「真夏でも靴下を」「母乳をよく分泌する食べ物は…」保健師のおかしな助言を撃退する質問フレーズ
新生児訪問がかえって保護者のストレスに
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新生児訪問で、思いがけないことを言われて思い悩む新米親は少なくない。小児科医の森戸やすみさんは「新生児訪問を行う保健師・助産師の多くはきちんとしているが、医学的根拠のない助言をしてくる場合は注意が必要だ」という――。
「新生児訪問」のための講座
先日、東京都のある自治体から「新生児訪問」をする保健師・助産師向け講座を依頼され、お話ししてきました。新生児訪問とは、赤ちゃんが生後1〜4カ月までのあいだに、市区町村の保健師や委託された助産師が母子の自宅を訪ねるというもの。正式には「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」といい、その目的は次の通りです。
「生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し、様々な不安や悩みを聞き、子育て支援に関する情報提供等を行うとともに、親子の心身の状況や養育環境等の把握や助言を行い、支援が必要な家庭に対しては適切なサービス提供につなげる。このようにして、乳児のいる家庭と地域社会をつなぐ最初の機会とすることにより、乳児家庭の孤立化を防ぎ、乳児の健全な育成環境の確保を図るものである。」 |
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ほとんどの家庭は1回のみの訪問ですが、中には再訪問や見守りが必要なケース、支援や医療に繋げることが求められるケースもあります。新生児訪問は、産後すぐの母子の心身の健康を守るために非常に大切なものなのです。
ところが、私は以前から診察室で、保護者になったばかりのお母さんやお父さんたちから「新生児訪問でこんなことを言われたのですが、本当でしょうか」「新生児訪問で厳しく叱責されて悲しくなりました」などと相談されることがよくあります。
正解がないからこそ難しい育児
そもそも「子どもをどう育てたらいいか」というのは、時代や文化に大きく左右されるだけでなく、家庭ごとの価値観にもよっても違うもの。当然、保護者には子どもの健康を保ち、発達を促し、安全に育てることが求められています。が、昔から「育児に正解はない」といわれるように、一概にどうするのが正しいと断言することはできません。みんなが同じ育児法をすればいいというものでもないでしょう。
だからこそ多くの保護者はどうするべきか迷って、自分の親にどのようにしていたかを聞いたりします。でも、現在は50年前に比ベると、祖父母になる年齢が5歳以上も上がっていて、自身の子育てのことを忘れている人も少なくありません。
また、昔ならきょうだいが多かったり、近所に子どもがたくさんいたりして子守を頼まれることがあり、赤ちゃんに触れる機会がありました。ところが、現在は少子化の時代です。先日、2024年の出生数が70万人を下まわったという話がニュースになったほど。合成特殊出生率は、1947年に統計を取り始めてから最も低い1.15でした。特に東京は低くて0.96です。こんな状況ですから、今は初めて抱っこする赤ちゃんが自分の子ということもよくあり、新米保護者が不安や疑問を抱くのは当然といえます。