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3児のママ、hitomiさんが考える子どもの叱り方について
昨年10月に第3子を出産した歌手のhitomiさん。前回の記事では子育てのルールなどについて語っていただきました。今回の記事では、出産の体験談、子育てという人生、子どもの叱り方やアーティスト活動の原動力に迫ります。
3度の出産で一番キツかったのは……
―昨年秋に40歳で3人目のお子さんを出産されたばかりですが、3度の出産でそれぞれ苦労したことや大変だったこと、思い出されるのはどんなことですか?
hitomiさん(以下、hitomi):32歳で出産した娘のときは、まずお産について知らないことばかりだったので、怖いんでしょ?痛いんでしょ?って不安ばかりで。いろいろ調べたところ分娩台に乗らない方法での出産があると知って、私にはそれが合ってると思いました。また、助産師さんが個人でやっている産院がイメージにあったので、昔ながらの助産院を選びました。
―助産院というと畳とか?
hitomi:そうですね。普通のおうちのようなところで。それで23時間かかって最初の子を産みました。でも3回の出産を比べると、最初の出産が時間はかかったけど一番大変じゃなかったような記憶があります。
―へえー。3回のうち、いつが一番大変でしたか?
hitomi:3回目かな?!声で痛みを逃がすように、ウオー!!っていう感じでした(笑)。
―いい声が出そうですね(笑)。
hitomi:歌を歌うときの出し方とも違う、本気の雄叫びですね。子どもたちも立ち会える産院だったので、娘は2回目も3回目も体験しているのですが、2回目のときに私が絶叫しすぎて、ママの変貌ぶりが本気で怖かったって(笑)。だから3回目は部屋の中にいるのが怖いと言って、産む瞬間は隣の部屋に逃げてました(笑)。
人のために生きるという経験
―独身時代と現在で考え方が変わったことがあれば教えてください。
hitomi:一番大きいのは、人のために生きるっていう経験をしてますよね。独身のときはストイックに自分のことだけ考えていればよかったけど、今はとてもそんなことはできない。人のために生きて、学ばせてもらっているという感じです。
独身のときも「人生って学びだよな」とは思ってましたけど、3人を育てていると、日々学びであり自分の弱さを突きつけられます…(笑)。
―オフィシャルブログでは、活発に子育てをエンジョイしている日々が綴られていますが、てんやわんやにならずにどうやってるんだろう?と思う現役ママも多いと思います。
hitomi:うちは主人が自営業なので、夫婦がお互いにスケジュールを調整しやすいというのがひとつあります。あと子育て参加型というか、主人が積極的に子育てに参加してくれるからだと思います。
理不尽な叱り方にならないように
―家事と育児、ご夫婦でどのように分担されてるんですか?
hitomi:分担制ではないです。食事作り、洗濯、掃除、洗い物といった家事は概ね私がやってるんですけど、子どもをあやしたり遊びに連れ出したりは、彼も協力的にやってくれますね。
ただ、彼と私が育ってきた環境も違うので、意見がぶつかることもあります。例えば叱り方について「そういう叱り方はどうなんだろう」とか、話し合いはよくしますね。
―2人同時に、同じことで叱ってしまうことはありますか?
hitomi:まだないです。うちの場合は下の2人がまだ小さいので、大抵お姉ちゃんが怒られるんです。でもその子だけを怒ってしまうのも彼女にとって理不尽になると思うので、どうしてそうなったんだろう?っていうことも考えてあげるようにしてます。
「あなたはあなたの人生だから」
―お子さんにお仕事のことをどのように説明されてますか?
hitomi:説明とかはしていません。ライブやイベントがあったら一緒に来てもらうこともありますし、友達や友達のお母さんに「お母さんがhitomiだよね」と言われることもあるようで、理解はしてると思うんですけど。
でも“芸能人の子ども”っていう部分では、「調子に乗ったような態度は取っちゃダメですよ」とすごく言いますね。やっぱり母がこういう仕事をしてると、特別扱いされたり、そう見られたりすることもあるので、そこは注意しています。「ママはたまたまこういう目立つ仕事をしてるけど、それは良いこともあるし、悪いこともあるんだよ」というように。「あなたはあなたの人生だから。私とは関係なくあなたの人生を築いてかないといけない。私が周りの人に何か言われたからといってあなたのことじゃないから」ということを言っています。
―それを娘さんは真摯に受け止めている様子ですか?
hitomi:昔は、ちょっと周りに自慢してたとこがあったらしいんです。「hitomiって知ってる? 私、ママがhitomiなの」みたいなことをどっかで言ってるって耳にして。子どもだから素直にそうしちゃったのかわからないですけど、それでさっきのような話をしました。たとえ子ども本人に理解されてなくてもちゃんと伝えていかないといけないし、礼儀などもちゃんとしてほしいなと強く思ってます。
アーティスト活動の原動力は「生きるってなんだろう」
―出産直後に新曲をリリースするパワフルなhitomiさんですが、体力維持のためにアーティストとして心がけていることはありますか?
hitomi:歌を歌い続けるために、ボーカルトレーニングをしたり体を鍛えたりはしてます。主人に理解してもらってそういう時間を作るようにしてます。私の場合は、「歌を歌う」という、人に聴いてもらう仕事だから、なるべく自分がいつお客さんの前に出ても大丈夫な状態にしておきたいんです。そのために必要最低限こういうことはしておく必要があると。そう説明して練習やトレーニングの時間を作ってます。
―40代でママ業とアーティスト活動を並行して行うというのは体力的にも非常に大変なことですよね。
hitomi:いやあ、キツいですよ。誰か助けて!と思うときもあります。
―それでも作品を作る原動力はどこにありますか?
hitomi:生きていくことがテーマ、といいますか、自分が若いときから「生きるってなんだろう」という素朴な疑問から(アーティスト活動が)始まってる気がするんです。自分もまだ学んでいる最中で、そういうことが原動力になっているのかなっていう気がします。尽きないんですよね、歌を歌っていく上で。
「生きるってなんだろう」ってすごく壮大なことに思えますけど、それをテーマにしたときに日常の小さなことがすごく幸せなんだって気付いたりして。小さな幸せ集めみたいな。「生きる」っていうことを日常を通して感じながら歌で表現しているという感覚。そういうことを聴いてる人に伝えられたらいいなと思いますし、子どもたちにも「なぜ生きるのか」ということを学んでほしいなと思ってます。
hitomiさんにとっての、キズナとは?
―では最後に、hitomiさんにとって、家族とのキズナをつなげるものはなんですか?
hitomi:「本音」ですね。自分と家族に本音であってほしいって思うんですよね。外に出ていくとみんな建前があって「こういうふうに見せなきゃ」とか私も思ってしまうけど、家に帰ってきたときはみんな本音でいられる家族でありたいし、そうあってほしいと願います。
娘が「実はね……」って言うことがよくあるんですよ(笑)。あの子的にこれはまずいんじゃないかっていうときに使うんですけど、つまり、その前に何か建前を繕ったのかなって。子どもなりに「ママやパパにこういうこと言うと怒られるしな」っていう遠慮がすでにあるようで、「実は」もなくて普通に話していいよって思うんですけど。
自分自身にも言えることなんです。私自身も歌を歌う上で、ピュアでありたいとか、本心で生きていたいっていう思いで歌手になってるんです。とはいえ、いち母親としてなかなか「実はね」ってオープンに話せない自分もいたりして。でも家族とは本音で話せる関係でありたいし、そうできる自分でいたいなと思います。
取材を終えて
0歳児、2歳児、8歳児のママとして大忙しな日々を送りながら、アーティスト活動も絶やさず行っているhitomiさん。スーパーウーマンのように見えますが「キツいですよ!」と正直に話すその姿勢が、最後のご回答の「本音でいる」にもリンクしていました。お子さんそれぞれの意見や個性を尊重して人として対等に向き合い、それを実践するのはなかなかできないこと。感嘆の声が漏れる取材現場でした。
取材:鳴田麻未
撮影:新妻和久