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ベビーサインで通じ合う。Eテレ「おかあさんといっしょ」元ダンスのおねえさん・いとうまゆさん流の子育て
Eテレ「おかあさんといっしょ」元ダンスのおねえさんの、いとうまゆさん。1歳の娘さんとは、ベビーサインを使って意思疎通をはかっているそうです。連載最終回のこの記事では、いとうさんがベビーサインをはじめたきっかけや、ベビーサインを使った子育てについてお届けします。
■前回記事
赤ちゃんとの意思疎通「ベビーサイン」
ベビーサインを始めたきっかけは?
――いとうさんご自身、本も出版されていますが、「ベビーサイン」ってどんなことをするものなんでしょうか。
いとうまゆさん(以下、いとう):ひとことで言うと、手話や簡単なジェスチャーを通して、まだおしゃべりができない赤ちゃんとの意思疎通をはかる方法の1つです。
――赤ちゃんとコミュニケーションできるっていいですね。ベビーサインを始めたきっかけは何ですか?
いとう:まだ結婚する前に、たまたまベビーサインのDVDの振付のお仕事をいただいて。その時は演者として参加するだけの予定でしたが、詳しく知るうちに「子ども好きだし、子どもと接する時に役立ちそうだな」と興味がわいてきて、ベビーサイン講師の資格を取りました。
おしゃべりできなくても、サインで意思表示
――ご自身の子育てにもベビーサインを使っているんですか?
いとうさん:はい、使っています。ベビーサインは、手を使ったサインが多いので、おすわりができて両手があくようになったら赤ちゃんも覚えられると思います。うちの娘もおすわりができるようになってから覚えたので、まだ「ベビーサイン歴、弱冠3カ月」なんですよ。
――実はさっきから、娘さんが口もとにひとさし指をあてていますが、これもひょっとしてベビーサインですか?
いとうさん:あっ!本当ですね。このサインは「お水」のサインなんです。(と、いとうさん、マグのお水を娘さんに渡します。するとうれしそうにゴクゴク飲んでいました!)
――すごい!おしゃべりできない赤ちゃんとこうやってわかりあえるって、知りませんでした。
いとう:サインを覚えるのにある程度時間が必要なのと、覚えてもすぐに使ってくれない時もありますが(笑)。そういえば娘がベビーサインを覚えたての頃、ちょっと私が反省するようなことが…。
――どんなことですか?
いとう:その日はずっと機嫌が悪くて、ご飯を食べ終わってからじいっとこちらを見ているので、「もっと」というベビーサインをしながら「もっと食べるの?」と聞いたんです。でも、娘は「ウ~ン、ウ~ン」と怒りながら唸るだけ。サインもやらないし。
何回か同じことを聞いたんですが、私もだんだん疲れてきて「ごはんもっとほしいのに今日は機嫌悪いから、ベビーサイン、やらないんだね」と、お皿を持ち上げたら、より怒りだして…。そこで、ハッと気がついたんです。
「ひょっとしてお皿とスプーンだけが欲しいの?」と聞いて渡したら、パッと笑顔になり「そう!これこれ」と、うれしそうにお皿とスプーンで遊び始めたんです。私はてっきり機嫌が悪いから「もっと」のサインをやらないと思い込んでいましたが、娘はおかわりをしたかったわけじゃなくて、お皿とスプーンだけが欲しかったんです。それをちゃんと「もっと」のサインを使わないことで私に伝えていたんですよね。
わかりあえるうれしさ
――すごいですね。おしゃべり前の赤ちゃんだとうまく気持ちを理解できなくて困ることがありますが、サインをが使えたらそのストレスもなくなりそうですね。
いとう:そうですね。私のまわりでもベビーサイン育児をやったことのある人は、「これなしの育児はもう考えられない」「ふたりめの時も絶対取り入れたい」という人がとっても多いんですよ。
――でも、これだけベビーサインで意思疎通がとれちゃうと、ことばを覚える意欲がなくなっちゃいそうですが…
いとう:それが、むしろ逆なんです。ベビーサインを使うことで、物には名前があるということ、わかりあえるうれしさを理解できているので、言葉への移行もスムーズだといわれています。
――2、3歳ぐらいの、ことばをなかなか話さない子にもベビーサインは使えますか?
いとう:いわゆる「ベビー」の時期を過ぎても、まだ二語文が話せない子だとわかりあうのが難しいこともありますよね。そういう時もベビーサインは大活躍してくれるんですよ。
初心者向けの「ベビーサイン」
――ぜひやってみたいんですが、初心者でもできる簡単なサインってありますか。
いとう:簡単なのは「おしまい」「おっぱい」「もっと(ちょうだい)」あたりですね。この3つをまず覚えると「通じ合える」感がありますよ。
「おしまい」のサイン
手を前に出し、写真のように手のひらを上にしてから、ひっくり返して下にする
「もっと」のサイン
胸の前で両手をすぼめて指先をトントンと合わせる
「おっぱい」のサイン
手の平を握って開くのを2回
もっとコミュニケーションの楽しさを
―いとうさんがこれから挑戦したいことなどをおしえてください。
いとう:今までのダンス関連の活動はもちろん、「ベビーサイン親善大使」でもあるので保育園などでベビーサインをもっと普及させたいですね。ベビーサインを使える大人が増えれば、わかりあえるうれしさを、赤ちゃんにもっと体験させてあげられると思っています。
――ベビーサインを使える大人が増えたら、ママも助かりそうですね。
いとう:はい。それ以外にも、ママのストレスを軽くするための骨盤体操の教室もどんどんやっていきたいと思っています。私自身、妊娠中、産後とトラブルの際は情報に助けられたので、これからは女性が元気でいるために役立つ情報などを発信したり、普及していくようなことをやっていきたいですね。
取材を終えて
ベビーサインで娘さんとにこやかにコミュニケーションを取るいとうさんを見ていると、本当に自然体で子育てをしているんだなという印象を受けました。娘さんも表情が豊かで、大好きなお母さんと一緒にいる時間を心から楽しんでいるように見えました。その場にいる全員が思わず笑顔になるような、あたたかい雰囲気の取材でした。
いとうまゆさん、ありがとうございました。