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【産婦人科医監修】妊活中の飲酒はいつまで?飲酒が与える影響とは
適切な飲酒量について
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田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
妊活中はいつまで飲酒をしてもよいのか気になる夫婦もいるでしょう。飲酒がどのような影響を与えるのか知りたい場合もあるかもしれません。今回は、妊活中の飲酒はいつまでなら大丈夫なのかや、妊活中の飲酒が女性と胎児、男性に与える影響、妊活中の適切な飲酒量について解説します。
妊活中の飲酒はいつまで?
妊娠が発覚したらアルコールを控えるべきですが、妊活中はいつまで飲酒を続けてよいのでしょうか。飲酒が妊活にどのような影響を及ぼすのか気になる夫婦もいるでしょう。
妊活中の飲酒は、母体や胎児に大きな影響はなく、飲酒をやめなければいけないという決まりはありません。しかし、アルコールの摂取は妊活に影響を及ぼすため、妊活を始めたら夫婦共に飲酒を控えることをおすすめします。
今回は、妊活中の飲酒が夫婦と胎児に与える影響と、適正な飲酒量について解説します。
妊活中の飲酒が女性と胎児に与える影響
飲酒は、女性の身体にどのような影響を与えるのでしょうか。妊活中や妊娠したことに気づかず飲酒をしてしまったときの胎児への影響についても解説します。
生理周期の乱れ
アルコールを過剰摂取すると、肝機能の低下により生理周期が乱れる場合があるため、飲酒する際は、量に注意が必要です。
受精卵のベッドを作る働きをするエストロゲンは、卵巣からの分泌と肝臓での分解を繰り返しています。過度な飲酒をすると、肝機能が低下し、エストロゲンの分解能力も低下するため、生理周期の乱れを引き起こします。
適切な飲酒量であれば大きな影響はありませんが、飲酒は妊娠しにくい状態を高める可能性があるため、妊娠中は注意しましょう。
排卵日が特定しにくくなる
妊娠しやすい時期を知るために、基礎体温を測り排卵日を確認する女性は多いでしょう。妊娠の確率を高めるには、子宮の中で精子が排卵を待っている状態がよいとされているため、生理周期を知ることは大切です。
飲酒をすると基礎体温が上がり、排卵日が特定しにくくなるため、妊活が難しくなる場合があります。
生理周期をしっかり把握するためにも、排卵日前後の飲酒は控えるとよいでしょう。
酸化ストレス
酸化ストレスとは、アルコールを分解する働きをもつ活性酸素が大量発生し、活性酸素を除去する抗酸化作用とのバランスが崩れた状態を言います。
活性酸素はアルコールの分解だけでなく、細菌やウイルスと闘う働きもするため、身体にとって大事なものです。しかし、大量発生すると、健康な細胞を攻撃したり、卵子の老化や酸化を促します。過度の飲酒は、酸化ストレスの働きを活発にすることがあります。
妊娠を希望する際は、卵子の質を保てるように、飲酒を控えて生活習慣を改善させることが大切です。
胎児性アルコール症候群のリスクを高める
妊娠超初期は、妊娠に気づかず飲酒をしてしまう人もいるかもしれません。妊娠に気づかず飲酒をすると、お腹のなかの赤ちゃんが胎児性アルコール症候群になる危険性が高くなります。
胎児性アルコール症候群は、飲酒によって胎児の低体重や脳障害、奇形などを引き起こす先天性疾患のひとつです。アルコールを大量に摂取しなくても、胎児アルコール症候群の報告例があるため、妊活中の飲酒は十分注意しましょう。
妊活中の飲酒が男性に与える影響
妊活中の飲酒は、男性に下記のような影響を及ぼします。
- 精子を作る力が落ちる
- 男性ホルモンの分泌が低下し、性欲が減退する
- 酸化ストレスを引き起こす
精巣を温めると精子を作る力が落ちるため、アルコールの摂取で体温が上昇すると、妊活が順調に進まない可能性が高まります。また、アルコールによって男性の性欲が減退すると、性行為の回数が減り、結果的に妊娠の確率が低下することが考えられるでしょう。
男性も女性と同じように、アルコールの過剰摂取によって酸化ストレスを引き起こします。男性の場合は、精子の運動率が低下したり、DNAの破損によりお腹のなかの赤ちゃんの細胞分裂が正常に進まないなどの影響があるため、飲酒は控えるべきでしょう。
妊活中の適切な飲酒量
過度な飲酒は、妊活に影響を及ぼすため控えるべきですが、適切な量を守って飲酒する分には問題ありません。厚生労働省の資料を元に、適度な飲酒量をご紹介します。
- ビール:1缶(500ml)
- 清酒:1合(80ml)
- ウイスキー・ブランデー:ダブル1杯(60ml)
- 焼酎:1合(180ml)
- ワイン:1杯(120ml)
お酒に酔いやすい人や顔が赤くなりやすい人は、上記の目安よりも量を減らすとよいでしょう。ストレスを溜めないよう、適度な飲酒をして妊活ができるとよいですね。
適度な飲酒量を守って妊活しよう
妊活中の飲酒が女性に与える影響には、肝機能の低下による生理周期の乱れや酸化ストレスなどがあります。妊娠に気づかずお酒を飲んでしまった場合は、胎児性アルコール症候群のリスクを高めるため、妊活中に飲酒する際は十分な注意が必要です。
男性の場合は、精子を作る力が低下したり、性欲が減退することが分かっています。女性と同様に、酸化ストレスによる精子の運動率低下やDNA破損などの影響を受けるため、妊活中の夫婦が飲酒をするときには意識することが大切でしょう。
妊活中は飲酒を控えることが望ましいですが、ストレスを溜めないためにも、飲酒量を守って妊活ができるとよいですね。
監修:杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
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杉山太朗
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。