やっぱり現代は「新しい戦前」といえる…哲学者が考える「膨大な人の命が奪われる大惨事」の意外な発端
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人類はこの先どんな道を歩むのか。哲学者の竹田青嗣さんは「世界はごく少数のスーパーリッチと大多数の貧しい人々の二極化という構造になりつつある」という。同じく哲学者の苫野一徳さんとの対談を、共著『伝授! 哲学の極意』(河出新書)より一部を紹介する――。
アメリカで分断が起きているワケ
【竹田】私は、戦後から1980年頃までの資本主義の状態を、資本主義の黄金時代と呼んでいます。ところがそのあと、世界の経済構造に変化が生じます。石油価格の高騰やその他の理由で、先進国の経済成長がのきなみ3%以下に落ち込んでくる。そこで先進国は経済政策を大きく転換します。それがいわゆる「新自由主義」(経済学者フリードマンなどが主導。小さな政府、金融緩和、市場原理主義など)です。
ここで、それまでの産業中心の資本主義が金融中心の資本主義に大きく変わる。一つ象徴的なデータがあって、1980年を境に実体経済と金融経済の規模が完全に逆転して、それまで実体経済が金融経済を主導していたのに、現在では、金融経済と実体経済の格差が10年で14倍にも広がったといったデータもあります(「ゴールドオンライン」連載「お金をばらまいても経済が盛り上がらないのはなぜ?」より)。
世界の資本主義は、ひとことで産業や技術力の競争から金融力の競争になってしまった。私はこの新しい流れを超金融資本主義と呼んでいます。この80年代以後の金融中心の資本主義の競争は、ひとことで格差、つまり貧富の差を大きく加速しました。
アメリカはこのゲームで勝ち組になり、日本は負け組になった。日本は一時マイナス成長までいきましたね。ただし、アメリカが勝ち組といっても、実質は富裕層だけが大きく資産を増やし、中間層と下層の人々は貧しくなっている。このことがいまのアメリカのトランプ現象や大きな分断の原因になっているんです。