管理栄養士に聞く「子どもの食育」の本質。親子で楽しく食べることが大切

管理栄養士に聞く「子どもの食育」の本質。親子で楽しく食べることが大切

2017.08.25

Profile

中津川かおり

中津川かおり

管理栄養士

管理栄養士・料理家。福島県相馬出身。東京家政大学大学院にて食物栄養学専攻修了。大学に助手として勤務後、フリーランスの管理栄養士として独立。レシピ・商品開発、メディア出演や著書・出版も多数手がける。 管理栄養士・料理家・母親として「家族の健康は家庭の食卓から」をモットーに、身近な食材で作りやすいレシピ提案を心がけている。また、大学で講師を務め、栄養士、保育士、介護士などの養成にも尽力。現在は、親子向けの食育イベントや小学校での食育活動、介護食や抗がん剤治療で食べることが困難な子どものための食事支援などにも従事。あらゆるシーンで『食』の大切さへ理解が深まるよう努めている。 著書に「太らない!ただいまご飯(宝島社)」、「サラダ定食(中日映画社)」他多数。

「食育」とはそもそも何か?体に良いものを食べさせるのが「食育」なのか?と子どもが生まれてから悩むママたちは多いのではないでしょうか?今回は、管理栄養士である中津川かおりさんに「食育」の本質や大切なことなどを伺ってみました。

食事

SNSの普及により、食に限らずいろいろな情報が簡単に入手できる時代になりました。私は管理栄養士として、子どもの食育に関する活動をしていますが、何が正しくて、何を信じて良いのか、うちの食卓はダメなのか?といった親御さんからのご相談が多くなっているように思います。

自身、管理栄養士である前に子どもをもつ母でもあります。「管理栄養士さんだから、毎日、きちんとしたご飯作ってるんでしょ?」「外食なんてしないんですよね?」「市販のお菓子なんて子どもにあげないんですよね?」とよく言われますが、決してそんなことはありません。

朝は、おむすびだけの日もありますし、仕事で疲れて外食の日もあります。市販のコンビニ菓子も食べさせます。確かに添加物の多い物や加工品は、積極的に選んだり与えたりしないかもしれませんが、基本的にはなんでも食べさせています。アレルギーや障がいなどがある場合は別の話になりますが。

「食育」で大事なこと

親子

楽しみながら

私自身が子どもの食育で一番大切にしているのは、栄養ではなく、「子どもと楽しむこと」です。栄養価を考えて食べさせたい親の気持ちもわかりますが、嫌がるものを無理やり与えても、子どもは楽しいでしょうか?むしろ食に対して嫌な思いを抱かせてしまうかもしれません。何が良くて何が悪い食べ物かといった知識は、少しずつゆっくり教えていければ良いと思います。


上手に息抜き

仕事を持ちながら、子育てすることは決して容易なことではありません。望んで親になったはずなのに、子育てと仕事で忙殺され、なんだか、疲れ果てている親御さんが多いように感じます。「ワンオペ育児」などといった言葉もできていますが、もっと子育てを楽しめたら良いですよね?


親になれたことって、本当に素晴らしいことのはず。


上手に息抜きすることで、子育てを楽しむことができるのではないでしょうか?

割り切ることも大事

ママは忙しい……

現実の自身の生活を顧みると、朝はバタバタと子どもを起こし、身支度をさせて朝食を食べさせ、保育園の準備をして、自分の支度もして……。すっぴんで出かける日や朝食の食器を流しに置いたまま出勤という日も良くあります。

仕事復帰して間もない頃は、早出も多く、起きたばかりの娘をベビーカーに乗せ、おにぎりと飲み物を持たせ、登園するなんで日もありました。ダメ親だな……。何度、自己嫌悪に陥ったことだったか。


完璧を求めない

しかし、いつの頃からか、完璧でなくたって良いのでは?と割り切れるようになりました。私は食卓を毎日素敵に演出し発信するインスタグラマーではありません。みんなの「いいね!」やフォロワー数を気にするよりも、


目の前の子どもの空腹を満たすことの方が、母親として大事な任務だと思えるようになったからです。


もちろん、できる人はやれば良いことだし、素晴らしいことだと思います。でも、私にはできないというのが本音。朝から、カリカリして食事を食べさせ、疲れて帰宅して腹ペコの子どもに催促されながら、イライラして食事を作り、味わう余裕すらなかった数年前。あの頃は子どもに、あれはダメ、これはダメって、否定形の食育を押し付けていたようにも思います。

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考え方を切り替えてみる

にんじん

食材で楽しむ

あるときから子どもの食育の考え方を「子どもと楽しむ!」に切り替えたら、少し楽になったように感じます。

焼きそばのような単品だっていろんな色のお野菜を使って、色探しをしながら食べています。


苦手な野菜を一口食べたときは、とにかく褒めちぎります。


本人も「私、天才だからもっと食べられるよ~」と自慢気な笑みを浮かべ、おかわりするようになりました。

初めての食材は、子どもの抵抗感を少なくするために、食材をロケットに見立ってて打ち上げ、「○○ちゃんのお口に~!着陸~♪」などと言いながら、食べさせたりと、食卓に遊びを持ち込んでいます。たわいもないことですが、こんな方法で克服した食材が何品あることか。


親子で料理

それから、我が家では卓上の調理器具を使って焼肉や串揚げ、たこ焼きなどを子どもといっしょによく楽しみます。


そして早い段階から、お料理を手伝わせています。


茹で野菜の型抜きをしてくれたり、卵を割ったりと簡単なお手伝いですが、本人が関わったという小さな達成感の積み重ねも子どもの食育には大切な要素だと考えています。

子どもに手伝わせると余計イライラするという方もいらっしゃいますが、作るのにいつもの2倍、3倍の時間を費やすことになっても、我が家は、それを子どもといっしょに楽しむことにしています。もちろん、無添加、有機といった食材を使い、ゆっくり大切に食事を作り、楽しむ余裕が持てれば最高です。ですが、理想と現実は違うもの……。

子どもと楽しむことが大切

日々の慌ただしい毎日の中で、筆者が一番大切にしている子どもの食育は「子どもと楽しむ!」です。頑張りすぎず、楽しく食卓を囲むことで得られる栄養は無限大!そんな思いで、今日も子どもと共に食を楽しんでいます。

Profile

中津川かおり

中津川かおり

管理栄養士・料理家。福島県相馬出身。東京家政大学大学院にて食物栄養学専攻修了。大学に助手として勤務後、フリーランスの管理栄養士として独立。レシピ・商品開発、メディア出演や著書・出版も多数手がける。 管理栄養士・料理家・母親として「家族の健康は家庭の食卓から」をモットーに、身近な食材で作りやすいレシピ提案を心がけている。また、大学で講師を務め、栄養士、保育士、介護士などの養成にも尽力。現在は、親子向けの食育イベントや小学校での食育活動、介護食や抗がん剤治療で食べることが困難な子どものための食事支援などにも従事。あらゆるシーンで『食』の大切さへ理解が深まるよう努めている。 著書に「太らない!ただいまご飯(宝島社)」、「サラダ定食(中日映画社)」他多数。

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