トランプの「同盟国いじめ」が止まらない…「防衛費を払え」と迫られた"日本と英国"がこれから直面する難題
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防衛費の積み増しを探るスターマー政権
米国のトランプ政権による圧迫を受けて、北大西洋条約機構(NATO)に加盟している欧州の各国で、防衛体制を強化する動きが模索されている。例えば英国では、キア・スターマー首相が2月25日、防衛費を2027年までに名目GDP(国内総生産)の2.5%まで引き上げ、29年5月以降の次期総選挙後は3%にするという目標を発表した。
世銀によると、英国の防衛費は2023年時点では2.3%だったから、これを29年までに0.7%ポイント引き上げるわけだ(図表1)。一方スターマー首相は、増額する防衛費の財源を確保するため、いわゆるODA(政府開発援助)の水準を現状の名目GNI(国民総所得)の0.5%から0.3%にまで引き下げ、防衛費に充てると発表した。
GNIとGDPは異なる概念だが、英国のODAは名目GDPとの対比でも0.5%程度である。これを0.3%に引き下げ、浮いた0.2%分の資金を防衛費に充てるということになる。この方針は与党・労働党内でも議論を呼んでおり、反対の立場だったアンネリーズ・ダッズ閣外相(開発担当兼女性・平等担当)は、首相への抗議のため辞任した。
ODA予算は154億ポンドから92億ポンドへと、実に5分の2も圧縮される。そのため、中東やアフリカ、ウクライナなどにおける英国の人道支援活動の継続が困難になる。これでは国際社会での英国の立場が低下し、米国際開発局(USAID)の予算の削減に邁進するトランプ政権と同じ穴の狢であると、ダッズ元閣外相は指摘する。