これは決勝リーグ開始の前触れに過ぎない…ウエルシア・ツルハ統合から始まる激動の"ドラッグストア再編劇"
Profile
ドラッグストア大手のウエルシアホールディングスとツルハホールディングスは、2025年12月に経営統合することを発表した。予定から2年前倒しすることになる。ドラッグストア業界で何が起きているのか。流通アナリストの中井彰人さんは「ドラッグストア業界で本格的な再編劇が起きることも考えられる」という――。
売上高2兆円超の巨大ドラッグストア誕生
ドラッグストア業界トップのウエルシアと2位ツルハは2027年度に経営統合し、売上高2兆円超の巨大ドラッグストアが誕生することになっていたが、先頃その統合時期が2025年12月に前倒しされることが発表された。これを受けて、2025年4月17日時点でのウエルシアとツルハの時価総額は合算すると業界トップ、ということになった。だが、2024年2月末での時価総額からわかるとおり、逆に言えば、それまでは1位、2位企業が統合する、といっても市場からはトップだと評価されてはいなかった、ということでもある(図表1)。
この業界の現時点での覇者と評価されているのは、マツキヨココカラであり、それに次ぐのはコスモス薬品とされているのだ。マツキヨココカラといえば、ドラッグストアを世に広めた老舗マツモトキヨシと、同じく老舗都市型ドラッグの連合体であるココカラファインの連合軍であり、売上1兆円規模でウエルシア、ツルハと並ぶ大手企業ではある。なぜ評価がこんなに違うのだろう。背景についてご存じではない方も多いと思うので、ざっくりと説明してみよう。
「大都市部の一等立地」を持つマツキヨココカラの強み
マツキヨココカラの評価が高い理由は、①収益力が高い②安定した大都市基盤を確立している、ということになるだろう。図表2が大手ドラッグストアの最近の決算状況だが、マツキヨココカラの収益力が他社比で高いのは見ての通り。
これは、マツキヨココカラが、収益幅の大きい化粧品、医薬品(薬粧)の販売力がずば抜けて高いことによる。それは②大都市基盤とも関連するのだが、首都圏中心部の一等地を最初に押さえたマツキヨと、首都圏、京阪神に強いココカラファインが連合したことで、大都市部における薬粧需要に高いシェアを持っていることによる。大都市部の一等立地は空きが出るものではなく、今後なかなか出店することは簡単ではないため、これがマツキヨココカラの収益力とその安定性の裏付けとなっている。