「人生、徐行運転」でも世界一になれた…「金色」を知らない全盲スイマーが金メダルを獲ったメンタル術

「人生、徐行運転」でも世界一になれた…「金色」を知らない全盲スイマーが金メダルを獲ったメンタル術

人生の壁にぶつかった時はどうすればいいのか。2021年東京大会、24年パリ大会と2大会連続で金メダルを獲得した全盲スイマーの木村敬一さんは「私は絶好のチャンスをみすみす逃すような『徐行運転』で人生を送ってきたが、それでも金メダルを2回獲ることができた」という。作家・ノンフィクションライターの長谷川晶一さんが聞いた――。 ※本稿は、マイナビ健康経営のYouTubeチャンネル「Bring.」の動画「徐行運転でも確実に前進せよ! 誰もがぶつかる『人生の壁』は、どうやって乗り超えればいいのか?」の内容を抜粋、再編集したものです。

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パリ・パラリンピックの競泳男子50メートル自由形(視覚障害S11)決勝で力泳する木村敬一。金メダルを獲得した=2024年8月31日、パリ郊外(共同)

2歳で失明、金メダルの「金色」も知らない

【長谷川晶一】著書『壁を超えるマインドセット』(プレジデント社)では、「幸福の価値基準は自分にある」と述べられていますね。そもそもご自身の「見える世界がわからない」ということから導き出された考えとのことですが、壁の乗り超え方にも通じるのではないかと感じました。

【木村敬一】僕が失明したのは、2歳のときでした。それ以前のわずかながらも目が見えていた頃の記憶もありませんから、「見える」ということがどのようなことなのかもわかりません。要するに、「見える」という概念を持っていないのです。

僕がずっと願っていたパラリンピックの金メダルをはじめて手に入れたのは、2021年に行われた東京大会でした。金メダルというのはどうやら凄く輝いているらしいのですが、それがどのような色なのか見当もつきません。

そのためか、じつは金メダルをもらった瞬間にはそれほど感動することもなかったのです。でも、表彰台に立って日本の国歌を聴いたとき、「金メダルを獲れたんだ!」ということをはじめて実感し、大きな幸せを感じられました。これは、金色を見ることができない僕だからこその感覚だと思うのです。

幸せの形は人それぞれ

【長谷川晶一】目が見えないことで、見える人には感じられない幸せもあるということでしょうか。

【木村敬一】幸せは人それぞれということですよね。パラリンピック競技をしていると、四肢欠損の選手と触れ合う機会もあります。僕からすると、「大変そうだな……」と思うこともあるのですが、彼ら彼女らも僕に対して「目が見えないなんて大変そう」と思っているようです。

あるいは、僕が「目が見えないことがあたりまえ」と捉えているように、彼ら彼女らも「手足がないことがあたりまえ」と大した問題だと感じていないかもしれません。

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https://kidsna.com/magazine/article/entertainment-report-241114-84652370

2025.03.13

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