このままじゃ日本は大損するだけ…「日本政府はトランプ流でジブリ法を制定せよ」経済評論家が熱弁するワケ
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ChatGPTを使って自分の顔写真を「ジブリ風」のイラストにすることが流行している。経済評論家の鈴木貴博さんは「日本は一定のIP価値を持つ作品について、生成AIの作風の模倣に対して世界に著作権料を求める制度を制定したほうがいい」という――。
「ジブリ風のイラストを描けるようになった」だけではない
生成AIで自分の顔写真をジブリ風のイラストに描き替えてもらうことが流行しています。実際やってみることをお勧めしますが、遊びとしてだけでなくグレーなビジネスだと意識してトライすると非常に興味深い体験ができます。
最初にChatGPTの無料アカウントをつくったうえで、自分の顔写真をChatGPTにアップロードして、
「この画像をジブリ風のイラストにして」
と一番簡単なプロンプトを入力してみてください。
ここが面白いところなのですが、そうすると生成AIは次のように訊き返してきます。ジブリ風といってもジブリ作品にはいろいろありますが、『ハウルの動く城』か『もののけ姫』か、どのような作風がいいのかもう少し具体的に指示してください、と返事をしてくるのです。
まずここで気づくのは、生成AIはただジブリ風のイラストが描けるようになっただけでなく、具体的なジブリ作品を事前学習していることをなんの悪気もなく白状しているということです。
「『天空の城ラピュタ』風に描いて」と頼むと……
それで私の顔写真を、
「『天空の城ラピュタ』風に描いて」
と頼んでできてきたのがこのイラストです(画像1)。
お子さまにも人気の登場人物のムスカにちょっと似た感じがしますが、ムスカではありません。むしろ私に似ていますから別キャラです。
不思議なことに私の背景の空に何かが浮かんでいます。
「これがあの幻の、空に浮かぶ島なのか?」
と驚愕しますが、よくよく見ると似た感じがするだけでラピュタではありません。著作権には触れていないようなので、画像をアップさせていただきました(画像2)。
ここが今回の記事の論点なのですが、実はこのジブリ風のイラストは文部科学省の公式の声明でも著作権法には抵触していないのです。
なぜ著作権に触れないのかについては後で詳しく説明しますが、実はアメリカの著作権法上でもディズニー風やPixar風のイラストを生成させた場合に、ストレートには著作権にひっかからないことが話題になっています。
もちろんアメリカ企業の中には「3つの黒い円が重なっている」だけで訴訟リスクがちらつく会社もあるのですが、それでも作風というアイデアは著作権では保護できないようです。
さて、なぜ著作権に抵触しないのかを説明する前に、この記事では先に「ビジネスとしては何が論点なのか」を整理してみたいと思います。