「こんな習い事をやっておけばよかったのに」と専門家が感じるおすすめの習い事

「こんな習い事をやっておけばよかったのに」と専門家が感じるおすすめの習い事

今回は、幼児期の子どもの習い事についての記事です。「塾ソムリエ」の西村先生は、中学受験の家庭教師としてたくさんの子どもと関わるなかで、小さいころにこんな習い事をやっておけばよかったのにと思うことも少なくないそうです。それはどのような習い事なのでしょうか。

専門家が考える、おすすめの習い事とは

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Wanida_Sri/Shutterstock.com

お子さんが小さいうちからいろいろな習い事をさせるご家庭が増えましたね。

私は習い事全般に関して、否定派ではありません。

体を動かす習い事は、お子さんに体力をつけてくれるでしょう。実際、スイミングや体操教室など人気のようです。また、音楽などいわゆる「芸事」は、お子さんの情緒、感性を育ててくれますね。

私は中学受験の専門家として教育に携わっている身ですので、将来中学受験をすることを前提として、私の体験に基づいて幼児期の習い事について考えてみたいと思います。

幼児の時期に親子で「競争」の世界に入ってはいけない

以下のコラムでも述べているのですが、3歳〜6歳の頃の「お勉強」の習い事が中学受験の勉強に大きく役立っている、というお子さんは少数派だったように思います。

中学受験の専門家が考える「6歳までにしておくべきこと」と、幼児期の英才教育について

逆に、早期英才教育の教室に通っていた、という子が小学校の高学年になって「考えるのが苦手」となっている例を多く見てきました。「速く答えを出すのが良いこと」という考え方が染み付いてしまっていて、じっくり考えることができず、なかば投げ出すように答えを出してしまうのです。

親も子も、「お勉強」の習い事を始めると、否応なしに「まわりの子に比べてどうか」という「競争」の世界に入っていくことになります。


「うちの子はうちの子」でいにくくなっていくのです。


じっくり考えることや、「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤することを練習したい時期なのですが、まわりの子との競争のなかで「とにかく速くできることが大事」となってしまいがちなのです。

あまりお子さんが小さいときから勉強面で「他の子との競争」の世界に入ることはお奨めしていません。

勉強も武道も「型」と「作法」がある

剣道などの「武道」

私の経験上、武道系の習い事をしている子は、勉強の「型」や「作法」を身につけるのが上手です。

武道にも「型」「作法」があるからだと私は考えています。その意味で、武道系の習い事はおすすめです。

たとえば剣道では「自然体」の姿勢でないと試合に勝てません。「自然体」とは天井から糸で吊り下げられたような状態で、筋肉は緊張状態でなくリラックス。

剣道を習うと、姿勢については徹底して指導されます。勉強も似ています。背筋をぴんと伸ばしてリラックスしていないと、自分の書いている字がきちんと見えないし、頭も働きません。


勉強にも「作法」がある

もちろん鉛筆の持ち方もそう。いわば「勉強の作法」です。

鉛筆を正しく持っていないと、自分の手で自分の書いた字が隠れて見えない、ということが起こります。当然ミスも多くなるのです。

また、書いているときにノートに左手を添えるというのも「作法」です。それは、書いている紙やノートがずれるとうまく書けないし、集中できないからです。


家庭でできることもある

あらゆる武道やスポーツにある「型」は勉強にもあり、その「型」には理由があります。

ごく小さいうちは自由な姿勢で自由に線を書き、「書く楽しさ」を味わうことが大切ですが、小学校進学までにだんだんこういった「型」を教えてあげて練習しておくとよいですね。

勉強するときは勉強しやすい姿勢でする。椅子に座って背筋を伸ばし、リラックスした状態で勉強する練習を少しずつしておきましょう。その際は、椅子とテーブルの高さなども工夫してあげたいですね。

これは家庭でできることです。ぜひチャレンジしてみてください。

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チームスポーツで得られるもの、失うもの

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協調性やリーダーシップを養える

早ければ3歳くらいから、サッカーを習い始める子がいます。人気のスポーツ、習い事ですね。

お父さんもサッカー好きで、お子さん以上にヒートアップしてしまって「熱血サポーター」となってしまうこともあるようで「お父さんはあまり熱くならないでください」とアナウンスをしているチームもあるようです(笑)。

もう少し大きくなれば、少年野球を始める子も多くなります。チームスポーツは、まわりの子どもとの協調性やリーダーシップを養えるよいチャンスにもなりますね。


抜けられなくなる状況も

野球やサッカーのようなチームスポーツでご相談が多いのは、受験期になるころに抜けられなくなる、というもの。

チームなので、塾の特訓があるからといった理由で日曜の試合を抜けられないのです。チームとしては「司令塔」や「ピッチャーで4番」に抜けられるとかなわないという訳です。

しかし小学校高学年の受験生にとって日曜日は、模試や特訓など重要なイベントが開催されがちなのです。チームスポーツは、お子さんが長期にわたって「はまって」しまうスポーツだけに、難しいところですね。

個人競技なら続けやすい

ピアノやスイミングなど一人でできる習い事に関しては、本格的な受験勉強が始まってからも続けやすいようです。受験生は運動不足になりやすくストレスも溜まりやすいので、そんなときに泳いだりピアノが弾ければ、その解消にもなりますね。

プロや選手にならなくても、大人になっても趣味として続けている、という教え子はたくさんいます。中学受験ということを考えると、無理なく続けやすいのはこういった個人競技や一人でできる習い事です。

早期英才教育より、親子での学びの楽しさを

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以上、中学受験から遡ってみた幼児期からの習い事について考えてきました。
冒頭にも述べましたが、早期英才教育系の習い事が中学受験の勉強に大きく役立っている子が多かったかといえば、少数派です。

ですから結果として、勉強以外の習い事の話題が中心になってしまいましたが、幼児期の間はそれでよいと私は考えています。


それは、幼児期の学びというのはお父さん、お母さんとの日常生活のなかでできることがほとんどだからです。


お風呂でいっしょに数を数えたり、日常の会話から知っている言葉の数を増やしたり、いっしょに出かけていろんなことを経験し、不思議がったり。

子どもが3歳なら、親も親としては3歳。いっしょに工夫して学ぶことが大切です。体を動かしたり、情操を育んだりといった習い事、そしてお父さん、お母さんと楽しみながら勉強する学び。

バランスよく楽しんでください!

執筆:西村則康

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