「賃上げ5%」はまやかし…大手メディアが報じない「実際は2%しか上がらず、生活が楽にならない」カラクリ

「賃上げ5%」はまやかし…大手メディアが報じない「実際は2%しか上がらず、生活が楽にならない」カラクリ

生成系AIで効率よく仕事できるのはいいことだが…

今春闘で大幅な賃上げがあったにもかかわらず、暮らし向きが一向によくならないのはなぜなのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「物価高の影響がもっとも大きいが、株主還元が第一の会社も社員に大盤振る舞いはできない。また、さまざまな働き方改革により実質的な収入も減っている」という――。

「賃上げ5%」でも「実際は2%」のなぜ

労働組合の中央組織である連合の調査では2025年度の賃上げ率は5162組合の加重平均で1万6356円、率にして5.25%と1991年(5.66%)以来の5%超えということです。300人未満の中小組合(3677組合)でも1万2361円、4.65%の賃上げです。

これは「平均賃金方式」と言われる計算方式によるもので、組合員の平均賃金をいくら引き上げるか、ということで計算されています。

こうした報道を見ていると、いかにも賃金が上昇しているように思えますが、違います。厚生労働省が発表している「現金給与総額」の最近の動きを見ると、とても4%や5%も賃金が上昇しているようには思えません。

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筆者作成

図表1にあるように、今年に入ってからもその数字は2%前後の伸びで、5月にいたってはたった1.4%です。賃上げで騒がれている額とはかなり大きな差があるのです。こうした事実は大手メディアではほとんど報じられません。

連合と厚労省では調査対象が少し違うのですが、よりリアルな数字は厚労省のものです。なぜなら「現金給与総額」は、基本給などの所定内賃金、残業代などの所定外賃金、そして、賞与などが含まれた一人あたりのトータルの賃金を指しているから。

図表1の所定外労働時間を見てほしいのですが、ずっと前年比マイナスの状態が続いています。企業は、確かに賃金(基本給)を上げていますが、給与全体の伸びを、残業代を低くすることで抑えているのです。つまり、一人あたりの給与総額は思ったほど伸びていない。

残業が減っている背景には、ひとつはトラック運転手や建設現場、医師などの「2024年問題」があります。働き方改革関連法での残業規制が行われたのです。

さらには、生成系AIの普及の影響があります。多くの企業は今、AI活用を促進して、社員一人あたりの生産性を向上させています。インプット時間を抑制して、全体の賃金を抑えながら、アウトプット(一人あたりの生み出す付加価値額)を維持・向上させようとしています。社員からすれば、効率よく働けて、無駄な労働時間が減るのは歓迎すべきことですが、給料に関係するとなると、いたしかゆしというところでしょうか。

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2025.08.23

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