算数ができる子の共通点とは。塾ソムリエが伝授する、幼児期に「算数力」を育む方法

算数ができる子の共通点とは。塾ソムリエが伝授する、幼児期に「算数力」を育む方法

40年中学受験に関わる西村則康先生は「遊びが将来の算数の力の源になっていく」といいます。これはどういうことなのでしょうか。幼児期のうちに知っておきたい、子どもが算数に強くなる方法についての記事です。

算数が得意な子どもになってほしい

中学受験を目指すお子さん、ご家庭のお手伝いをしている関係上、ふだんからたくさんのご相談を受けるのですが、教科に関する相談のなかでもっとも多いのは、算数に関するものです。

「理系科目が得意な子どもになってほしい」
そんなご希望、お子さんに中学受験をさせる、させないにかかわらず、多くのお父さん、お母さんが持っているのではないでしょうか。

今回は、中学受験における算数の位置づけと、算数ができる子にするために、日常生活のなかですぐに試せる工夫についてお話しします。

中学受験では算数は「花形」科目

中学受験を現実的に考えるとき、算数は最重要科目です。

なぜなら、算数はどんな中学校を受験する場合にも必ず外せない科目でだからです。

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しかも首都圏の中学受験では4科目受験(国語・算数・理科・社会)が主流ですが、算数・国語が理科・社会よりも配点が高い学校がほとんどです。


なかでも算数は他の教科にくらべて一問あたりの配点が高く、1つの問題の出来、不出来が合否を左右しやすい科目です。


そんな算数という科目、ぜひともお子さんには得意になってほしいものですが、実はふだんの生活のなかでのちょっとした心がけで、お子さんの「得意の芽」を育てることができます。

ふだんの会話から育てる「算数力の芽」

目で見てわかるように

小学校に上がって算数の授業が始まると、最初は簡単な足し算、引き算などを習います。 3つのものと、4つのものを目で見て、合わせてみて、数えると、7つになる。

そんなところからのスタートです。

「数える」ということが基本ですが、それとともに「目で見て量を把握する」という練習もします。

どういうことかというと、「いち、に、さん…」と数えなくても、見ただけで「7つある」と理解することです。

これは、7つあるものをばらばらに表すのではなく、5つごとに並べ、見た瞬間に「5つよりも2つだけ大きい」とわかり、「7つある」と理解することです。


5や10のかたまりで考える

同じように5つのかたまりが2つあって、あと3つあることが目で見てわかれば、「13だ」と理解できるのです。 幼稚園や小学校低学年で使うおはじきなどは、まさにこの練習をするためのツールです。

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このように、5や10のかたまりで考えることは算数の力をつけていく上で必須の力です。 だから「あわせて10になる」数の組み合わせを感覚的に身につけておくことが大切なのです。

これを「補数の感覚」といいますが、ふだんから合言葉のように「7といえば?」と聞けば「3」のようにお子さんが答えるようなやり取りで鍛えることができます。


「合わせて100」にもチャレンジ

「合わせて10」だけでなく、大きな数が理解できるようになってきたら「合わせて100」にもチャレンジしましょう。

ポイントは「お勉強」ではなくゲーム感覚で、突然ふだんの会話になかに取り入れること。

「53といえば?」と聞かれたときに「100−53」と計算で考えるのではなく、「53は50よりちょっと大きいから、合わせて100になる数は50よりちょっと小さい数だな」と、数を「量」として捉えることが大切なのです。

この感覚を鍛えておくと、将来間違いなく数に強い子になります。

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九九は暗唱して覚えるだけではいけない

小学校2年になると九九を習いますが、お子さんが九九を習うようになったときに思い出していただきたいことがあります。


それは、「九九は暗唱して覚えるだけでないけない」ということです。


もちろん学校では「ににんがし、にさんがろく・・・」と暗唱もするはずですが、それとともに、かけ算の意味をしっかり理解しておくことが大切なのです。

「しごにじゅう」とはどういうことなのか。

20個のおはじきを1列に4個ずつならべていくと、5列になります。 これをたてよこ逆に見ると「4×5は5×4と同じ」ということが直感的にわかります。


将来の算数の力の源

このように数式を「量」として感覚的に理解しておくと、小学校高学年になって面積を習ったときも「たて4cm、よこ5cmの長方形の面積を「4×5=20」と直感的に理解しやすいのです。

そういう意味でも、計算を紙の上での式の操作だけでなく、目で見てわかる「量」としてとらえる遊びは、小さいころからやっておきたいものです。

おはじき、カード、ボールなどなんでも構いません。 ならべて、眺めて、数える。

そんな遊びが将来の算数の力の源になっていきます。

「ああでもない、こうでもない」が論理的思考力のもと

算数ができる子の共通点

算数ができる子の多くが、小さい頃にやっていたことで共通しているのが


何かに没頭する時間があったということです。


何かについて「ああでもない、こうでもない」と考える時間です。

それはクイズでもパズルでも、大好きなキャラクターの仲間わけでもなんでもよいのですが、試行錯誤をする機会が多いお子さんは、論理思考が強くなるようです。


カード並べ

たとえば1、2、3の3枚のカードを左からならべるとき、何通りの並べ方があるかを考えてみます。

「いちばん左が1のとき、次の数は2か3。2枚目が2なら3枚目は3、2枚目が3なら3枚目は2……」

と考えていくわけですが、この「考える過程」が大切なのです。


「思考錯誤」に慣れておく

その意味では、簡単な◯×ゲーム(3×3のマスを◯・×で埋めるゲーム)に始まり、オセロなどルールがわかりやすいゲーム、もう少し複雑なルールが分かるようになってきたらトランプなどのカードゲームで試行錯誤に親しんでおくことは、将来の論理思考力に活きてきます。

ぜひ休日や休暇など家族が揃う日は、そういったゲームをする時間をとってみてください。 お子さんにルールが理解できるゲームであればなんでも構いません。

お父さん、お母さんと競って遊んで、自分が勝つ機会でもあれば、大きな自信の源にもなります。 遊びながら理系科目の力を育てるツールとしては、まさにうってつけです。

コミュニケーションから身につける算数力

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机の上の勉強が始まる前から、日常のさまざまな場面で算数、論理思考の力は育んでいくことができます。

お子さんの年齢に合わせ、コミュニケーションのなかでつけていく算数力、ぜひいろいろ工夫してみてください。

お父さん、お母さんとの楽しい思い出のなかで培った力は、先々お子さんのすばらしい宝物になるはずです。

執筆:西村則康

Profile

西村則康

西村則康

教育研究家。家庭教師集団「名門指導会」代表。中学受験ポータルサイト『かしこい塾の使い方』主任相談員。日本初の「塾ソムリエ」として、塾の活用法や塾選びなどの受験ノウハウを世に送る。テレビ、新聞、教育雑誌などで活躍中。おもな著書に『いちばん得する中学受験』(すばる舎)、『中学受験基本のキ!』(日経BP社)、『頭のいい子の育て方』(アスコム)、「中学受験は親が9割」シリーズ(青春出版社)など、20冊を超える著書がある。

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