生産性の高い組織ほど、これで盛り上がっていた…社員のパフォーマンスを向上させる「業務とは関係ない行為」
会社でも学習塾でも大事なのは「人間関係」
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生産性の高い組織とそうでない組織は何が違うのか。ハピネスプラネット代表の矢野和男さんは「われわれの調査では、能力の向上や成長には組織内のコミュニケーションが大変重要であることがわかった。子供だけでなく大人でも同様の結果だった」という――。 ※本稿は、矢野和男『トリニティ組織』(草思社)の一部を再編集したものです。
仕事をうまく遂行できる人にあった共通の特徴
私たちの研究チームは、マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で、ある企業の部署がITシステムに関する顧客からの問い合わせに対し、顧客への見積もり提案を作成する業務を調べました。
社員にはウエアラブルセンサを装着してもらい、そのコミュニケーションを通して、どれだけ問題解決できたかを計測する実験です。
ウエアラブルセンサは、装着した人同士が2~3メートルの範囲で面会すると、互いに識別番号(ID)を赤外線の通信により交換するので、いつ誰と面会したかが記録できます。
これにより、実験を行っていた期間、誰と誰がよく会話をする関係にあったか、つまり「知り合い」の関係にあったかが、正確に把握できます。
顧客からの引き合いの中には、機械的に見積もりできる単純なものもあれば、簡単には回答できない複雑な要求もありました。
このうち、後者の複雑な要求の場合には、担当者個人の知識・能力だけでは対応しきれないことが多く、まわりの人たちが持っている情報や能力によって助けてもらう必要があります。調べてみると、このような仕事をうまく遂行できる人には、共通の特徴がありました。
自分の知り合いの知り合いまで(2ステップ)含めて何人の人にたどり着けるかを示す指標「到達度」が高かったのです(図1)。
「三角形」が多いチームは問題解決能力が高い
到達度とは、言い換えれば「知り合いとその知り合いまでの人数を足した数」で、それが多ければ多いほど問題解決能力が高いという結果になりました。これは、到達度が高い人は、顧客からの想定外の問い合わせの答えを知らなくても、その答えやヒントを知っている人に出会える確率が高かったと解釈できます。
ここで興味深いのは、組織内の人々の到達度の平均値が高い状態をつくるには、組織に人間関係の三角形(トリニティ)を増やす必要があるということです。
ここでいう三角形あるいはトリニティとは、自分の知り合い2人同士も知り合いであるような3者関係のことです。逆に、自分の知り合い2人の間に交流がなければ、その3者関係はV字型になります。
三角形、すなわちトリニティが豊かになれば、知り合いのその先に知り合いが増え、問題解決能力が高くなるということです。
また、この法則を上手に活用するなら、リーダーが問題解決能力の高いチームをつくりたい場合、リーダー自身がつながる相手は必ずしも多くなくてよいこともわかります。リーダーのコミュニケーション相手をむやみに増やすのは、時間的な制約を考慮すると限界があるでしょう。このときにむしろ重要なのは、組織のメンバー同士のトリニティです。