そりゃ米騒動が起こるわ…大河「べらぼう」で描かれる「流通不足→米価つり上げ→対策失敗」240年前の悪循環

そりゃ米騒動が起こるわ…大河「べらぼう」で描かれる「流通不足→米価つり上げ→対策失敗」240年前の悪循環

「田沼意次が米価の高騰を解決した」はウソ

昔から米の値段が急騰すると、一揆などが起き、時の政権は転覆してきた。作家の濱田浩一郎さんは「大河ドラマ『べらぼう』(NHK)では幕府老中の田沼意次(渡辺謙)が米価の高騰を解決するようだが、実際は意次は有効な手を打てなかった」という――。

凶作で米価が高騰、田沼意次はどうしたか?

「米が、ない?」

「おととしの米なら」

そんな予告編が流れた、大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(NHK)第26回「三人の女」では、2025年の今に通じる米価の高騰が描かれます。


浅間山の大噴火による降灰と冷夏による不作で米の値段が高騰し、江戸幕府の要職にある老中・田沼意次(渡辺謙)らが対策に追われるのでした。ドラマにおいて意次は商人らに「米の値下げを命じよ」と指示。しかし効果は薄く、有効な対策をとれず、紀州徳川家の徳川治貞(高橋英樹)に叱責されるありさまでした。結局、意次らは米問屋や仲買が売り惜しみをしないよう米に関連する「株仲間」を廃止し、難局を乗り切ることになりました。

これが今回の概要ですが、ここには大きな嘘があると筆者は感じます。その嘘が何かは後で見るとして、それではまず、株仲間とはいったい何かということを見ていきましょう。

株仲間とは端的に言うと「商人・手工業者たちによる特権的な結合組織」のことです。商人らの同業者仲間は元来より存在していましたが、それが株仲間として公認されたのは8代将軍・徳川吉宗(1684~1751年)による享保の改革の時です。

画像
狩野忠信画「徳川吉宗像」(画像=徳川記念財団蔵/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

徳川吉宗の時代は米価が安く、幕府は苦心

享保期は米の値段が安い状態でした。ところが米が安い代わりに米以外の商品の値段がかなり高くなっていたのです。これは「米価安の諸色高」と呼ばれています。徳川吉宗は「米将軍」として有名ですが、それは幕府の財政再建のため新田開発と年貢の増徴を行なったこと、米の値段を引き上げるのに苦心したことに由来しているのです。

「令和の米騒動」が起こっている今から見ると信じられないことですが、では吉宗はなぜ米の値段をわざわざ引き上げようとしたのでしょう。それは、米の値段が安い状態が続けば、年貢米が増えたとしても財政収入の増加に直結しないからです。そこで幕府は物価を安定化させるため、また奢侈品しゃしひん禁止令の励行のため株仲間を公認したのでした。

幕府は株仲間を公認し、それに営業の独占を認めると共に、株仲間を通じた流通・商工業の統制を図ろうとしたのです。流通の統制を図り、主要商品の価格を落ち着かせようとしたのでした。しかし、幕府の努力にもかかわらず(1732~33年の享保の飢饉の時を除き)、米価の安い状態は続きます。

詳細を見る

この記事を読んだあなたにおすすめ

画像

https://kidsna.com/magazine/article/entertainment-report-250630-12911437

2025.07.08

ニュースカテゴリの記事

「イクメンって言葉が嫌い」は男女の分断を広げる?【てぃ先生×治部れんげ】
子育てや教育のテーマを元に読者から集めた質問にゲストスピーカーと対話する動画記事コンテンツ。