【産婦人科医監修】妊娠中は痔になりやすい?痛みや薬、手術は必要か

診察は何科に行くべきか、また対処法など

【産婦人科医監修】妊娠中は痔になりやすい?痛みや薬、手術は必要か

妊娠中や産後に痔になったという妊婦さんはいるのではないでしょうか。妊娠中に痔になりやすい原因と妊婦さんがなりやすい痔の種類をご紹介します。また、痔になったときには何科を受診するべきか、治療法と痔の手術は必要かについて解説します。

妊娠中は痔になりやすい?痔になる原因

妊娠をきっかけに痔になったという人は少なくないでしょう。妊婦さんが痔になりやすい原因を詳しくみていきましょう。


ホルモンバランスの変化

妊娠すると黄体ホルモンの分泌が増えますが、黄体ホルモンは腸の動きを抑制する作用があるため、お腹の張りや便秘を起こしやすくなります。

ホルモンバランスが乱れて腸の動きが悪くなり、便秘から痔を引き起こすことがあります。


子宮が大きくなる

妊娠中期から後期になると子宮が大きくなり、腸や肛門周辺に圧力がかかります。腸から肛門にかけての血行が悪くなり、静脈に血液が溜まるうっ血状態になるため、痔ができやすい状態になります。

子宮が腸を圧迫して腸が狭まると便が溜まりやすくなるため便秘になり、痔の症状を悪化させる場合があります。


血行が悪くなる

つわりの影響から食事がとれなくなり、栄養バランスが崩れて血液の流れが悪くなることが痔につながることもあります。

また妊娠中期から後期になるとお腹が大きくなり、運動量が自然と減るため血行不良になりやすく、痔の症状を悪化させる場合があります。


いきみ

トイレ
iStock.com/TheDman

ホルモンバランスの変化や子宮が大きくなることで便秘になりやすくなると、排便時に強くいきむことになるでしょう。

排便時にいきむと肛門周辺の皮膚が裂けたり、切れたり肛門周辺に負担がかかると痔核ができる原因になります。

また、内側にできた痔は、いきみが加わると肛門から飛び出す脱肛になる場合もあります。

妊婦さんがなりやすい痔

痔にも種類がありますが、妊婦さんは特に以下の痔になりやすいです。


いぼ痔

子宮が大きくなって、肛門周辺が圧迫されたり、分娩時にいきむことで肛門まわりの静脈がうっ血して、いぼ状に腫れてできるのがいぼ痔です。

いぼ痔には、肛門の内側にできる「内痔核」と外側にできる「外痔核」があります。

内痔核は排便時に出血があっても痛みはない人もいます。しかし、重症化すると歩いただけで脱肛する人もいます。

外痔核は肛門の外側にしこりのようなものができます。出血は少ないですが、痛みがあり、重症化すると椅子に座るだけで痛いと感じる人もいます。


切れ痔

排便時に強くいきんで便を出そうとして肛門周辺の皮膚が切れたり、裂けて傷になって起こるのが切れ痔です。

ひどい下痢症状から肛門周辺の皮膚が荒れて切れ痔になる人もいます。

切れ痔は、排便のたびに皮膚が切れたり、裂けたりして出血して痛みを感じます。


あな痔

肛門周囲から細菌が侵入して炎症を起したり、化膿することが原因で起こるのがあな痔です。

排便時以外でも膿が溜まっている周辺に異物感や違和感を感じたり、膿が外に流れ出る症状がみられます。なかには発熱を伴ったり、排便時以外でも激しい痛みを感じる人もいます。

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痔になったときの対処法

痔になったときにはどのように治療や対処するのでしょうか。


薬での治療

基本的に塗り薬や坐薬、内服薬で治療する場合がほとんどです。

妊娠初期の場合は、お腹のなかの赤ちゃんの影響も考えて薬の使用を避けることもあるので、妊娠していることを必ず医師に伝えるようにしましょう。

医師と妊婦さん
iStock.com/Image Source

肛門を温める

お尻を温めると、うっ血状態が和らぐことがあります。

お風呂に入るときは、湯船にしっかり浸かってお尻を十分に温めましょう。

肛門を清潔に保つことが痔の治りをよくします。


適度な運動

身体を動かすと、腸も動いて便秘も解消されやすくなります。特にウォーキングなどの全身運動は肛門まわりの血行をよくするのでおすすめです。


食物繊維を摂る

栄養バランスが崩れると便秘になりやすくなります。

野菜や果物、キノコ、豆、海藻、イモ類などは便秘によいといわれている食物繊維が豊富なので積極的に取り入れるとよいでしょう。


痔の手術

薬で治療しても症状がよくならなかったり、痛みや腫れが強く続く場合は手術になる可能性があります。

痔の種類や症状の程度によって麻酔の範囲や日帰り手術になるか、入院して手術を行うかが変わってきます。

妊娠中でも胎児に負担がかからない姿勢で痔の手術はできますが、手術は麻酔の影響を考えて安定期に入ってから行うことになったり、手術できる時期が限られます。

痔になったら何科でみてもらう?

肛門の痛みが強くなく、排便時に少量の出血が出る程度の場合は、妊婦健診のときに産婦人科で診てもらってもよいかもしれませんが、排便に関係なく、肛門の痛みが強かったり、排便時にも出血量が多いなど痔の症状が悪化しているときには肛門科を受診するようにしましょう。

肛門科を受診するときには、妊娠していることを必ず伝えることが大事です。

痔になったら早めの受診と治療が大事

診察をする妊婦さん
iStock.com/FatCamera

妊娠中はホルモンバランスの変化や子宮が大きくなることなどから痔になりやすくなります。

痔にも種類があり妊婦さんはお腹が大きくなり、腸への圧迫、排便時のいきみなどから切れ痔、いぼ痔、あな痔に特になりやすいです。

出血や痛み、腫れなど症状が強く出ているときには専門家である肛門科の受診が必要になります。痔の症状が見られたら、我慢せずに病院を受診することが大切です。

痔の症状によって薬で治療するか、手術で治すか先生と相談になるでしょう。

痔になると、恥ずかしいと受診をためらってしまう人もいるかもしれませんが、痔を経験する妊婦さんは多いです。

痔は悪化すると治るのに時間がかかるため、早めの受診と正しい対処法が重要になります。


監修:杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

Profile

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。 患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

2019年01月21日

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