【産婦人科医監修】妊娠糖尿病の症状や検査方法、検査基準の数値について

【産婦人科医監修】妊娠糖尿病の症状や検査方法、検査基準の数値について

原因や胎児、母体への影響は?

2019.02.13

妊娠すると、妊婦さんは妊娠糖尿病に気をつけるように言われるでしょう。妊娠糖尿病の原因と具体的な症状、検査基準の数値について解説します。また、妊娠糖尿病が赤ちゃんとママにもたらす影響についても説明します。

妊娠糖尿病とは

妊娠糖尿病とは、すい臓から分泌されるインスリンが不足して血糖値が高くなって起こる病気です。妊娠前は正常であった血糖値が妊娠してから急に上昇して妊娠糖尿病になる場合があります。

妊娠前から糖尿病と診断されている場合や妊娠中に明らかに糖尿病と診断された場合は、妊娠糖尿病には含まれず、「糖尿病合併妊娠」と呼ばれます。

妊娠糖尿病の原因

妊娠するとホルモンバランスが変化し、ヒト胎盤ラクトゲンが胎盤から分泌されると血糖値が上昇して血糖値のバランスが崩れてしまいます。妊娠糖尿病は、血糖値が急激に上昇することが1つの原因です。

また食事をして血糖値が上がると、通常はすい臓からインスリンが分泌されて糖分を処理して血糖値を下げています。しかし、妊娠中はインスリンを抑えるホルモンが分泌されて糖質が処理されなくなるため血糖値が常に高い状態になります。

妊娠糖尿病の症状

妊娠糖尿病になると以下のような症状が見られます。


  • 頻尿
  • のどが渇く
  • 疲労感
  • 体重の減少
お水を飲む妊婦さん
iStock.com/gpointstudio

血糖値が上がると血液中の水分が不足して、のどが渇きやすくなります。細胞に十分な水分が行き渡らない状態だと栄養不足になり、疲労感を感じやすくなります。

頻尿やのどが渇いたり、疲労感を感じることは妊婦さんによく見られる症状なので、妊娠糖尿病と自覚症状のない人がとほんどです。

症状だけでは見分けることが難しく、妊娠糖尿病の検査の数値の上昇から妊娠糖尿病になっていることに気づく人が多いようです。

症状が悪化すると、母体にも胎児にも影響が出てきます。

胎児への影響

  • 巨大児
  • 低血糖
  • 心臓の肥大
  • 多血症
  • 形態異常

妊娠中にママが妊娠糖尿病にかかると、へその緒を通して必要以上の糖分が赤ちゃんにも送られ、巨大児になる可能性があります。

また、血糖値が上がると胎盤の機能が低下して赤ちゃんに十分な栄養が送られず、子どもの発育に遅れが出たり、将来的に肥満や糖尿病にかかる可能性が高くなるといわれています。

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母体への影響

  • 流産・早産
  • 感染症の併発
  • 妊娠高血圧症候群
  • 帝王切開の確率が高くなる
  • 羊水過多

妊娠糖尿病にかかると、尿のなかに細菌が繁殖しやすくなり、尿路感染症にかかる確率が高くなります。

また、お腹のなかの赤ちゃんが巨大児になる場合があり、巨大児になると出産のときに産道が傷ついたり、お腹のなかで状態が悪くなるため帝王切開での出産になる可能性が高くなります。胎児が高血糖で頻尿になると羊水の量も増えます。

検査方法

妊娠糖尿病のスクリーニング検査を受ける妊婦さん
iStock.com/Jovanmandic

妊娠糖尿病は、妊娠初期と妊娠中期の検診で行われるスクリーニング検査で診断します。

スクリーニング検査とは、普通に食事をしたときの血糖値(随時血糖値)を検査します。血糖値が高ければ糖分の入った検査用の液体を飲んで血糖値を検査する50gのブドウ糖負荷試験でさらに検査をします。

50gのブドウ糖負荷試験で妊娠糖尿病の可能性があると診断された場合は75gのブドウ糖負荷試験を行います。

75gのブドウ糖負荷試験をして以下の検査基準に1つでも当てはまると妊娠糖尿病と診断されます。


  • 空腹時の血糖値≧92mg/dL
  • 1時間値≧180mg/dL
  • 2時間値≧153mg/dL

妊娠糖尿病になりやすい人

妊娠糖尿病になりやすい人には以下のような傾向が見られます。


  • 肥満
  • 35歳以上の高齢妊娠
  • 巨大児の分娩既住
  • 羊水過多
  • 家族に糖尿病の人がいる
  • 妊娠高血圧症候群

妊娠前から肥満気味の人や妊娠してから急激に太った人、400gを超える巨大児を過去に産んだことがある人は妊娠糖尿病にかかりやすいです。

このほかにも原因が分からず流産したことのある人や、過去に妊娠高血圧症候群にかかったことがある人も妊娠糖尿病にかかりやすいといわれています。

妊娠糖尿病の対処法

妊娠糖尿病と診断されたらなるべく早めに正しい対処をすることが大切です。


食事療法

アスパラとマッシュルームのソテー
iStock.com/Jultud

妊娠糖尿病と診断されたら食事に気をつける必要があります。

甘いものや糖質の多い物を控え、ご飯や麵、パンなどの炭水化物を減らして、魚や卵、大豆などタンパク質を積極的にとるようにしましょう。

食物繊維の多いさつまいも、アスパラガス、ゴボウ、白菜、キャベツなどの野菜やキノコ類もおすすめです。


インスリン治療

食事で血糖値が改善できないときには、インスリン治療を行います。

食事の前や就寝前など決められたときに定期的にインスリン注射をして血糖コントロールを行います。インスリン注射についてはインスリンの量や注射の方法など医師からしっかり指導を受けましょう。

妊娠糖尿病は早めの検査と治療が大切

検診中の妊婦さん
iStock.com/Halfpoint

妊娠してホルモンバランスが崩れて血糖コントロールができなくなると起こります。

症状は、のどが渇いたり頻尿や疲れやすくなるなどが見られますが、これらの症状は妊娠時によく見られるため、妊娠糖尿病と気づかない場合が多く、妊娠糖尿病の検査で気づくことが多いです。

妊娠糖尿病の検査は、血液検査とブドウ糖負荷試験で行います。妊娠糖尿病と診断されると、感染症にかかる可能性や早産や流産、難産につながるリスクが高くなります。また、お腹のなかの赤ちゃんも低血糖や形態異常が現れたり、将来的に肥満や糖尿病になることもあるので、早めの検査と対処が重要です。


監修:杉山太朗(田園調布オリーブレディースクリニック)

Profile

杉山太朗

杉山太朗

信州大学医学部卒業。東海大学医学部客員講師、日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。長年、大学病院で婦人科がん治療、腹腔鏡下手術を中心に産婦人科全般を診療。2017年田園調布オリーブレディースクリニック院長に就任。患者さんのニーズに答えられる婦人科医療を目指し、最新の知識や技術を取り入れています。気軽に相談できる優しい診療を心がけています。

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