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【産婦人科医監修】妊娠中に葉酸の摂取はいつからいつまでするべき
摂取の目安や必要性について
Profile
田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
田園調布オリーブレディースクリニック院長/医学博士/東海大学医学部客員講師/日本産科婦人科学会専門医、指導医/母体保護法指定医/女性ヘルスケア専門医/日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡・子宮鏡)/日本内視鏡外科学会技術認定医/がん治療認定医
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。
妊娠したいと思っている女性や妊娠中の人は葉酸を積極的に摂る必要があるといわれていますが、葉酸にはどのような役割があるのでしょうか。葉酸の種類や作用についてご紹介します。また葉酸はいつからいつまで摂取したらよいのか、摂取量の目安を解説します。
葉酸とは
葉酸は、ビタミンB群の一種です。
ほうれん草やアボカド、ブロッコリー、納豆、いちご、バナナなどに特に多く含まれています。
葉酸は妊娠を望んでいる人や妊婦さんに必要といわれていますが、葉酸にはどのような作用があり、なぜ必要なのでしょうか。
葉酸の作用
厚生労働省も妊娠中の葉酸摂取は以下のように言っています。
“
近年、先天性異常の中で、二分脊椎などの神経閉鎖障害について、欧米を中心とした諸外国により免疫学研究が行われ、妊娠可能な年齢の女性へのビタミンBの一種である葉酸の摂取がその発症のリスクを低減することが勧告されている。また、欧米諸国においては妊娠可能な年齢の女性に対して、神経管閉鎖障害の発症リスクのため、葉酸摂取量を増加させるべきであると勧告している
出典: 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
神経管閉鎖障がいは、妊娠4~5週頃に赤ちゃんの脳や脊髄などの神経管の下部に閉鎖障がいが起こった場合、「二分脊椎」が起きて膀胱や直腸機能に障がいが起こったり、下肢の運動障がいが起こる可能性があります。
ほかにも脳の血管の一部が膨らんで弱くなる「脳瘤」や神経の上部で閉鎖障がいが起こると、脳が形成不全となる「無脳症」になり、死産や流産の可能性につながることがあります。
胎児の神経管閉鎖障がいをリスクを減らすためにも、葉酸を意識して摂ることが大切です。
葉酸の種類
葉酸にも2種類あります。葉酸の種類と特徴について詳しくみていきましょう。
ポリグルタミン酸(天然葉酸)
ポリグルタミン酸(天然葉酸)とは、食べ物に含まれている葉酸のことです。食事からとれるので食事性葉酸といわれることもあります。
ポリグルタミン酸(天然葉酸)は、水に溶けやすく熱に弱いことが特徴です。熱によって失われやすいため、葉酸の吸収率は50%といわれています。
モノグルタミン酸(合成葉酸)
モノグルタミン酸(合成葉酸)は、葉酸サプリや加工食品に含まれている葉酸のことです。
食事性葉酸より体内での吸収率が高いことが特徴です。
食事だけでは補えない葉酸は、葉酸サプリで摂取することがおすすめです。
葉酸はいつからいつまで飲むとよいのか
厚生労働省によると、神経管閉鎖障がいを防ぐためには、妊娠の1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までに十分な葉酸を摂取する必要があるといわれています。
葉酸は熱に弱く、調理中に減りやすく、余分な葉酸は汗や尿ですぐに排出されてしまうため、妊娠を望んでいる人や妊娠しているかもしれない人は妊娠前から意識をして葉酸を摂取することが大事です。
妊娠前から妊娠3カ月に特に積極的に摂ることが重要とされている葉酸ですが、赤ちゃんの器官形成や成長を助ける役割もあるため、この期間に限らず妊娠中は続けて摂ることが大切です。
葉酸には、細胞の成長をサポートし母乳の質をアップさせたり、血行を促進して母乳の出をよくする役割もあります。
細胞分裂を支える働きもあるため、産後の傷ついた子宮を回復させてくれる役割も期待できます。
妊娠前や妊娠中だけでなく、産後も母乳の出や質を高め、子宮の回復のために葉酸を摂るとよいでしょう。
葉酸の摂取量について
葉酸の摂取量の目安は妊活中と妊娠中、授乳中で変わってきます。
妊娠を望んでいる場合
18~49歳の女性は、1日あたり240μgの葉酸を摂取することが推奨されています。
妊娠を望んでいる人や妊娠しているかもしれない女性は、神経管閉鎖障がいのリスクを減らすために1日の240μgに葉酸サプリからプラスで400μgの摂取量が望まれています。
食事で摂ることが難しい場合は食事と葉酸サプリを併せて摂取するとよいでしょう。
妊娠中(妊娠4ヶ月以降)
葉酸が特に必要といわれている妊娠3カ月を過ぎたら、一般の女性に推奨されている240μgの葉酸に食事で240μgの葉酸をプラスして摂ることが勧められています。不足分を葉酸サプリで補ってもよいでしょう。
授乳中
授乳中の女性は、一般女性に推奨されている240μgの葉酸に食事で100μgの葉酸をプラスして摂ることが推奨されています。
産後は子育てが忙しく、目安の葉酸量が食事で摂れないときには不足している分を葉酸サプリで摂取するようにすることをおすすめします。
葉酸は妊娠前から妊娠3カ月のときは特にたくさん摂ったほうが方がよいと思う人もいるかもしれませんが、葉酸の1日当たりの上限摂取量は1,000μgとされています。
過剰摂取は、赤ちゃんの喘息を引き起こしたり、妊婦さんのむくみや食欲不振、亜鉛の吸収を妨げる可能性があるので時期に合った目安の摂取量を摂るようにし、葉酸のとりすぎには注意しましょう。
葉酸は摂取量を守って積極的に摂ろう
葉酸には、神経管閉鎖障がいのリスクを減らすことができると厚生労働省でも発表していて、妊娠を考えている人や妊娠中の妊婦さんには必要不可欠な栄養素です。
いつからいつまで摂取するとよいのかについては、妊娠前から妊娠中はもちろん、産後も母乳の質や出をよくするために継続して摂取することが望ましいとされています。
しかし摂取量が多ければよいわけでなく、妊娠前、妊娠中、産後と目安とされている量が変わってきます。特に妊娠前から妊娠3カ月の間は大量の摂取量が必要となるため、食事と葉酸サプリを併せて目安の摂取量を摂ることがおすすめです。
摂取量を守って、積極的に葉酸をとりましょう。
監修:杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)
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杉山太朗
信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。