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3分で子どもが泣き止む、辻直美先生が伝授する正しい「まぁるい抱っこ」の方法
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国際災害レスキューナース
国際災害レスキューナース
吹田市市民病院に勤務後、上海での医療提携活動に従事。帰国後、聖路加国際病院救命救急センターに勤務し、その際、地下鉄サリン事件の救急救命にあたり、その後国際災害レスキューナースとして東日本大震災や熊本大地震などの被災地での救命活動、被災者の心のケアも行う。また、自身の育児と同時に同居する舅・姑の介護をすることになり、その経験からベビーの抱っこの仕方、親のあり方、災害時の対応など、育児に関するさまざまな講演会や講座、スリングの商品化などの活動を精力的に行っている。近著に『3秒で泣き止み、3分で寝る まぁるい抱っこ』(講談社)がある。
「抱っこするだけで子どもが泣き止む」と、多くのママたちから支持されている「まぁるい抱っこ」。第2回目は「まぁるい抱っこ」を考案した正看護師の辻直美先生に、抱っこをする際の姿勢や、正しいやり方のポイントを教えてもらいました。
心地の良い姿勢で抱っこを
抱っこは、される側の子どもはもちろん、する側のママやパパのお互いが心地良いのがベストです。では、お互いどんな形が心地良いと感じるのでしょうか。
赤ちゃんが快適なのは「W」「M」の姿勢
「赤ちゃんや幼児は自分たちが自然にリラックス姿勢を知っています。それが手はW字、股と脚はM字のWM型の姿勢です。
M字開脚になることで自然と背中が丸くなる、関節を曲げたいときに曲げられ、伸ばしたいときに伸ばせるスタイルになります。だからその型に気をつけて抱っこすれば、赤ちゃんもスーッと泣き止んだり、ぐずっている子も心が落ち着くんですよ」と、辻先生。
なかでも大切なのが下半身が「M」の形になっていること。М字開脚とは、ひざを曲げ、ガニ股で股を開いた状態をさします。骨盤を横から押したり、足をむりやり引っ張って力をかけてまっすぐな状態にすると、股関節脱臼(詳しくは次の章を参照)を起こしやすくなるので要注意です。
このM字開脚は、まぁるい抱っこをするときだけでなく授乳・おむつ替えなどお世話をするときも意識して行うようにしてください。
逆に手は「W」にこだわらなくてもOKです。
股関節脱臼になってしまうと……
太ももの付け根にある股関節が外れる病気で、乳児期の姿勢が原因になって起こることが多いものです。
脱臼している場合、脱臼している脚のひざが低く、両ひざの高さに違いが出たりします。
他にも、脚を開きにくくなったり、開くときに音が鳴ることも。そのまま放っておくと、歩きはじめが遅くなる、脚をひきずるようにして歩く場合もあります。
おむつ替えのときなどに確認し、このような状態がみられるときは股関節脱臼の可能性があるので、医師の診察を受けましょう。
抱っこをする前のママの姿勢をチェック
ママがずっと子どもを抱っこするには姿勢がポイント。抱っこする前、どんなところに注意したら良いのでしょうか。
正しい姿勢を確認
まずは、基本の正しい姿勢を身につけましょう。
足の裏全体に自分の体重を乗せます。特に足の親指に体重が乗っていることを意識しましょう。このとき上にすっと伸びる木をイメージして立つのがポイント。全身鏡があるなら自分でまっすぐ立てているか確認してみてください。
うまく抱っこできないときは姿勢を見直して
抱っこがうまくいかないときはママの姿勢に原因があることが多いと言われています。ここでは、ママがやりがちなNG姿勢をあげてみたので、自分の姿勢を見直してみてください。
猫背
猫背になると重心がかかと寄りに。足の指が浮き気味になるので抱っこしていても不安定な状態になり、抱っこされている子も落ち着きません。また、猫背のまま抱っこしていると肩こりや腰痛の原因にもなります。
反り腰
反対に反り腰になってしまっても、腰痛や下半身太りの原因になるので、自分で注意してスタイルを確認するようにしてください。
子どもを抱っこするときの4つのポイント
子どもが安心してママに身を委ねられるような「まぁるい抱っこ」をするために大切なポイントは4つあります。
今回は赤ちゃんを抱っこするときを例にして教えてもらいました。
頭の位置はデコルテに
赤ちゃんのうなじから背中を、手のひらを使って優しく支えます。もう一方の手は赤ちゃんのお尻~太もも~ひざにかけてやさしく当てます。決して赤ちゃんを持ち上げたり、ギュッと押さえるのはNGです。
赤ちゃんの頭の高さは常に自分のデコルテにくるようにします。
3歳児くらいまでの子どもは、ママの鎖骨からおへそくらいまでに収まる大きさなので、頭の高さをデコルテにすると、赤ちゃんの体をしっかり受け止められます。自分の体の軸と赤ちゃんの体の軸を合わせることが大切です。
脚をM字に
子どもの脚をМ字開脚にして包み込むように抱き、赤ちゃんの股間がママの方を向き、足の指が外を向くようにします。
このとき赤ちゃんの太ももの裏側がママのおなかにしっかり当たっているかがポイント。また、太ももやひざの位置がお尻よりも高いところにあることを確認します。
お尻がV字
赤ちゃんのお尻からひざにかけてのラインがV字を描くようにします。
赤ちゃんは気持ちが良いとき、お尻が柔らかくなります。反対に緊張していると固くなるのでリラックスできているか確認してみてください。
横から見たとき「も」の字かチェック
横から見たとき、赤ちゃんの頭からひざまでがひらがなのもの字のようになるようにします。このとき、赤ちゃんの首は反らず、ママのデコルテにぴったりついているかを確認してみてください。
この姿勢が、密着度が高く、子どももママも心地が良い状態です。
幼児を抱っこするときのポイント
基本は赤ちゃんといっしょですが、大きい子どもの場合は、脚が長くなるので、脚をしっかり胴体にからませ、子どものひざの後ろがママの脇腹から背中の方にくるように意識します。
子どもが怖く感じる抱っこNG例
赤ちゃんを重く感じたり、不安定な抱っこになっていませんか。そういった場合は、抱っこしている姿を全身鏡やお店のウインドウなどでチェックすることがポイント。
そこで、よく見受けられるNGな抱っこ例をまとめてみました。
・赤ちゃんのひざが下がり、脚がだらりと伸びている
→М字になっていないと赤ちゃんがリラックスできません。また、赤ちゃんのお尻がゆるやかなV字カーブを描かずにまっすぐなのもNG。赤ちゃんの脚がМ字開脚にならず、体幹も不安定になります。
・赤ちゃんの上半身が横から見るとまっすぐ
→ママに安心して体をあずけられません。
・ママの腕が伸びきっていて、手だけで抱っこしている
→これだと、低い位置でのつりさげるような抱っこになり、子どもも気持ち良くなく、ママも重く感じます。
正しい姿勢でいっぱい「まぁるい抱っこ」を
実際に子どもに「まぁるい抱っこ」をする前に基本の姿勢を確認しておくと、子どもにとってもママにとっても心地良い抱っこができます。
「まぁるい抱っこ」なら、子どもが大きくなっても重さを感じづらいので、ママも疲れずに抱っこできるのも魅力です。
正しい姿勢を身につけて「まぁるい抱っこ」をたっぷりして子どもとコミュニケーションをたくさんとり、充実した時間を過ごしませんか。
次回は、災害レスキューナースとしても活動されている辻直美先生の「子どもを守りぬく防災対策」を紹介する予定です。お楽しみに!
監修:辻直美(正看護師/育母道代表)
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辻直美
吹田市市民病院に勤務後、上海での医療提携活動に従事。帰国後、聖路加国際病院救命救急センターに勤務し、その際、地下鉄サリン事件の救急救命にあたり、その後国際災害レスキューナースとして東日本大震災や熊本大地震などの被災地での救命活動、被災者の心のケアも行う。また、自身の育児と同時に同居する舅・姑の介護をすることになり、その経験からベビーの抱っこの仕方、親のあり方、災害時の対応など、育児に関するさまざまな講演会や講座、スリングの商品化などの活動を精力的に行っている。近著に『3秒で泣き止み、3分で寝る まぁるい抱っこ』(講談社)がある。