教えて、てぃ先生×高濱先生!幼児教育は将来にどう影響する!?
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子育てに関するママパパのさまざまなお悩みに、現役保育士のてぃ先生とKIDSNA編集長・加藤が赤裸々にトークするKIDSNA TALK。今回はスペシャルゲストとして花まる学習会代表の高濱正伸先生との対談が実現!「教育」をテーマに、習い事の継続や幼児教育の是非について、てぃ先生と熱くトークします。
これは地方の講演会などに行ってもよく聞かれる質問です。
僕がつねづね言ってるのは、子どもがどうしたいかは、本当はお母さんが一番分かっているということ。
明らかにとても嫌なことがあってもう無理なのか、甘えて泣いてるだけなのか、本当は分かっているけれど、「みんなやってるのにうちの子だけ…」という考えがそれを邪魔しているんです。
子どもの目が輝いていないのであればアウトだし、毎回泣いてはいるけれど、イキイキしてるように見えるなら大丈夫。
結局、何のために習わせるか、目的をどこにおくかですよね。
たとえば、ピアノの場合、「絶対に世界的なピアニストになりたい」という目標があって、そのためにはその先生に習うしかないのであれば、どうすれば楽しく通えるかを考える必要があります。
でも、ただなんとなくピアノを習っているだけなら、別にその先生じゃなくてもいいわけで。
それはすごく大事な視点。結局、お稽古事に「これを続けたほうがいい」という正解なんてものはなくて、子どもの目の輝きと、あとは家庭ごとの信念と哲学(ビジョン)と決意だけなんですよ。
親自身の軸が明確じゃなくて、なにを目的としているか夫婦間で話し合って決まっていないから、子どもがなにかをやめることに対して、「中途半端に投げ出したことになるんじゃないか」とネガティブに考えてしまうんですよね。
なんとなくパターンならやめても問題はないですよ。
僕からも高濱先生にお聞きしたいのですが、子どもが自分で「ピアノをやりたい」と言って始めて、1カ月後くらいに「やっぱりピアノじゃなくてバレエがいい」と言われた場合、どうすればよいでしょう。
習い事を色々やってみること自体はいいのですが、子どもの一過性の流行りで「これをやりたい」と言われて次々に変えていくのは、あまりおすすめしません。
体験に行って子どもに選ばせるという方法もありますが、体験授業って大体好きになるように設計されてるので、50箇所くらい回って子どもに「どこがいい?」って聞いたら「全部好き」と返ってきたなんて話もありますね(笑)。
これは中学受験も同様で、未就学児や小学生の子どもだけで何をするのか、どこがいいのかを決めるのは難しい。だから、親の哲学とか決意が重要なんですよね。
なるほど。けっこう難しいですね。目的もそうですし、子どもがそれを楽しんでるかというところもありますし。
なんにしても目標は決めておいたほうがいいですよね。仮にやめたいと言われても、「じゃあここまでは頑張ろう」と言ったら頑張れるかもしれないし。
ただなんとなく通うより、ピアノなら「バイエルが終わるまで」とか「この曲が弾けるまで」という明確な目標があればいいのかもしれないですね。
あとは、続けることでなにかを積み上げていくと、どこかからすごく面白くなる瞬間があるんです。
ピアノならものすごく弾ける人ってかっこいいからモテ始めたりね(笑)。そういう部分は続けてみなければ分からない。
子どもはそれを分からないから目先の感情を優先しますよね。そこは大人が全体の構造を考えながら、なんのためにやるのか、イメージが明確にあるのなら伝えて、そのうえでやめるのも続けるのも間違いではないと思います。
親がやったことないことほどやらせたがるのは何なんですかね?
自分がやりたかったけれどできなかった気持ちとか、色んなものが乗っかりますよね。
これはあるあるなんだけれど、小学校受験に熱心になる親たちは、かなりの割合で勉強ではボロボロだったという方が多いんです。
都会でも田舎でも、自力でスイスイとトップ校に行けちゃったみたいな人は、どんな環境でも勉強なんて自分でやれると思っているからね。
もちろん受験が悪いわけではないけれど、自分の欠落部分を子どもには持たせたくないという親心ですよね。
次の質問は、ずばり「小学校前までの幼児教育って絶対必要ですか?」というもの。
これは高濱先生に聞きたい!
簡単にいうと、学力って二層構造なんです。基盤の力といわれる計算とか、字を速く書くことはある程度できたほうがいいし、できなきゃ話になりません。
一方で、計算や書き取りなんて所詮どんなに速く正確にやっても天井が見えていることなので、焦らなくてもいいんですよ。
そこよりも、動物や虫にすごく集中するとか、好きなものに夢中になれる時間のほうが、のちのち武器になります。それが学力のもうひとつの重要な要素である非認知能力であり、その人独自の強味です。
三角形の下が土台の力で、その上にそれぞれの力が必要になってくると。
僕は非認知能力が注目される以前から、集中力を持ってやり遂げたり、ぱっとなにかを感じたりする心のほうが人間の本質で、それは幼少期にある程度決まってしまうなと思っていました。
たとえばてぃ先生は感性がひときわ高くて強味といえますよね。こういう武器を持っていると世の中から必要とされるし、仕事もある。
なるほど。読み書き計算は土台ではあるけれど、あとから取り戻すことができるんですね。
プロとして結論を断言しますが、未就学の時点では、ひらがながひと通り読めて、自分の名前がちゃんと書ければ十分。
特別な幼児教育を受けていなくても、その後トップの大学に行っている人はたくさんいます。幼児教育ははっきり言って関係ありません。
お~!!
字が周りよりきれいに書けたり早くから計算ができる幼児期優等生は悪いことではないけれど、将来的にみたら本当に些細なことなんです。
それよりも、将来突き抜ける人って、どちらかというと字は汚いくらいの方が多い。理系でエンジニアなんて大体みんな汚いですよ(笑)。
誤解のないように補足すると、早期の基盤教育の積み重ねがあってもマイナスではありません。でも、残念ながらそういうのはすぐに追いつかれるものだということを理解しておきましょう。
それよりもその子だけの得意な部分や集中力みたいなものを伸ばしてあげると、のちのち大きな差がついてきます。
娘も保育園のとき、上の方のクラスになってもなかなか字が書けなかったんですよね。
お友だちと手紙の交換が始まって返事が書けないから、私も急に焦って「小学校までに字が書けなきゃいけないのかな」と思ったこともあったのですが、大丈夫なんですね。
どちらかというと女の子のほうが言葉って早いですからね。
マクロで見ても、お手紙ごっこやこしょこしょ話が好きなのは、圧倒的に女子が多いのは面白い。同じ歳頃の男子は戦いごっことか勝ち負けが分かるものが好きですよね。
焦ってしまうママも多いと思いますが、最低限自分の名前が書けて読めれば問題ないと高濱先生に言われたので安心しました!
名前が書けるようになったら、子どもはどんどん言葉や字を覚え出すので、大人は「きれいだね」「上手だね」とほめて自信にしてあげましょう。
てぃ先生風に言うと、「なんでこんなに上手に書けたの!」みたいに。
めっちゃ僕のこと知ってくれてますね(笑)。
情報は入ってますよ(笑)。
僕も高濱先生と同意見で、この時期は子どもが書くことや計算に興味を持っていたらやらせればいいと思う。
でも、小学生になったらみんな嫌でも勉強する時間が発生するわけで。つまり好きな遊びに集中できる時間って就学前の今しかないんですよ。
やっぱり幼児期にどれだけ自分が好きな遊びや、色んな物事に対してのめりこんだかによってその後は大きく変わってくると思います。
最後は幼児教育の逆というか、家庭の方針で保育園・幼稚園には行かせないで、小学校からというある種のオルタナティブな考え方はどうでしょうか。
保育園・幼稚園は義務ではないですから、そういうご家庭もありますよね。
自分の思い通りになんか全くいかないどころか、ひどいことをしてきたりする人もいるのが、親のいない外の世界です。
でも、その外の世界で友だちとケンカをすることで、「自分の言い方がきつかったな」と反省したり、逆に相手の説得を試みたりしながら、どう折り合いをつけていくか、社会性を学んでいきます。
既存の園に行かなくても子ども同士で群れられる場所を用意できる場合はいいですが、小学校まで親と子だけでずっと過ごすのは難しいでしょうね。
雑多な中でこそ色々と学ぶことはあるから、集団の生活のなんらかは絶対にやったほうがいいとは思います。
もちろん、孤高の発明家としてすごいことを成し遂げるみたいな例外はあるし、一概にはいえまんせんが。
まあ一般的には、将来会社に属さなくても、なにか人とチームを作って仕事をしていく人が大半ですから、そこで人とうまくやっていくためには多少の社会性は必要ですよね。
僕も、保育園、幼稚園に絶対行かなきゃいけないとは思いません。たとえば、地域の子どもたちが集まるような場所に定期的に行く機会があればいいのかなと。
ただ、いち保育士として言えるのは、ご家庭でおこなう育児と、保育園や幼稚園でおこなわれているカリキュラムというのは全くの別物だということ。
一定期間、育児のプロが子どもをみるか、一般のパパママがみるかの違いはあるかなという気がします。
なにか大きなことを成した人と話すと、わりと先生との出会いや、先生からの一言がすごく自信につながって転機になっているんです。
僕自身も「みんなが解けない問題をこれだけ解けたね」って言ってもらったときに、ロケットが発射したみたいな感じで世界がガラッと変わった。
そういう意味で言うと、プロが教える場所というのは、その子の持つ、いいところを見つけて伸ばす側面もあるんです。
たしかに、人との関わりのきっかけも増えますよね。
いい先生と出会えるかどうかは、その後の人生への影響がめちゃくちゃでかいですからね。
先生ももちろんですけど、自分ができないことを上手にできるお友だちを見て、「よっしゃ俺も!」ってなったりもしますよ。
どんなに活躍している人を見ても、それがあまりにも自分と歳の離れた人の場合、それほど影響は受けないけれど、自分と同じ4、5歳くらいだと、「俺もできるんじゃないか」「私もやってみよう」「もっと一生懸命頑張ってみよう」という気持ちになりやすいらしいです。
幼児期ってそうだよね。みんながやると自分もやる。群れでやる。必ずみんなちゃんとやる。
縄跳び、興味なくてもみんなやってたらやる(笑)。家では絶対ニンジンは食べないけれど保育園だと食べるとか、そういう効果もあるんですよね。
次回の更新は9/22(水)予定です。お楽しみに!
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まずひとつめの質問は習い事の継続判断についてです。
「習い事の先生が厳しくて、親としては先生の言っていることは正しいし、礼儀など大切なことを教えてくれていると感じている。でも、子どもは毎回大号泣でどうしたらいいのか」というご相談です。
「習い事を続けるべきか、やめるべきか」という質問は以前KIDSNAのお悩み相談でもさせていただきましたが、本当に多いお悩みですね。