「コミュ力のなさ」でも「内向的な性格」でもない…1対1は平気でも、人が増えると突然話せなくなる根本原因
「コミュニケーション本」が教えてくれない"脳科学的理由"
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人が集まる場が苦手という人がいる。対策はあるのか。静岡産業大学経営学部の岩本武範教授は「コミュニケーション能力の不足が原因と考える人がいるが、そうではない。脳の処理能力から考えれば、その現象はいたって正常だ。多くの人にとって“4”という数字が一つの境界線になっている」という――。 ※本稿は、岩本武範『なぜ4人以上の場になると途端に会話が苦手になるのか』(サンマーク出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
「複数人での会話がつらい」根本原因
「少人数だと話せるのに、複数になると急に話しづらくなる」
この原因は何か。
まずは、その正体を明かすところから始めましょう。
「話すスピードを相手に合わせなさい」
「まずは聞きなさい」
「あいづちを打ちなさい」
「伝え方を変えなさい」
「『オウム返し』をしなさい」……。
世にあふれるコミュニケーション本のなかでは、そんな会話のノウハウがさんざん語られてきました。あなたもひとつや2つ、読んだ覚えがあるかもしれません。
しかし、はたして何名の人が、苦手とするコミュニケーションを克服できたでしょうか。「話し方」も、「伝え方」も、「話の中身」も相手によって変わります。一辺倒に「こうすればいい」というものではない、私はそう思います。
だから、こういうコミュニケーションのノウハウは根本の問題を解決できていません。でもそれは、当然です。なぜなら「コミュニケーションが苦手」、もっというと「複数いると話しづらい」原因はまったく別なところにあるから。
「コミュ力不足」ではなく、「脳」の問題
では、いったい何が原因かというと、ずばり「脳の処理能力」です。
会話をしている間、誰かが話すと、それを聞き、あいづちを打ったり、自分も発言したりして反応する。そうすると、それにまた相手が反応する。
「会話」というのは、こういう言葉と思考の応酬です。
相手の話を聞いて理解するのも、自分の意見を言葉にして話すのも、すべて脳がおこなっています。会話中、脳はそれらを処理すべく、フル稼働しているのです。
そして人数が増えると、当然ながら話す人が増え、入ってくる情報も増える。さらに、「誰に話すのか」という選択肢も増える……ということは、脳が処理すべきことが必然的に増えます。
1対1であれば、脳はなんなく処理できますが、複数になると処理が間に合わなくなり、言葉が出てこなくなったり、相手の話にうまく反応できなかったりする。
「複数いるとしゃべれない」これはつまり、脳がパンクしている状態なのです。
1対1は平気でも、複数の会話が苦手。
この原因は、「話し方」でも、「伝え方」でも、「話の中身」でもなく、この「脳の処理能力」にあります。
ですから、複数のコミュニケーションが苦手なのは、何もあなたが口べただからではありません。むしろ、これまでの調査や研究で知るかぎり、多くの人が「4人以上の場が苦手」なのです。