「バカ」「キモい」投稿で最大30万円の罰金!子どもにネット上の誹謗中傷をどう教える

「バカ」「キモい」投稿で最大30万円の罰金!子どもにネット上の誹謗中傷をどう教える

小学生の約半数がスマホを持つ時代、テクノロジーの恩恵の裏に隠れるリスクをどこまで把握していますか? コミックエッセイストのハラユキさんといっしょに、保護者が知っておきたいネットリテラシーを専門家に伺う企画。第三弾は、成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子さんに、ネット上の誹謗中傷について伺いました。

 

ネットの発言の責任を問われるのは12歳から

ネット上に他人を誹謗中傷する投稿をした場合、投稿者が子どもであっても訴えられることがあります。

有名な話に、お笑い芸人のスマイリーキクチさんの例があります。キクチさんは実際にはまったく関係のない殺人事件の実行犯として仕立て上げられ、1999年ごろからネット上の苛烈な誹謗中傷に苦しんでいました。

2008年になっても中傷は止まず、刑事告訴のために犯人の身元を1200〜1300人以上特定。中でも特に悪質な投稿をしたと判断された計19人の中傷犯を検挙しましたが、最年少は17歳の高校生でした。

キクチさんが犯人としてでっちあげられた殺人事件は、その高校生が生まれる前に起きています。信ぴょう性のないネットの噂を信じ、正義感に駆られて投稿した内容が法を犯した例です。

「17歳なんてまだ未成年だけど、罪を問われるの?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、投稿の内容次第では小学生でも責任を問われます。
※写真はイメージ(iStock.com/Pranithan Chorruangsak)
詳しく説明すると、まず事件には刑事と民事があります。

刑事事件として投稿者が訴えられた場合、少年法が適用される14歳未満の子どもは保護観察処分や少年院への送致にとどまります。14歳以上になれば、未成年であっても逮捕され、警察の留置場へ送られる場合があります。

民事事件として訴えられた場合、刑法で罰せられて逮捕されたり前科がついたりすることはありませんが、損害賠償に問われます。この場合は責任能力の有無が判断され、最近の事例だとだいたい12歳以上、つまり小学6年生くらいから責任を問われています

以上のことから、「未成年なら大目に見られる」という考えは捨てた方がいいことがわかります。

先のキクチさんの件で少年が問われた罪は、名誉毀損罪です。ネット上の誹謗中傷は、主に名誉毀損罪か侮辱罪にあたります。どちらも公然の場で他人を誹謗中傷したときに適用されます。

「じゃあ鍵アカ(非公開アカウント)なら無罪なの?」と思うかもしれませんが、非公開でも有罪とみなされることがあります。

SNSの非公開アカウントに限らず、LINEグループ内やオープンチャットでの会話であっても、第三者に知られる可能性が高いとみなされれば有罪となります。過去には20人程度しか参加していない非公開の場での書き込みが有罪と判断された例もありました。
※写真はイメージ(iStock.com/bee32)
つまり、「たくさんの人が見る場所じゃないから何を書いてもいいや」という認識はNG。そもそも名誉毀損罪・侮辱罪ではなく脅迫罪などに当たる場合は、公然かどうかは問われません。

訴えられた投稿が名誉毀損罪か侮辱罪かを分けるのは、具体性の有無です。

例えば、「〇〇に勤めるAは昔Bと不倫していた」「Cは前科持ち」などのように、具体的な事柄を挙げて他人を中傷した場合、それがうそか本当かにかかわらず名誉毀損となります。

一方、「バカ」「気持ち悪い」「生きてる価値がない」と言ったように、内容が具体的でない場合は侮辱罪に該当します。

名誉毀損罪には「3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金」が科されます。一方の侮辱罪はこれまで「30日未満の勾留と1万円未満の科料」にすぎず、これは刑法の中でも最も軽い罪状でした。

侮辱罪の軽すぎる罪状を改めるきっかけとなる事件が、2020年5月に起こりました。リアリティショー出演時の言動をSNS上で苛烈にバッシングされたことを苦に自死したプロレスラーの木村花さんの事件です。

自死のあと木村さんをしつこく悪質な誹謗中傷をした犯人は特定されていますが、名誉毀損にあたるほどの具体性を挙げた書き込みがほとんど見つからず、すべてが侮辱罪に該当しました。人を死に追いやるほどのことをしながら、たった9000円の科料で済まされてしまったのです。

この痛ましい一件をひとつのきっかけとして議論が起こり、2022年7月に侮辱罪が厳罰化されました。「1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料」に罪状が引き上げられたのです。
 
※写真はイメージ(iStock.com/Chainarong Prasertthai)
また、公訴時効も延長されています。これまでは該当の書き込みが1年以内でなければ訴えられず、裁判所犯人の情報開示を請求して、投稿されたプラットフォームに情報をもらうまでのあいだに時間切れとなってしまう例も多々ありました。

しかし今回の法改正で、1年だった公訴時効期間が3年に延長になり、被害者が加害者を訴えるための時間の余裕が生まれました。

さらには2022年10月に、改正プロバイダ責任制限法が施行されました。これによってSNSなどで誹謗中傷をした人の情報開示の手続きが、簡易・迅速になったのです。

これまでの制度では発信者の情報を請求するために、SNSの運営を行う事業者とインターネット接続事業者(プロバイダ)に対し別々に裁判を行う必要がありましたが、今回の改正によってひとつの手続きで済むよう簡易化されました。
 
ネット上の誹謗中傷による被害が止まないなか、法改正で投稿者の特定や損害賠償請求が容易になることは、被害者にとって追い風でしょう。そして同時に、誰かを傷つける投稿をした人が訴えられる可能性が高くなったことを意味します。

迂闊な書き込みで他人を傷つけることの重大さを、子どもにも知ってもらう必要があります。
 
 

なりすましパパ活アカウント作成などのいじめも

ネット上の誹謗中傷は、対有名人に限った問題ではありません。小中学生が同級生などをネットで誹謗中傷することもまた侮辱罪や名誉毀損罪に該当します。

小中学生のネットいじめで最も多く使われているのが、インスタグラムです。

例えば、隠し撮りしたりどこかで手に入れた写真を転用して本人になりすまし、パパ活をしている風の投稿をされる被害は多く報告されています。また、24時間で消えるストーリーズに誹謗中傷を書くいじめも耳にします。

またLINEでは、盗撮した写真をもとに本人の許可なくその姿を使ったスタンプを作り、仲間内で送りあって遊ぶなどのいじめも。ステータスメッセージに、いじめている子の悪口を書く嫌がらせもあります。
 
盗撮した顔写真をおもしろおかしく加工して勝手にTikTokやYouTubeに投稿するいじめも報告されています。

ネットいじめは、子どもたちが遊びで使うSNSに限りません。GoogleJamboardといって、授業中にそれぞれの意見を付箋に書いて貼ることの出来るアプリがあり、そこに悪口を書く子どももいます。

子どもによるいじめや誹謗中傷の多くは、その行為がどれほど人を傷つけるか理解せず、悪意を自覚していません。
 
※写真はイメージ(iStock.com/howtogoto)
おもしろおかしく人の写真を加工したりシェアすることは紛れもないいじめだということ。

人を誹謗中傷した投稿のシェアやリツイートもまた誹謗中傷であること。

誰かの投稿を理由に自死を選ぶ子もいること。

それらを日ごろから子どもに伝えておく必要があります。

また、冒頭の漫画でハラユキさんがお話されているような、一見人を悪く言うようには見えない子どもでも油断は禁物です。おとなしそうに見える子が、SNSやオンラインゲームなどでは攻撃的な一面を見せることも珍しくありません。

日ごろのうっぷんをネット上の誹謗中傷で解消する人は、大人にもたくさんいます。スマイリーキクチさんの件でも、摘発された投稿者たちは「あいつは芸能人で恵まれている。俺は離婚したばかりで、あいつよりずっと辛い」などと供述する人がいました。

自分の生活で辛いことがあったとしても、ネット上で誰かを誹謗中傷していい理由には決してなりません。まずは、そのことを子どもに教えていきましょう。
 
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高橋暁子

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成蹊大学客員教授・ITジャーナリスト。

SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。NHK『クローズアップ現代+』『あさイチ』などメディア出演多数。『ソーシャルメディア中毒』などSNS関連の著作は20冊以上。教育出版中学校国語の教科書にコラム掲載中。元小学校教員で中学生の母でもある。

公式サイト
Twitter:@akiakatsuki
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ハラユキ

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コミックエッセイスト&イラストレーター。
おいしいごはんとお風呂屋さんと祭りが好き。近著に、国内外の多様な家族を取材し、その家事育児分担とコミュニケーションをまとめた『ほしいのはつかれない家族』(講談社)。

公式HP
<漫画>ハラユキ
<取材>ハラユキ、KIDSNA編集部
<執筆>KIDSNA編集部

2022年11月09日

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