「自民党が崩れ野党のポピュリズム政権が誕生」そんな未来はありうるのか…経済評論家が考える"3つの条件"
まるで全政党が"風見鶏"になってしまったかのような選挙戦
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日本の政治はどこへ向かっているのか。5年、10年のスパンでの長期予測を得意とする経済評論家の鈴木貴博さんは「2020年に出版した『日本経済予言の書』で、2020年代の日本の政治について予測していた。その内容が現実になりつつある」という――。
2020年に予測していた「自民党の弱体化」
今回の参議院議員選挙後には政権交代はまだ起きないでしょう。しかし与党の議席減でその手前の状況に追い込まれるのは確実な情勢になってきました。
私は未来予測の専門家です。特に5年、10年のスパンで起きる長期予測が得意です。2020年に出版した『日本経済予言の書』(PHPビジネス新書)に当時書いた内容のかなりの部分が、5年後の2025年段階で現実化しています。その中で政治についてどう書いていたのか、紹介します。
「2020年時点では自民党政権が倒れることをイメージするのは難しいでしょう。安倍一強と呼ばれるほどの強い政権が、実績を伴って存在しています」
という記述から予測が始まっています。
当時は、コロナ禍が始まり、当時の安倍首相―菅官房長官による強い政治的リーダーシップの下で、東京五輪延期、ワクチン接種の推進、GoToトラベルなどの対策が次々と打ち出された時期でした。5年前は世の中の空気として、自民党が凋落することを想像するのは難しかった時代なのです。
その上で、
「未来予測の立場で考えると3つの要素が同時に起きれば、自民党が崩れ野党のポピュリズム政権が誕生するような状況が2020年代のどこかで起きる」
とはっきりと書かれています。
その3つの条件が現実になってきたのです。その予言の内容に入る前に、まずは私の予測の前提からお話しさせてください。
サプライズは言い訳にならない
私が未来予測の技術を叩きこまれたのは最初に勤務したコンサルティングファーム時代でした。そこで学んだ一番大切な教えは「サプライズは言い訳にならない」ということです。
「どんな思いもよらない前提条件の変化が起きても、5年前にさかのぼってみると必ずその変化の兆しを発見できる」と教わりました。だから「誰にも予測できない変化が起きたのだ」という言い訳は通用しないというわけです。
その前提で、今から5年前の2020年段階で、政治の世界でこれから10年以内に起きるであろうサプライズの「兆しの芽」が芽生え始めたと『日本経済予言の書』の中で指摘しています。
象徴的な出来事は2019年10月の埼玉での参議院議員補欠選挙でした。当選したのは前埼玉県知事で数字の上では圧勝でした。なにしろ他に立候補したのはN党の立花孝志候補たったひとりだったからです。
ところがこの選挙では奇妙なことが起きました。立花候補が東秩父村を除くすべての自治体で10%を超える票を獲得したのです。本来勝てるはずがないとされた選挙に出馬した立花候補の得票率は有効投票全体の約14%を占めたのです。