【産婦人科医監修】妊婦と冷え性の関係。冷えからくる、腹痛やお腹の張りへの影響や対策

【産婦人科医監修】妊婦と冷え性の関係。冷えからくる、腹痛やお腹の張りへの影響や対策

妊娠前は冷えとは縁がなかったのに、妊娠した途端に冷え性になり影響が心配という妊婦さんは少なくありません。妊娠中の冷えの原因や冷えからくる腹痛、お腹の張りといった気になる症状や妊娠中に有効な冷え対策をご紹介します。また妊娠中も熱中症を予防するためエアコンの上手な使い方や注意点を解説します。

多くの妊婦さんが悩む「冷え」

体調不良を訴える妊婦さんの多くが”冷え”に悩んでいます。妊娠前は冷え性ではなかったという人でも、妊娠した途端に手足やお腹が冷えるようになることもあるようです。

特に夏はエアコンの利用や冷たい食事や飲み物を好んだりして、冷え性の人や妊婦さんは一層冷えに注意が必要な季節です。

もともと冷え性ではなかったという妊婦さんの場合、冷えの症状に気づくのが遅れることがあります。妊娠中に冷え性になるとどういった症状が出るのでしょうか。

妊娠中の冷えの症状

妊娠 足冷える
iStock.com/comzeal

・手足が冷たい
・お腹が冷たい
・お腹の張り
・腹痛
・下痢
・恥骨痛や腰痛

などがあげられます。心地よいマタニティライフを送るためにも、冷えは妊娠の大敵といえます。また妊娠中の冷え性が悪化すると、つわりやあとづわりの悪化や早産にもつながると言われています。今は冷えを感じていないという妊婦さんも冷え対策の知識を持っておくことは必要かもしれません。

妊娠中の冷えの原因や対策について見ていきましょう。

妊娠中の冷えの原因

エアコンなどの風

妊娠中は、手足やお腹が冷える反面、妊娠を継続させるために働く黄体ホルモンの分泌が活発になり、体温が平常時より高温となります。そのため、身体がほてっているように感じる妊婦さんも少なくありません。

妊娠中に冷えはよくないとはいっても、身体が熱を持っているように感じたり、暑い季節に妊娠特有の身体のほてりを感じるときは、無理は禁物です。熱中症対策のためにも、エアコンや扇風機などを利用しましょう。しかし、空調で身体を冷やしすぎることは、妊娠中の冷え性の主な原因といわれています。


ホルモンバランスの変化やストレス

妊娠してホルモンバランスが大きく変化したり、急な身体や心の変化から自立神経が乱れることで冷え性になる妊婦さんもいます。

妊娠中はできることに制限があったり、つわりや睡眠障害などの体調不良からストレスを感じやすい状態です。手足の冷えやお腹の張りを感じたら休んだり、お茶や読書などリラックスできる方法をみつけておくとよいですね。


妊婦さんの姿勢

妊婦 立ってる
LDWYTN/Shutterstock.com

妊婦さんは日に日に大きくなるお腹を支えたり、無意識にお腹を守ろうとして、不自然な姿勢をとることが多いでしょう。無理な姿勢を続けることで、血行不良が起きて、身体が凝ったり、手足が冷えることがあるようです。

また妊娠中は、お腹周りの状態も胎児の成長に合わせて急激に変化します。妊娠に伴い急激に体重も変化するため、個人差はあるものの骨盤に負荷がかかり血行不良や下半身の冷えを起こしやすいといわれています。

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妊娠中に冷えると手足のむくみ、腰痛が悪化する、下痢をするなどの弊害が現れることがあります。ほかにもつわりの程度に影響したり、深刻化するとお腹が張りやすくなり、早産につながるなど、さまざまな影響が指摘されています。

妊娠中の冷え対策

妊婦さんができる、主な冷え対策をご紹介します。


身体を温める食事

うどん
iStock.com/4kodiak

もともとは冷え性の人でも、妊娠によるホルモンバランスの変化が原因で妊娠すると基礎体温が上がり、のぼせやすい状態になります。さらに近年の夏は酷暑。冷たいものしか食べられないという人も多いでしょう。

とくに妊娠初期や臨月の妊婦さんは食事が思うように進まない状況の人が多く、涼しい季節であっても冷たい麺類やアイスクリームなどの冷たいデザート類しか受け付けないという人も少なくありません。

しかし、時には根菜類や肉類といった身体を温める食材を口にすることも大切です。根菜類なら冷製ポタージュにしたり、肉であればサラダに入れたりして無理のない範囲で摂取するようにしましょう。

そして1日1食は温かい主食をとるのがおすすめです。うどんや、炊き込みご飯など消化が良く、すぐ熱に代わるようなものを意識して取り入れてください。

他にも水の代わりに温かい白湯を飲む、冷たいデザートといっしょにノンカフェインのお茶やコーヒーを温めて飲む、なども身も心もリラックスできて、冷えにも効果があるかもしれません。


腹巻や腹帯を利用

妊婦さんのなかには、お腹が冷えると張りを感じる人も多いようです。妊婦さんは風邪などを引いても薬の服用に注意が必要です。お腹の張りの予防のためにも身体、特にお腹周辺を冷やさないことが大切です。

エアコンが効いている部屋にいるときや、寒い季節には腹巻や腹帯を利用するとよいでしょう。

腹巻や腹帯は、下痢や腹痛のあるときにも効果的です。巻いたときに、締めつけ感を感じたり、のぼせを感じないようにゆとりのあるものを選んでください。さらしや、腹巻き、コルセットタイプなど、さまざまな形や素材が豊富にあるので、時期や着け心地など自分に合うものが見つかるとよいですね。

また、エアコンのなかに1日中いるときや、寒い季節にはソックスやストールなどを利用し、首や手首、足首を冷やさないようしましょう。


軽い運動

マタニティヨガ
iStock.com/da-kuk

妊娠中は、お腹の赤ちゃんを支えたり、守ろうとして姿勢が悪くなりがちです。お腹が大きいので反り返るような姿勢にもなりやすく、骨盤に負担がかかります。骨盤周辺の骨格も広がったり反ったり、急激に変化するため、骨盤周りの筋肉が緊張して固まりやすく、血行不良が起きて冷えやすくなります。

さらに運動不足だと血流が悪くなります。安静にするように医師から指示があった人以外は、冷え対策のためにも軽い運動を取り入れましょう。ストレッチや散歩など軽い運動を続けることで血流促進にもつながるでしょう。

もともと運動をしている人や妊娠の経過が順調な妊婦さんは、マタニティヨガやマタニティビクス、マタニティアクアも推奨されています。産院が提携している場合もあるので、かかりつけ医に確認してみるのもよいかもしれませんね。

妊娠中の冷え対策やストレス解消に有効な運動ですが、医師に相談しながら無理のない程度に行うことがポイントです。


足湯

先端から温める足湯は手軽にできて、妊娠中のマイナートラブルのひとつである足のむくみにも効果があります。洗面器に30℃~40℃程度のお湯を、足首が隠れるくらいまで張り、10分くらい足首を浸けます。お湯の温度が高すぎたり、あまり長く浸かりすぎると、のぼせたり、お湯が冷めて逆に足が冷えてしまうことがあります。心地よいと感じる程度でやめることが大事です。

足湯は、自分の好きなタイミングで温まれて、夏場でも蒸れすぎないのでおすすめですが、お腹や腰に負担のかからない姿勢で行ってください。

こういった冷え対策を行うことで、妊婦さんがリラックスできたり、気分転換できることが大切です。さまざまな対策を取り入れても、冷えがよくならない場合にはかかりつけ医に相談しましょう。

また冷えが起因すると思っていた、足のむくみや腹痛、下痢が改善されないなどの場合にもかかりつけ医に相談しましょう。重大な病気による症状のこともあります。お腹の張りが取れない、つわりが改善しないなどのときは健診でなくても受診をしてください。

妊娠中の上手なエアコンの使い方

妊娠中はホルモンバランスの影響で体温が上がりのぼせやすい状態になっています。

妊娠してから冷えを感じるようになったり、体を冷やしてはいけないからといってエアコンを使わずにいると、熱中症になったりと妊娠に悪影響を引き起こす場合があります。しかし、エアコンの風に当たりすぎると、下痢や腹痛、手足の冷えにつながることもあります。

妊娠中のエアコンは、26℃~28℃程度の設定し、風の向きを調整し直接身体に風が当たらないよう、ときにはブランケットや上着でエアコンの当たる面積を調整して利用しましょう。寝ているときには、スリープモードに設定したり、部屋が冷えすぎないようにドアをあけて冷気の通り道を作るなどの工夫をするとよいですね。

お腹の赤ちゃんと夏の冷えを乗り切ろう!

まま 子ども
iStock.com/GOLFX

妊娠すると冷え性になり、お腹の張りや、腹痛などのマイナートラブルを感じる妊婦さんも多いようです。妊娠中の冷えは、ホルモンバランスの変化やストレス、姿勢などいくつかの要因が重なって引き起こされます。

妊娠中の冷えは禁物と頭でわかっていても、実際には妊婦さんは冷えやすい反面、のぼせやすく体温調整が難しいですよね。特に夏は熱中症の危険性もあるため、冷え性の妊婦さんもエアコンを上手に利用しましょう。冷え性が悪化すると、つわりがひどくなったり、早産につながる可能性もあります。

寒い季節はもちろんですが、エアコンなどの空調を利用する夏も、腹巻や腹帯を活用したり、適度な運動と足湯など工夫をして、お腹の赤ちゃんとできるだけ快適に夏を過ごしたいですね。


監修:杉山 太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

Profile

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。 患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

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