「服育」で幼児期から身につけるグローバルな教養

「服育」で幼児期から身につけるグローバルな教養

KIDSNA編集部が選ぶ、子育てや教育に関する話題の書籍。今回は、装いとふるまいの専門家・安積陽子さんが子どもの「服育」についてわかりやすく解説する『子どもが自分で“合う”服を選べるようになる 服育のすすめ』(‎WAVE出版) を、一部抜粋・再構成してお届けします。

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人の印象は服装だけで決まるわけではありません。

「どのような人が・どのようなアイテムを・どのように身につけ・どのようにふるまうのか」によって変わります。同じ服を身にまとっていても、着る人の個性や雰囲気によって、服の見え方は変わりますし、ふるまい方によっても印象は大きく変化します。

服育というと服だけを思い浮かべる人もいるかもしれませんが、「身だしなみ」「服選び」「着こなし」「身のこなし」この4つの要素を意識しながら取り組むことで、お子さんの装いのスキルを磨いていくことができます。
服育では、以下の5つの価値観を子どもたちに伝えることを目標としています。
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『子どもが自分で“合う”服を選べるようになる 服育のすすめ』(‎WAVE出版)をもとにKIDSNAが作成

「個の時代」や「グローバル社会」で服育が必要な理由

将来の選択肢を広げる「服育」

装いに対する自信は、その人の自己像やふるまい方、人付き合いにも影響を及ぼします。装いに対して自信が持てず、自分がまわりからどう見られているかを気にしてしまうと、せっかく目の前にチャンスがあったとしてもそのチャンスを掴めず、みずからの可能性を狭めてしまうことになりかねません。

私は装いやふるまいといった印象管理の仕事を通して、装いに自信がないゆえに「出会いや仕事のチャンスを逃してきた」と嘆く人々と数多く出会ってきました。また、装いに必要な知識や知恵を身につけてこなかったがゆえに、本来必要のないものに対して散財してしまった人も数多く見てきました。
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※写真はイメージ(iStock.com/YakobchukOlena)
子どもの頃に服育を学べば、装いに対する苦手意識やコンプレックスに悩まされることもありません。

服育によって、子どもは自分を客観的に捉え、なおかつ自信に満ちた大人へと成長することができ、将来の選択肢も広げていきます。

また、服育を伝えるのに早すぎるということも、遅すぎるということもありません。

お子さんが自信を持って自分の服を選べるために必要なのは、親のセンスも経済力も関係がありません。

必要なのは、流行や他者の意見に流されずに、目的に合う最適な服を選べることであり、そのためのスキルを子どもが得られるように家庭で行う教育。それが「服育」なのです。
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※写真はイメージ(iStock.com/zorazhuang)

服育を始める時期は感性豊かな「幼児期」がベスト

服育を始める時期はいつ頃が良いのでしょうか?

できれば、見るもの触れるものをスポンジのように吸収する感性豊かな幼児期(4〜6歳頃)から始めるのが理想的です。

手がかかる時期は親御さんもお忙しいでしょうから服育のために時間を作る必要はありません。朝の着替え時など日常のなかで、服育の要素を会話に取り入れていくと良いでしょう。

小学生、中学生や高校生からでも、服育を始めるのに遅くはありません。

小学生も高学年になると自分の身体の変化や個性により意識が向けられるようになり、自分をより客観的に見つめられるようになります。

中学生や高校生は、周囲の人たちとのコミュニケーションを通してアイデンティティを確立し始め、自分で服を選びたいという思いが強まる時期です。

自分らしさを磨いていく時期ですから、自分の個性を認識できる服育は自己理解に大いに役立つはずです。
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※写真はイメージ(iStock.com/RyanJLane)

パーソナリティを表す「着こなし」を身につける

集団の時代から個の時代へ転換した現代。「着こなし」にも、その人らしさの表現が求められます。その人らしさというのは、服をそのまま着るだけでは生まれません。

「何を着るか」だけでなく「どのように着こなすか」をお子さんと一緒に考えることで、発想力や想像力を鍛えながら、子どもは自分らしさを徐々に認識していくことができます。
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※写真はイメージ(iStock.com/SDI Productions)
自分らしい「着こなし」に合った「身のこなし」を伝えることも、服育の大切なポイントです。

同じ装いでも、姿勢や立ち方、歩き方で印象は大きく変わります。

たとえば、カジュアルなデニムやパーカーを着たときと、ジャケットやドレスを着たとき、どちらも同じ歩き方で良いのでしょうか?

当然、フォーマルな装いのときには、落ち着いていて緊張感のあるふるまいのほうが装いは映えます。カジュアルな装いのときには、軽快な歩き方のほうが洋服は映えます。
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※写真はイメージ(iStock.com/OkinawaPottery)
装いにマッチしたふるまいを見つけるために、子どもを鏡の前で立たせて、歩く・座る・しゃがむなどの基本動作をしながら、お子さんの姿がどのように見えるのか客観的に伝えてあげてください。

自分の姿を客観的に見る機会はなかなかありませんから、スマホで子どもの姿を撮影して一緒に見てみても良いですね。

自分のふるまいが他者の目にはどのように映るかを想像できれば、大人になってからも自分を客観視しながら修正することができます。
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※写真はイメージ(iStock.com/Mikolette)

国際的に通用する教養としての装いを身に着ける

「おしゃれ」の意味について辞書で調べると「服装や化粧などを洗練したものにしようと気を配ること。洗練されていること。また、そのさまや、その人」と記載されています。

他者と競うためのおしゃれや、優越感を得ることが目的のおしゃれは望ましくはありませんが、社会の中で周りの人々との良好な関係を築くために自分の装いに気を配ることは、コミュニケーション力を高めることにもつながります。
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※写真はイメージ(iStock.com/RonTech2000)
「おしゃれな人=たくさんの洋服を持っている人」といった固定概念を持っている人もいるかもしれません。しかし、手持ちの服の数が限られていたとしても、おしゃれは楽しむことができるのです。

西洋諸国でも東洋諸国でも、ハイソサエティにいる人々は、その人の衣装のレパートリーよりも、どれだけ粋なセンスで色や素材を合わせているのかを見ています。

国際的に通用する教養が試されている現在、親が最初に子どもに教えるべきことは、奥行きのある自分を見せられるスキル。

装いは知性や人となりを如実に表すからこそ、お金を使ったおしゃれよりも、知性や感性を感じさせるおしゃれをすることが尊敬につながるとお子さんに伝えてあげましょう。
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※写真はイメージ(iStock.com/LightFieldStudios)

「服育」によって、子ども自身で「正しいもの」を選べるようになる

私は14歳の夏休みに、アメリカの由緒ある家柄の家庭にホームステイをして、同い歳の子どもたちやその友人らと共にひとときをすごしました。

ビーチにあるセカンドハウスに滞在し、昼間は海で泳いだり、野生の鹿たちがのんびりと行き交う小道を自転車ですりぬけながらサイクリングを楽しんだりと、子どもらしい時間を満喫していました。

ところが夜になり、親しい家族と共にレストランで食事をすることが決まると、昼間は太陽の光を前進に向けて無邪気にはしゃいでいた子どもたちが、素敵なアクセサリーをさっと身につけ、上品なワンピースに着替えるのです。
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※写真はイメージ(iStock.com/Olga Sosnina)
子ども同士でいるときには子どもらしくふるまっていても、大人たちが集う夜の場所では、親から指図されなくとも、出かける時間帯やシーンにふさわしい装いをする。

ティーンエイジャーでありながら、カジュアルな装いとドレッシーな装いを見事に使い分け、着飾る術を知っていることにとても衝撃を受けたのを覚えています。

親の背を見て子どもは育つと言います。彼女たちは日頃から親がどこに何を着て出かけるのを間近で観察しているのです。

親が指図をしなくても、自分の背中を通して子どもが正しい選択ができるように導く、これこそが本来目指すべき服育なのではないかと思います。
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※写真はイメージ(iStock.com/BlackSalmon)

装いの知識や語彙は教養

服装に関する知識は、子どもにおしゃれな大人へと成長してもらうために必要なのではありません。

ハイソサエティで育った子どもは、装いに関する知識は文化的教養の一つだと幼い頃から教えられます。

色やデザイン、デザイナー等に関する基本的な知識を持ち合わせていないと、大人になってからパーティーや社交の場で居心地の悪い思いをする可能性が高いのです。

国際的なパーティーや社交の場所では、相手や相手のパートナーの装いを気の利いた言葉で褒めることは、もはや必須のコミュニケーションスキルとなっています。
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※写真はイメージ(iStock.com/simonkr)
もしお子さんが、色の名前や素材の名前、デザインやデザイナーに関する知識を何も持ち合わせていないと、せっかく素敵な装いをしている人と出会っても、「素敵ですね」といったありきたりな言葉しか出てこず、気の利いた褒め言葉をとっさに発言するのは難しいでしょう。

装いの技術を身につけている人々は、人の集まる場所で奇抜なデザインの服装で個性を出したりはせず、控えめながらも相手の見識を図るような服を着てきます。

また、現代では人を褒める際に容姿についての褒めることはタブーになりつつあります。だからこそ、装いに対する褒め言葉や話題が必要となるのです。

国際的なパーティーでは伝統衣装で参加する人もいます。見慣れぬ衣装に対して即座に褒め言葉が見つからない場合でも、デザインの意味や着こなし方について興味を持って尋ねる姿勢が大切です。

人を褒めるということに慣れていないと、大人になってから照れ臭く感じられるものです。

お子さんが小さいうちから互いの装いに対して褒め合う、感想を言い合うなど、装いに関する語彙を増やす機会を作ってあげてください。
書影
子どもが自分で“合う”服を選べるようになる 服育のすすめ
安積陽子(著)
 1,650円(税込み)WAVE出版

2022年04月07日

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