「ピロリ菌除菌」「塩分を控える」あと一つは…北里大教授が指摘「胃がんの発症を予防できる」意外な生活習慣
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胃がんはかつて、男女共に死亡率が最も高い主要がんだった。しかし近年では死亡率が下がり、男性は3位、女性は5位まで下がっている。北里大学医学部の比企直樹教授は「ピロリ菌の除菌や正確ながん検診によって、胃がんでは死なない時代が近づいている。さらに生活習慣を改めることで予防も可能だ」という――。 ※本稿は、比企直樹『100年食べられる胃』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
かつての国民病「胃がん」は予防時代へ
胃がんはかつて、罹患数、死亡率とも男女で第1位の主要がんの代表でした。しかし近年はだいぶ状況が変わってきています。
罹患数では、男性は前立腺がん、大腸がん、肺がんに次ぐ第4位。女性においても乳がん、大腸がん、肺がんに次ぐ第4位に後退しています。また死亡率についても、男性が肺がん、大腸がんに次いで第3位、女性は大腸がん、肺がん、膵臓がん、乳がんに次ぐ第5位にまで下がりました。
背景には、日本の胃がんの大半はピロリ菌感染が主要因だということがあります。そのため、現在では、胃カメラ(上部内視鏡検査)で慢性胃炎が見つかった胃がん予備軍の患者さんに対しては、ピロリ菌の除菌が保険でできるようになり、国民総除菌時代がはじまっています。
とはいえ、胃がんと新たに診断される人の数は、2019年の1年間で12万4319例(男性8万5325例、女性3万8994例)。2020年に胃がんで死亡した人の数は4万2319人(男性2万7771人、女性1万4548人)にものぼり、依然として大勢の人を苦しめている病気であることに変わりはありません。
死なない時代へと向かう胃がん医療
ただ、それでも今後は、「胃がんは、除菌治療によって予防可能な時代になってきている」という事実を踏まえて、ピロリ菌の除菌や塩漬け及び塩蔵食品摂取を控える等の予防が進むことで、日本における5大がんに位置付けられている胃がんも、長期的に著しく減少していくものと思われます。
環境整備の向上によって、若年者のピロリ菌感染率も急激に低下しているので、それは決して遠い将来の話ではなくなってきています。さらに、がん検診では胃カメラの普及によって早期発見率が高まり、治療法もどんどん進化しています。これからは死亡率もどんどん低下し、胃がんでは死なない時代がやって来るのではないでしょうか。
がんの中には、予防可能なものがあり、その代表が胃がんです。
予防可能ながんの主なリスク要因には、能動喫煙、飲酒、感染、過体重、運動不足があるのですが、胃がんは、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)の感染を防いだり、除菌したりすることで、発症をほぼ予防できることがわかっています。実際、衛生環境が改善されたことで、近年感染は劇的に減っています。