日体大なのに「腕立てわずか1回」「レースに出たくないと駄々」…ヨワヨワ21歳が400mで日本新を出せるワケ

日体大なのに「腕立てわずか1回」「レースに出たくないと駄々」…ヨワヨワ21歳が400mで日本新を出せるワケ

コーチに優しく諭されながらどうにかレースに向かう

トラック1周で競う陸上400m走。トップレベルの選手はほぼ無酸素で走りきる「究極の無酸素運動」競技だ。スポーツライターの酒井政人さんは「7月4日からの日本選手権に初出場ながら日本新を期待されているのがフロレス・アリエ選手。親のルーツは、ペルー・イタリア・日本にあり、生まれと育ちは日本。6月に、日本人国籍を取得した」という――。

トラック1周400mほぼ無酸素…女子日本新が出るか

7月4~6日に開催される日本陸上競技選手権(東京・国立競技場)に注目の選手が初出場する。女子400mにエントリーしているフロレス・アリエ(21歳、日本体育大学)だ(予定:予選4日16:25~、決勝5日17:30~)。

これまで日本陸上界では、室伏広治(母:ハンガリー出身)、ケンブリッジ飛鳥(父:ジャマイカ出身)、サニブラウン・アブデル・ハキーム(父:ガーナ出身)ら、いわゆる「ハーフ」と呼ばれる選手が活躍してきた。しかし、フロレスの場合は少し事情が異なる。

父親はペルーと日本、母親はイタリアとペルーにルーツを持つ。いわゆる「クォーター」であり、静岡県浜松市で生まれ育った。日本語での会話も不自由なくできる。

「両親はスペイン語で会話していますが、自分はスペイン語が話せません。でもスペイン語は理解できるので、両親には日本語で返答しています」

ユニークな家庭で育ったフロレスは中学から陸上競技を開始。静岡・東海大翔洋高2年時のインターハイ女子400mで6位に入っている。しかし、3年時は自分の走りを見失い、体重も増加。スランプに陥った。

日体大に進学後もしばらくは苦しんだ。入学直後にハムストリングスを肉離れしたこともあり、体重が60kgを超えた時期もあったという。それでも8kgの減量に成功すると、才能が開花する。

昨季は自己ベストを高校2年時の56秒20から53秒03まで大幅短縮。関東インカレは400mを制すと、200mでも2位に入った。大ブレイクした一方で、ペルー国籍だったフロレスは日本選手権に出られず、「悔しかった」という。

10月の佐賀国民スポーツ大会成年女子300mで従来の日本記録(37秒08)を上回る36秒79で優勝したが、「日本記録」とはならなかった。

そんなフロレスが注目を浴びたのは今年5月3日に行われた静岡国際での女子400mだ。日本歴代2位のタイムを持つ松本奈菜子(東邦銀行)を最後の直線で抜き去り、51秒71をマーク。丹野麻美(福島大)が保持していた日本学生記録(51秒80)を20年ぶりに塗り替えると、日本記録(51秒75)を上回ったのだ。

自己ベストを一気に1秒以上も更新したフロレス。「出したというより、出ちゃったみたいな感じです」と自身の記録に驚いていた。この快走で彼女の存在がメディアで大きく報じられるようになった。

5月中旬の関東インカレはセカンドベスト&大会新となる52秒82で連覇を果たすと、「ラストの向かい風を考えると53秒台後半かなと思っていたので、52秒はビックリしています」と笑顔を見せた。

6月上旬の日本インカレは「日本選手権に合わせて練習の一環」で出場。「10割で走らなくても学生一の意地を見せようと思っていました」と53秒43で連覇を飾っている。

そして昨年から申請していた日本国籍が6月18日付けの官報で取得したと告示された。

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2025.07.07

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