レッジョエミリアアプローチについて簡単に知りたい!教育理念と実践

レッジョエミリアアプローチについて簡単に知りたい!教育理念と実践

海外だけでなく国内でも広く注目されているイタリア発の伝統的な幼児教育法「レッジョエミリアアプローチ」とは?気になるその概要をまとめました。発祥や教育理念から、実践例や実際の教育内容、効果などを理解して、子どもの保育や教育に活かしましょう。

レッジョエミリアアプローチとは

子どもの教育への関心が高い方であれば「レッジョエミリアアプローチ」という教育法を耳にしたことがあるかもしれません。

これは、イタリアのある都市で生まれ、主に北米や北欧を中心とした世界中で展開されている幼児教育法です。

イタリア北東部のエミリア=ロマーニャ州にある人口17万人ほどの都市「レッジョ・エミリア市」で戦後に始まったことから、この名がつけられました。

創始者であるイタリア人の教育者ローリス・マラグッツィは、大人も子どもも創造性を高めるための教育手法として、レッジョエミリアアプローチを確立したと言われています。


この教育手法は高い評価を得ることとなり、1991年の米・ニューズウィーク誌では「世界でもっとも革新的な幼児教育」として紹介されました。

出典:レッジョエミリアアプローチの専門家にきく。8つのキーワード【第1回】

レッジョエミリアアプローチの実践

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iStock.com/Aleksandr Rybalko

レッジョエミリアアプローチを幼児教育に取り入れている国としては、スウェーデンが有名です。

福祉国家としても有名なスウェーデンでは、保育・教育・福祉を一貫したものとして捉えており、国が「就学前学校教育要領」を、ナショナルカリキュラムとして策定しています。

この「就学前学校教育要領」とは、伝統的な保育方法を礎としながらも、乳幼児期の子どもの主体的な学びを支えるスウェーデン独自の保育政策です。内容にはレッジョエミリアアプローチの理論と実践が色濃く反映されています。

このようにスウェーデンでは、就学前の幼児教育と就学後の学校教育とが、強い結びつきによって連携するものであることを前提に計画されています。


レッジョエミリアアプローチを効果的に取り入れて取り組まれている独自の保育政策には、将来的にスウェーデンの発展に貢献する人材教育につながることが見据えられていると言えるでしょう。

出典:諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業) 報告書/厚生労働省

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レッジョエミリアアプローチの教育内容

レッジョエミリアアプローチの教育理念とは「子どもの創造性を伸ばす」ことと言われます。さまざまな教育内容の実践は、この理念の実現に重点をおいて行なわれます。


たとえば日本の保育園などでは保育士が保育・教育に関して総合的な役割を担いますが、レッジョエミリアアプローチの実践現場では、保育士に加えて、ペダゴジスタと呼ばれる教育の専門家、アトリエスタと呼ばれる美術の専門家がチームとなって教育が行なわれるのが特徴です。

これらのスタッフがそれぞれの専門性を発揮しながら、子どもの主体的な学びの姿を支える「エマージェントカリキュラム」の実践が、レッジョエミリアアプローチの核と言えるでしょう。


では、それらのチームで行なわれる教育内容とはどのようなものでしょうか。以下で紹介します。

プロジェクト型保育

レッジョエミリアアプローチで行なわれる保育の中核を担うのは、プロジェクト型の教育実践です。

主に子どもの好奇心や興味のあるテーマを探究するこのプロジェクトは、子どもと保育者、また子ども同士が対話やディスカッションを重ねることで、さまざまな可能性を模索しながら進められます。


子どもたちは、主体性を持って学習を進める中で、意見の異なる仲間と話し合い協力しながらプロジェクトの達成を体験できます。またこの過程では、民主主義の価値観を学ぶこともできると言われます。

このようなプロジェクト学習を少人数で行なうことで、子どもの協調性・自主性・創造性・問題解決能力が育まれることが、レッジョエミリアアプローチの大きな特徴と言えるでしょう。

ドキュメンテーションの活用

先述したプロジェクトの過程は、保育者、ペダゴジスタ、アトリエスタらが細かく観察し、写真や動画、文章などで記録します。

これらの記録は、最終的に子どもたちの学びのレポートとして文書にまとめられます。

このレポートは「ドキュメンテーション」と呼ばれ、多くの国の保育実践手法にも大きな影響を与えるとともに、レッジョエミリアアプローチの代表的な手法として広く知られるようになりました。

ドキュメンテーションの作成は、プロジェクトの記録をもとに行なった活動を絵や写真で表現したものや、子どもたちの会話を文章に起こして音読するものなど多岐にわたり、非常に緻密な内容です。

レッジョエミリアアプローチを取り入れているスウェーデンの保育現場では、この際にプロジェクトを振り返りながら、子どもたちに「どう感じた?」と聞き取りを行ない、子どもたちが思ったことを言葉にする過程も重視されています。


これらのレポートはスタッフだけでなく保護者にも広く公開されます。これにより、スタッフと保護者が相互に子どもたちの活動を振り返り、以降の活動・学びに発展させる役割が果たされます。


出典:【スウェーデンの教育】社会に問いを立てる民主主義教育

出典:レッジョエミリアアプローチの専門家にきく。8つのキーワード【第1回】

出典:諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会 (保育の質に関する基本的な考え方や具体的な捉え方・示し方に関する調査研究事業) 報告書/厚生労働省

レッジョエミリアアプローチで創造性を育む

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iStock.com/VTT Studio

子どもの創造性を高めていくプログラムの中で、自主性や協調性を高め、民主主義への理解も育むことができる幼児教育法、レッジョエミリアアプローチについて解説しました。


これらの理念を実践する教育手法は、日本の保育・教育現場ではまだ多くはないものの、積極的に取り入れている保育園や幼稚園もあるようです。

子どもの創造性や自主性を高める教育とは?と摸索している方や、家庭での子育てや教育に取り入れたいと感じる保護者からも注目が集まっているレッジョエミリアアプローチ。

これからの子どもたちに向けた幼児教育の大きなヒントになるかもしれませんね。

2024.02.12

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