NHK・Eテレと一線を画すセンス…深夜のギャン泣き赤ちゃんが一瞬で泣き止む東大卒テレ東女性P「神コンテンツ」
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民放初の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」(テレ東系)が人気だ。番組コンテンツを動画で流すと、「深夜に大泣きする赤ちゃんが寝静まった」といった育児ママからの反響が相次いだ。2児の母である東大卒のプロデューサーに視聴者に支持されるためにどのような工夫をしているかフリーランスライターの桜田容子さんが聞いた――。
育児で追い詰められる親の気持ちが分かった
「これを見せると、不思議と赤ちゃんが泣きやむ」
「なかなか寝つけない赤ちゃんでもコテッとなる」
民放初の乳幼児向け番組「シナぷしゅ」(テレ東系、平日朝7時半~)が子育て中の親を中心に熱い支持を受けている。
クレイアニメ、パペット、切り絵、歌など、1~2分間の長さの個性と彩り豊かなコンテンツが売りだ。鉄板人気は、「絵本の読み聞かせ」やジャンルに囚われないバラエティ豊かな「うた動画」、さらに「どてっ」「ガシャン」などのオノマトペを強調したコンテンツだ。全体的に教養を売りにするNHKのEテレとは一線を画すセンスと視聴者に寄り添おうとするフレンドリーさが感じられる。
2020年4月のレギュラー放送開始とともにまたたくまに口コミで広がり、YouTubeの公式チャンネル「シナぷしゅch」も展開。放送直後に本編を配信するほか、YouTubeオリジナルコンテンツも豊富。その中でも2022年に公開され、YouTube限定で配信中の寝かしつけ用オルゴールBGM(きらきら星、モーツァルトの子守歌などのメロディが流れる中、赤ちゃんと番組のキャラクターであるシナぷしゅが一緒に布団の中でスヤスヤ寝ているアニメ画像)の動画は、2025年5月現在で280万回の再生数を突破するなどバズっている。
この大ヒット番組の生みの親は、自身も2児の母親であるテレビ東京の飯田佳奈子統括プロデューサーだ。桜蔭中高を経て、東京大学文学部フランス文学科を卒業後、2011年テレビ東京に入社。2018年に長男、2022年に長女を出産した。「シナぷしゅ」発案のきっかけは、自身の育児経験にあったと振り返る。
「一番つらかったのは、長男が生後2カ月頃。当時は1~2時間の細切れ睡眠が続いていて心身の疲労がピークに達していました。育児書に書いてあることと違って、全然思い通りに寝てくれない。ありとあらゆる手を尽くしました。フランス人の友達からもらった音の鳴るフランス語の絵本も読みきかせましたが、効果は……。
子供を産むまでは、虐待などの痛ましい事件のニュースを聞くたび、そんなことするくらいなら子供を産まなければよかったのにって思っていました。でも、いざ自分が出産して育児をしてみると、その背景がちょっと想像できるようになったんです。
もちろん現実では理性でカバーできるので赤ちゃんに手を上げることはありません。ただ、頭のどこかでは一線を越えてしまう人の気持ちが少しだけ理解できる。もともと子供がすごく好きで望んで出産した私でさえそうやって追い詰められたわけですから、誰だってあまり子供が好きじゃない人や出産を望んでいなかった人は、危険な精神状態になりうると思いました。だから、少しでも子育てに寄り添いたいという思いで、この番組を企画しました」(飯田さん・以下同)
当時乳幼児向けのテレビ番組はNHKのEテレがあったが、「フィットしない赤ちゃんもいるはず。大人と同じように、赤ちゃんにも選択肢を作りたい」と思ったそうだ。
番組の企画を提出したのは、育休から復帰直後。その頃の飯田さんは、バリバリ働きたい気持ちとは裏腹に、保育園から呼び出されては早退する日々。「悔しい。でも、こんな私にしか書けない企画書がある」と、渾身の思いで書き上げ、提出した。以前、営業担当をした経験から、乳幼児向け商品のCMを打ちたい企業が潜在的に多いことを知っており、勝算はあった。実際、企画が通ると、CM依頼は殺到した。