「〇〇の奥さん」と呼ばれたくない…奥さん呼びする相手にやんわり伝える角が立たない“切り返しフレーズ”
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結婚や出産を機に、自身の名前ではなく「○○の奥さん」や「○○ママ」などと呼ばれるようになり、モヤモヤしたことはありませんか。 今回お話を伺った古舘理沙さんも、人気講談師・神田伯山さんとの結婚後、同じ悩みを抱えたことがあるそう。「“呼ばれ方”によるモヤモヤとどう向き合ってきたか」お話を伺います。 ※本記事の初出はこちら『はたらく気分を転換させる深呼吸マガジン りっすん』です。また、インタビューは2025年1月時点の内容です。
「個人」の努力や歩みを認識してもらえない憤り
――「周囲からの呼ばれ方にモヤモヤする」と過去のインタビューで語られていましたが、結婚前後でどのような変化があったのでしょう。
古舘理沙さん(以下、古舘):私は20代で古典芸能に惚れ込み、当時勤めていた会社を辞めて起業し、寄席演芸のプロデュースを生業としてきました。
しかし、伯山との結婚を機に、仕事の現場で「神田伯山さんの奥さん」と呼ばれることが増えて。結婚する前までは「自分の名前」で呼ばれることが当たり前でしたが、結婚した途端、同じ業界で同じように仕事をしているにもかかわらず「奥さん」という呼び名に変わったことに違和感を覚えました。
「神田伯山さんの奥さん」と呼ばれる度に「私にも名前、あるんだけどな……」とモヤモヤしますね。
――それは……モヤモヤしますね。
古舘:現在は夫の所属事務所の経営とマネジメントを行っているのですが、プロデュースがうまくいき、講談師として脚光を浴びるようになってからは「奥さんの良いサポートがあってこそ」と言われることが増えました。
私はあくまでプロとしてやっているのに、自分の仕事の功績が「妻のサポート」という評価に変わってしまったんです。
「○○の奥さん」と呼ばれることが嫌というよりも、個人としてやってきたことが「妻」という役割に内包されてしまうのが嫌なのだと思います……。
――自分の努力や情熱が「夫を支える妻」の役割と捉えられてしまうのはモヤモヤしますね。
古舘:そうなんです。その最たる例が、「梨園の妻」だと思います。歌舞伎役者さんと結婚した女性は、夫の活躍の裏で日々たくさんの「仕事」をこなしています。
スケジュール管理、ご贔屓(ひいき)や知り合いへのチケット販売、年賀状の作成、お中元やお歳暮の手配、ご祝儀や給与の管理、公演仲間などの人間関係の把握、子どもの稽古の付き添いなど……。全方位に気を配りながら営業、経理、広報、全てを一手に引き受けている。
「妻の素晴らしいサポート」と世間的には評価されますが、実際には社長業にも匹敵するほど大変な仕事なんです。
――大変な「仕事」を「妻なら、母親ならやって当然」と評価されがちなのは、家事や育児などにも通じるところがありそうです……。
古舘:そうだと思います。「○○の奥さん」と呼ばれることは、自分の努力や歩んできた道のりを「個人として認識してもらえない」ということですもんね。モヤモヤするのは当然なんじゃないでしょうか。