「ポルノサイト閲覧」の70%は就業時間帯に集中する…パソコンを監視して判明した「"忙しい"が口癖の人」の正体
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仕事は「楽しいもの」なのか。デンマークの人類学者、デニス・ノルマークさんと、哲学者のアナス・フォウ・イェンスンさんは「それは幻想だ。調査によると、自分の仕事に満足している人は、世界的にみて、たったの13%にすぎない」という――。 ※本稿は、デニス・ノルマーク、アナス・フォウ・イェンスン著、山田文訳『忙しいのに退化する人たち』(サンマーク出版)の一部を抜粋、再編集したものです。
60歳、税務署員。職場のデスクで息絶えた
2004年1月16日、フィンランドの首都ヘルシンキの税務署で、年配職員が机で死んでいるのを同僚たちが見つけた。職場で人が死ねば当然心を乱されるだろうが、そこで過ごす時間の長さを考えると、オフィスでたまに死者が出るのは避けられない。だが、60歳のこの忠実な職員の死は普通でなかった。発見されたときには、すでに死後2日経っていたのだ。
職場で人が死んで誰も気づかないとは、普通ではありえないことのように思えるが、似たような話はインターネット上にたくさんある。みんなが机で死んでいるわけではないが、誰にも気づかれずにほかの手段で「退勤」している人の話がたくさん見つかる。
アメリカのIT企業がセキュリティチェックをおこなったところ、あるスタッフが仕事を中国に外注してYouTubeやeBayで時間をつぶしていることが判明した。給料のごく一部を、瀋陽の見知らぬ中国人プログラマーに送っていたのだ。
2012年に65歳で退職したドイツ人エンジニアは、1998年から仕事を一切していなかったことを経営陣と同僚に打ち明けている。「仕事」の最終日にメールを一斉送信し、自分の仕事の中身を徐々に奪っていった再編計画や合理化、責任の委譲についての考えを吐露した。
なぜこんなことが起きるのか
その状態に誰も気づかなかったのは、そもそも彼が何をしているべきか誰もわかっていなかったからだ。14年間毎日出勤し、オフィスでのらくらして高収入を得ていた。ようやく正式に退職を迎えたが、キャリアにはずっと前に終止符が打たれていたといえるかもしれない。
こうした話を聞くと、オフィスの現状と向き合わざるをえない。週37時間なんの問題もなく働く人もいれば、何年も何もせずにいてお咎めなしの人もいる。これはいったいなぜだろう? 仕事の世界は、実際どれほどうまく機能しているのだろう? 人々が職場で感じていることを、どうすればうまく把握できるのか?
ギャラップ社の「世界の職場の現状」(State of the Global Workplace)は142カ国のあらゆる種類の企業を評価した報告書で、仕事の満足度を測る最善の手段の1つとして認められている。
近年の調査結果は、非常に気の滅入るものだ。単刀直入に言うと、仕事の満足度は世界中で最低レベルに落ち込んでいるようなのだ。あまりにも深刻なので、ギャラップはこの状態を地球規模の危機と表現している。