そりゃボーナスが減るわ…同じ人件費で「新卒初任給アップ」のため中堅の年収50万円ダウンという理不尽
「ボーナス原資を切り崩し月給を上げる」企業で起きる逆転現象
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夏のボーナス支給時期。新入社員の初任給が上がる一方、中堅社員のボーナスは減る企業がある。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「企業は人材獲得のため新入社員の年収を増やしているが、先輩社員との逆転現象に苦慮している」という――。
「新入社員の初任給が増え中堅のボーナスが減る」という悲鳴
2025年も、人手不足による人材獲得競争を背景に初任給の大幅な引き上げが相次いでいる。しかしその一方で中堅社員からは悲鳴が上がっている。
「弊社、賃上げするらしく、私の給料が50万円減って新卒~3年目の給料が大幅に上がりました! ええ~泣いてもいいですか?」 |
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というSNSでの投稿が反響を呼んだ。つまり新人の給与を上げる一方で、中堅社員の給与を引き下げた会社への憤りだ。いったいどういうことなのか。
投稿したのは中小食品メーカー営業職のAさん(30代)。会社の業績はこの数年、右肩上がりで、Aさんはボーナスなどでその恩恵を受けてきた。ところが今年、経営陣が賞与制度の変更を全社員に通知してきたという。
同社の賞与は夏と冬以外に3月の決算賞与の計3回支給されていた。夏と冬はいずれも月給の1カ月、3月は営業成績も影響するが、概ね4~5カ月分が支給されていた。この3月の期末ボーナスを今年度から廃止するという通告があったのだ。
期末ボーナスがなくなり、30代社員の年収が50万円ダウン
最大の理由は、廃止によって新卒の初任給をはじめ入社3年目までの社員の月給を3万円アップし、若手社員の年収を引き上げることにあった。Aさんは「経営陣からは『新人の離職率が高いので年収を上げたい』という説明があった。新人はこれまで決算賞与がなく、年収が見劣りしていたので、引き上げれば就活サイトを見る学生の検索に引っかかるとも考えたのではないか」と語る。
しかし、中堅の社員にとってはたまったものではない。Aさんは「3月の賞与が出なくなると年収は50万円も下がってしまう計算に。子どもも小さく、生活費の補填として当てにしていたが、なくなるとこれまで以上に生活が苦しくなる」と吐露する。
では新人のように月給が大幅に上がるかといえば必ずしもそうではない。これまで中堅社員の定期昇給は3000円だった。人事評価しだいで5000円~1万円の上げ幅となり、夏と冬の賞与も従来の1カ月から評価しだいで1.5~2カ月分に増える。だが、上がる可能性があるだけで確実にもらえる保障はない。たとえ賞与が最大の2カ月分ずつもらえたとしても年間4カ月分で、これまでの5カ月分には届かない。
Aさんは「中堅社員が新卒の時、安い給料で働いていたのに、そのことを会社は忘れているんだろうか」と不満な気持ちを打ち明けている。