子どもが育つ叱り方。WHYではなくHOW、禁止よりも願いを提案しよう

子どもが育つ叱り方。WHYではなくHOW、禁止よりも願いを提案しよう

2019.06.28

Profile

吉村直記

吉村直記

社会福祉法人みずものがたり 理事/おへそグループ統括園長

社会福祉法人みずものがたり 理事・おへそグループ統括園長。 1985年8月11日佐賀県生まれ。5歳の時交通事故で父を亡くし、母に兄弟3人の真ん中として女手一つで育てられる。ロータリー財団の親善大使として派遣されメキシコ合衆国へ一年間留学。大学在学中に幼児教育に興味を持ち、関東の保育コンサルティング会社に入社。1年半で50件以上の保育園の立ち上げや運営に関わりながら乳幼児教育を学ぶ。 25歳でおへそ保育園園長に就任。現在、0歳~12歳までの子どもたち、障害を持つ子どもたちが共存する“おへそグループ” を統括。執筆・講演活動、また、一男一女の父として子育てにも奮闘中。

おへそグループ統括園長の吉村直記さんに、子どもが育つ叱り方について教えていただきました。

子どもの背景を見る習慣

後ろ姿の園児たち

保育園を運営していると教室を出てしまって、なんとなくみんなの中に入れない子。注意散漫で、話に集中できない子。わがままを言ってしまう子。

年度初めはとくに、入園、進級、進学、卒業など環境の変化で、心の不安を見せる子たちが増えていきます。園や学校、家庭の中でも子どもの行動が変化し、いつもと違う一面を見せる場合もあるでしょう。

子どもの表面だけを見ていると、「みんなと一緒にいましょうね」「しっかり話を聞きましょうね」「わがままはいいませんよ」と注意をしがちになります。

しかし、その叱り方では、その人の前では心を隠して「きちんとする」を演じるだけか、さらに同様の行動を助長させるだけかもしれません。

子どもの行動に対して、叱りたいと思う気持ちを少し堪えて、子どもの行動の背景について考えてみましょう。

のぞく男の子

「子どもがみんなと一緒にいれない、若しくは、いたくない心の背景はなんだろう」

「話を聞いたり、活動に参加できない心の背景はなんだろう」

「わがままを言ったり、反抗的になってしまう心の背景はなんだろう」

と、子どもの表面的に出てきた行動だけではなく、その子の背景を一瞬でも想像して、見てあげることです。

注意や指摘の前に、その行動の理由についてこちらが耳を傾けてあげる姿勢が大切だと思います。

背景を聞いてあげると、「お母さんがいい」と言い始めたり、言葉にならないで涙を流し始めたり、学校や園の先生と信頼関係が築けていないことで反抗的になっていたり、頑張りからくる「甘え」であったりします。

しかし、大人からすれば、その行動はやっぱり困る行動になってしまう。その困り感を解消しようとして「叱る」「怒る」というツールを発動して、子どもを思い通りにしようとしてしまいます。

恐怖で子どもの問題行動を制止することで、表面的な行動は見えなくなっても、その子の心は満たされていないので、また、同じ行動を繰り返すようになります。ですから、その行動をして欲しくないと願えば、願うほど、遠回りのようなのだけど、その子の心に寄り添い、心の背景を見ることが大切です。

小学2年生の息子が、学童から家に帰ってくると、とにかく苛立っている時期がありました。自分の思い通りにならないと物に当たったり、母親に当たったりすることもありました。その行動自体みていると、とにかくわがまま放題に見えます。しかし、本人に理由を聞いてみると、「学校生活で気になることがある」「たまには学童ではなくて、早く家に帰りたい」など本人なりの理由があるようでした。

もちろん、だからと言って物に当たったり、人に当たったりして良いわけではありませんので、それについては丁寧に伝えて本人も納得したようでした。

それからしばらく経ち、母親に平日の休みが取れた日に、学童に行かずに親子水入らずの時間を過ごしました。その日の息子と言えば、いつものイライラは一切見せず「お風呂掃除したい」「夜ご飯一緒に作りたい」「お皿洗いする」と進んでお手伝いも鼻歌まじりで取り組んでいました。

子どもたちは心が満足し、安心することで、そのような行動は減っていきます。

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子どもには『WHY?』より『HOW?』

画像

「なんで、そんなことするの?!」というWHYの問いかけは、「あなたがなぜ、そんなことするのか理解できません」という拒絶に近いようなニュアンスが含まれているように思います。

幼児期は特に自分でも理由が分からず行動してしまうことがほとんどです。つい、大きな声を出してしまったりする子もいます。

「なんで、そんな大きな声を出しているの?!」と言っても、子どもからすれば「大きな声を出したかったから」に過ぎません。

そこでWHYを問うても、次への行動に繋がりにくい場合があります。もし、小さい声で言って欲しければ、「もう少し小さい声でお話しましょう」と伝えた方が子どもにとっては分かりやすい指示になります。

また、子どもに考えて行動して欲しいときには、WHYよりもHOWの方が良い場合があります。

見つめる園児の男の子

例えば、ご飯をボロボロとこぼして食べる子に対する注意を考えてみましょう。

WHYで問うと

「なんで、ご飯をボロボロこぼすの?!」

→「だって、こぼれるんだもん」「だって、ぼく3歳だもん」(笑)

という風になってしまいます。

HOWで問うと

「どうすれば、ご飯をこぼさずに食べれるかな~?」

→「う~ん、机にもう少し近づけばいいのかな~」

と子ども自ら答えを導き出す可能性が高くなります。

なぜ?(WHY?)を問うて、できなかった理由を聞き出すより、どうすればできるか?(HOW?)と未来を考えることができる人になって欲しいと思います。

否定や禁止よりも『親の願い』を提案する

お水を汲む園児たち

子育てにおいて、子どもに「教えている」と思っていても、「否定」や「禁止」で終わっていることが往々にしてあります。

ケンカしてはダメ、片付けないとダメ、はやくしないとダメ、ちゃんとしないとダメ、一日中、ダメダメで、子どもが成長するとも思えません。

大人に置き換えても、生活の全てを監視され、「その料理はここがダメ」「その言い方がダメ」「そのやり方がダメ」と一つ一つ否定され、禁止されれば身がもたないでしょう。

幼少期の子どもたちは、あからさまには反論することができないので、親もその態度に甘えてしまいます。

ある程度子どもが大きくなって小学生くらいになるとそううまくはいきません。否定や禁止をしても「いや、先生もこうでしょ」「いや、お母さんだってそうでしょ」という気持ちを抱かせてしまいます。

子どもたちには、「説得」よりも「納得感」が得られるようにアプローチすることが大切です。

否定や禁止する背景には、子どもに「こんな風になってほしい」「こんなことができてくれれば良いな」というこちらの願いが存在しています。

例えば、「ケンカをしてはダメ」というのもその言葉の後に、「ケンカをしないで仲良くするコミュニケーションを学んでほしい」という願いがあります。もちろん、一度で伝わることはなかったとしても、こちらの願いを提案をすることによって、子どもを否定せずにこちらのメッセージを伝えることができます。

こちらのちょっとした工夫で、納得感があり、気持ち良く行動を見直し、子どもの学びを大きくすることができます。

叱り方の工夫で、子どもも親もハッピーな子育てを目指してみませんか?

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社会福祉法人みずものがたり 理事・おへそグループ統括園長。 1985年8月11日佐賀県生まれ。5歳の時交通事故で父を亡くし、母に兄弟3人の真ん中として女手一つで育てられる。ロータリー財団の親善大使として派遣されメキシコ合衆国へ一年間留学。大学在学中に幼児教育に興味を持ち、関東の保育コンサルティング会社に入社。1年半で50件以上の保育園の立ち上げや運営に関わりながら乳幼児教育を学ぶ。 25歳でおへそ保育園園長に就任。現在、0歳~12歳までの子どもたち、障害を持つ子どもたちが共存する“おへそグループ” を統括。執筆・講演活動、また、一男一女の父として子育てにも奮闘中。

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