水痘(水疱瘡)は例年、流行時期になると保育園や幼稚園で集団感染がおこるほど感染力の強い病気です。水疱瘡の予防接種、水痘ワクチンは、数年前まで任意接種でしたが、2014年に定期接種となりました。水疱瘡の感染経路や潜伏期間、症状。また水痘ワクチンの値段や接種の間隔、同時接種や副作用について解説します。
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水疱瘡は、水痘帯状疱疹ウイルスによる感染症です。
保育所における感染症対策ガイドラインや学校保健安全法によると、水疱瘡は感染力が強く、感染したら、「すべての発疹が痂皮するまで」出席停止とされている病気です。感染経路や潜伏期間、症状について解説します。
水疱瘡に感染すると、以下のような症状があらわれます。
・38℃前後の発熱
・赤い発疹の中心に水疱がある
水疱瘡は、水疱が全身にできるのが特徴です。発熱を伴っても、3~4日で下がることがほとんどです。初期症状は、皮膚にぽつぽつと赤い発疹ができ、そのあとかゆみのある水疱へと変わります。水疱は最終的に、かさぶたになって完治します。発熱からすべての水疱がかさぶたになるまでには1週間程度かかることが多いようです。
水疱瘡の感染経路は、「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」です。
麻疹ほどではないですが、空気感染を起こすため、感染力は高い感染症といえます。咳やくしゃみなどの「飛沫感染」と、感染者の水疱や粘膜からの分泌物が、ドアノブやおもちゃなどにつき、物を介してそのウイルスを触ることでうつる「接触感染」も多く起こります。
水疱瘡の潜伏期間は、2週間(10~21日)程度です。発疹が出る1~2日前からうつる可能性があります。症状発症後も1週間程度は、ウイルスが排出されるため、周囲に感染する可能性があります。
水疱瘡は、麻疹などに比べると、重症化する可能性は低いです。しかし、皮膚の細菌性二次感染や、脳炎や中枢神経合併症などの合併症を引き起こす可能性があります。
水疱瘡は幼少期の予防接種で感染を予防できる病気です。
水疱瘡のワクチンの正式名称は、水痘ワクチンです。水痘ワクチンを打っておくと、抗体ができ水疱瘡に感染したときでも重症化を防げるため、水痘ワクチンの接種は有効と考えられています。
水痘ワクチンを受けるタイミングや、接種と接種の間はどのくらい間隔をあけるべきか、同時接種が可能かなどを解説します。
水痘ワクチンは、生ワクチンです。皮下注射で接種します。
水疱瘡の予防接種は、以前は任意接種でしたが、平成26年10月1日より、定期接種になりました。水疱瘡の予防接種は現在、対象年齢(1歳以上3歳未満)などの一定条件を満たしている赤ちゃんは自己負担なしでできます。住んでいる市町村によって条件に違いがあることがあるので、詳しい条件はそれぞれ住んでいる地域の役所のホームページなどで確認しましょう。
子どもの体調不良などで接種期間が過ぎてしまった場合などは、任意接種としての接種となり、自己負担が生じます。接種する時期を確認し、計画的に予防接種を受けることが大切です。
水痘ワクチンの接種回数は合計で2回で、生後12ヶ月から生後36ヶ月未満(1歳から3歳未満)が対象です。
1回目の接種は生後12ヶ月(1歳)から生後15ヶ月(1歳3ヶ月)までに行うのが一般的で、2回目の接種は、1回目の接種から3ヶ月以上(可能であれば半年から1年)間隔をあけてから行います。
予防接種の期間に何度も病院に行くのは大変ですよね。赤ちゃんの体調のよいときを狙って、種類の違うワクチンを同時に接種するのはよいのでしょうか。
赤ちゃん期に接種が定められているワクチンは種類が多いため、行政から届く予防接種のお知らせなどでは同時接種が推奨されているでしょう。
水痘ワクチンは、1歳で接種するMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)、おたふくかぜワクチンと同時接種することもできます。
同時接種の副反応が気になる場合には、どの組み合わせで同時接種をしてよいか、かかりつけ医と相談するとよいでしょう。
薬を飲んだときに、薬の効果以外の症状が出ることを薬の「副作用」といいます。ワクチンを接種したあとに、熱が出たり、注射をした部位が腫れたりするなどの反応が出る場合はワクチンの「副反応」といいます。
水痘ワクチンの副反応にはどういったものがあるのでしょうか。
実際に水痘ワクチンの副反応として以下のような症状の報告があった症状です。
・発熱
・発疹
・患部が腫れる
・患部がかたくなる
発熱や発疹は、一時的で数日で消えることが多いため、焦らずに安静にして様子をみるようにしましょう。
まれに予防接種後30分以内に、重篤な副反応(アナフィラキシー症状)が出ることがあります。
・高熱
・ひきつけ
・呼吸がしづらい
・顔や手足の腫れ
・水分が摂れない
・ぐったりしている
微熱の場合でも、水分が摂れない、排尿が少ないときや、上記のような症状がみられたときには、すぐに病院で受診するようにしましょう。
予防接種は身体に免疫をつけるため、菌やウイルスを体内に取り入れる医療法です。予防接種後は基本的にはいつも通りの生活で大丈夫ですが、下記のようなことを意識しておくとよいでしょう。
予防接種をした直後は、絵本を読んだり、パズルやブロックなどの室内遊びをするようにし、身体を使った遊びや外遊びは控えるようにしましょう。安静に過ごすことが大切です。
予防接種後30分程度は、アナフィラキシーショックなどの症状を起こさないか、病院で待つよう指示される場合もあります。気になる症状が出たときに病院ですぐにみてもらえるように、予防接種を受けた場所の近くにいる方がよいでしょう。
お風呂に入ったときに、注射を打った箇所をこすったり、もんだり、ゴシゴシ洗うことはやめましょう。予防接種後にお風呂に入るのは問題ありません。
水疱瘡は、保育所における感染症対策ガイドラインで、幼稚園や保育園で出席停止が定められている感染力の強い病気です。予防接種を受けておけば、水疱瘡に感染するリスクを減らしたり、万一、水疱瘡にかかったとしても重症化を予防できます。
水疱瘡の予防接種、水痘ワクチンは受ける期間や回数が決まっている定期接種です。水疱瘡の予防接種時期や1回目と2回目の接種間隔を把握し、予防接種の副反応や注意点をよく理解して、計画的に受けるようにしましょう。
千葉智子(上高田ちば整形外科・小児科)
上高田ちば整形外科・小児科 副院長。
小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。
※記事内で使用している参照内容は、2018年9月18日時点で作成した記事になります。
2018年09月20日
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