負けてばかりで親としてはモヤモヤします。

楽しければ、勝ち負けにこだわる気持ちは育まなくてもよいのでしょうか。また、もし本格的にサッカー選手を目指すとしたら、何歳くらいからモチベーションを持てるものなのか教えていただきたいです。

【中澤さんの回答】小中学生の間はまずは楽しくやることが上達への近道

これは、子ども本人よりお父さんとお母さんのほうがやる気がありすぎる典型的なパターンですね(笑)。

僕は、小・中学生の間は楽しくやれればそれで十分で、勝ち負けにこだわるのは高校生くらいからでよいと考えています。

サッカーでもそれ以外のスポーツでも、「楽しい」と思うことができれば、「もっとうまくなりたい」「こういうプレイをしたい」「(そのためには)こうしたい、ああしたい」と考えるようになり、いずれは「試合に勝ちたい」という欲求が出てくるものです。

親の期待はどのスポーツでもみられますが、「期待に応えなければ」そのためには「失敗しないようにしなければ」と過度なプレッシャーが子どもを追い込む場合もありますから注意が必要です。

僕自身は昭和時代の根性論で育成され、小中高と「ミスをしたら怒られる」だから「怒られないようにしなければ」と思いながらサッカーをしてきたので、消極的なプレーしかしてこず、実のところ心から楽しめたことはありませんでした。

一方、今の若い世代のスポーツ選手やオリンピック選手たちは、小さい頃から「よい部分を褒めてのばす」「論理的に考えられた練習をする」「ミスを指摘しない」という教育方法で育ってきています。

その結果、世界に羽ばたく選手が増えたわけですから、「楽しくやる」ことは間違いなく上達するための大切なポイントであり、どんなスポーツのコーチも、オリンピック選手を育成する方も、建前ではなく、必ず「まずはスポーツを楽しもう」と指導するように言われています。

楽しんで取り組んでいるうちに、子どもから「負けて悔しい」という言葉が出たら、そのときはしっかりとアドバイスしてあげればいいんです。

もちろん、最初からギラギラとしている子もいますが、保護者がそういう子と自分の子どもを比べてモヤモヤしたり、無理にギラつかせようとする必要はありません。

単に楽しくやりたい子もいれば、ギラつく子もいる。多様性を学ぶことができるのもチームスポーツのよさです。

ただ、もしも「サッカー選手を目指したい」とお子さん本人が言っているのであれば、「どうすればプロになれるか」と少し話し合ってもよいですし、今のチームではゆるいと感じるのであれば、他のチームに入るのもひとつの方法です。

もちろん、レベルの高いチームに入ったからといって必ずプロになれるわけではなく、そこで挫折する選手もたくさんいます。逆に、中高の部活などでいきなり伸びるパターンも多く見てきたので、絶対の正解はありません。

そのため、自分の子はどんな指導で伸びるのか、どんな接し方がいいのか、わが子の性質を理解したうえでサポート方法を判断する必要があります。

子どものやる気具合を知りたい場合、チームの練習以外に、「ちょっと外に走りに行ってみる?」「ボールを蹴りに行こう」「ほかの子たちが練習してるかもしれないよ」など、子どもの背中を押してみましょう。

子どもが「もっとやりたい!」と言えば、おそらく、楽しいだけではなく、「うまくなりたい」「勝ちたい」という思いが芽生えてきている証拠。そうでなければ、まだそこまでの気持ちはないということです。

まずはお子さんが楽しく取り組めるようサポートすることを考えてあげてください。

Profile

中澤佑二

中澤佑二

1978年2月25日生まれ。埼玉県出身。元サッカー日本代表。三輪野江小→吉川東中→三郷工業技術高→FCアメリカ(ブラジル)→ヴェルディ川崎→東京ヴェルディ1969→横浜F・マリノス。
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2021.11.23

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