「びしょ濡れ&電車運転見合わせ」の悲劇はこれで避けられる...『ZIP!』気象予報士が教える「ゲリラ豪雨」のサイン
お天気コーナーの"ひとこと"に注目して
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6月から夏にかけて時折起きる豪雨。退勤時にゲリラ豪雨に見舞われて電車が止まって困った……という経験をもつ人も少なくないだろう。どうすればゲリラ豪雨に遭わないのか。『ZIP!』(日本テレビ系)お天気コーナーに出演する気象予報士の小林正寿さんが、危ない天気の兆候や、情報の読み解き方を解説する――。(聞き手・構成=ジャーナリスト・笹井恵里子)
その正体は「とても背の高いスリムな雲」
ゲリラ豪雨のゲリラとは、ベトナム戦争中に行われた奇襲作戦などの「ゲリラ戦」からとられた言葉。予期せぬ点や、予想が難しい点がゲリラ戦と似ていることから、“狭い範囲での豪雨”のことをゲリラ豪雨と呼ぶようになったそうです。戦争を思い起こさせるという理由で、使用を控えたほうがいいという声もあります。正式な気象用語ではなく、気象庁では使用していません。
突然のどしゃ降りの雨の表現で「婆おどし」(急に降り出した、おばあさんをびっくりさせるような強い雨という意)という言葉もありますが、テレビで言ってもほとんどの人はわからないでしょう。ですから僕は「局地的豪雨」という意味で「ゲリラ豪雨」を使ってもいいと思っています。多くの人に情報が伝わって命を守ることが大切です。
なぜ短時間に局地的な激しい雨が降ってしまうのでしょうか。
夏の積乱雲(鉛直方向へ発達した巨大な雲)は高さ15kmくらいに達するなど、とても背が高くなるのが特徴なのですが、横幅は数km程度とスリムな体型のことも多いです。そのため短時間に一部の地域だけ、激しく降るのですね。外出中にそんなスリムな積乱雲にたまたま遭遇してしまうと、突然の豪雨に見舞われることになるのです。実際にゲリラ豪雨に降られると、傘が役に立たないほど。
気象予報士の“ひとこと”に注目して
ですが前々からゲリラ豪雨を「いつ、どこで降るのか」を予想するのは非常に難しいのです。低気圧や台風など大きな雲の集団による雨と違い、ゲリラ豪雨は一個もしくは数個の積乱雲が引き起こす現象だからです。一つの積乱雲がもたらす現象は、30分~1時間程度で局地的な範囲に限られます。小さなものを目で見るのが難しいように、天気の現象も規模が小さく狭い範囲で起こる現象は予想しづらいのですね。でも3~6時間くらい前になってくると、だんだん予想が当たるようになってきます。
ゲリラ豪雨に遭わないためには、まず天気予報の気象予報士の声に耳を傾けてください。「大気の状態が不安定」「天気が急変する可能性」と言っていたら要注意。積乱雲が発達しやすく、強い雨、雷雨の可能性があるということです。プラス竜巻などの激しい突風や雷、ひょうなども起こり得ます。
気象予報士が「上空に寒気が流れ込み」「暖かな湿った空気が流れ込み」などと言う時も、積乱雲が発生しやすいことを意味しています。暖かい空気は上へと昇り、冷たい空気は下へと降りようとします。上昇気流が強まり、大気の状態が不安定になって積乱雲が発達しやすくなるのです。