育休明けに仕事復帰しないという選択。給付金の返金の必要性や失業保険の手続きについて

育休明けに仕事復帰しないという選択。給付金の返金の必要性や失業保険の手続きについて

2017.10.04

産休や育休が終わる頃、仕事復帰するか迷う方もいるようです。復帰しないことを選んだ保護者の経験談や、育児休業給付金は返金する必要があるのか、失業保険はもらえるかなど、実際に体験した保護者の声と併せて解説します。また、仕事復帰しないメリットとデメリットや利用した保育や福利厚生サービスなどについても聞いてみました。

仕事復帰しなかった理由

産休や育休明けに仕事復帰しなかった女性たちに、その理由を聞いてみました。


勤務時間の関係


「仕事の拘束時間が長かったので退職しました。勤務条件や人間関係もあまり良好とはいえなくて、ストレスを家庭に持ち込みそうだったのも理由の一つです」(30代ママ)


「育児中の職場の先輩が時短勤務なのに毎日残業していたのを見ていたので、私は子どもとしっかり向き合って育児したかったので退職しました。今は同業他社でパート勤務しています」(30代ママ)


遅くまで仕事をしながら育児するのが難しい、という理由で退職した方は多いようです。仕事と育児の両立への不安から、まずは育児に専念したという声も複数ありました。


育児への理解が薄い


「社内が男性社員ばかりの職場だったので、育児について理解してもらえないと思い退職しました。終電で帰る日もあり、続けられないと感じました」(30代ママ)


「仕事は好きだったので続けたかったのですが、育休復帰時に交渉してもリモート勤務を許可されずフル出勤しか認められなかったので、育児との両立は無理と考えてあきらめました」(30代ママ)


社内の空気や風潮などの関係や、社内の制度面で育児と仕事の両立に対する理解が薄い、考え方が前時代的だったという理由で育休復帰を断念したという声もありました。リモート勤務を柔軟に使える環境になく出勤が必要な職種や勤務条件が育児休業からの復帰をあきらめた決め手になったという方も多いようです。

保育園とのかねあい


「当時住んでいたエリアが保育園の激戦区で、職場と反対方面にある認可外保育所くらいしか選択肢がなかったので、育休復帰せず退職しました」(20代ママ)


「時短勤務を申請しましたが、もともと出勤時間が早く遠い職場だったため保育園への送りが難しいと判断したので、退職して自宅から近い職場に転職しました」(30代ママ)


保育園の入園難や通勤距離の問題は、多くの親が直面する課題です。特に都市部では認可保育所の不足が深刻で、育児と仕事の両立を困難にしています。認可外保育所は選択肢の一つですが、費用や質の面で不安を感じる親も多いようです。


職場や自治体の支援制度を活用し、ベビーシッターや在宅勤務など柔軟な対応を検討するのもよいかもしれません。育児休業給付金の受給期間や条件も確認し、長期的な視点で判断できるとよいでしょう。


仕事復帰しないメリットとデメリット

仕事復帰せず育児に専念している方に、日々の生活で感じるメリットやデメリットについて聞いてみました。

メリット

「初めて歩いた、嫌いなものが食べられた、などの子どもの成長を近くで感じられることが一番のメリットだと感じています。日々成長していく姿を見られるのは、やっぱり嬉しいです」(40代ママ)


「子どもの生活リズムを整えやすいと思います。起きる時間と寝る時間、食事の時間などを小さい頃から徹底していたので、自分の時間も確保しやすいです。ほかにも仕事をしていたときよりも家のことに時間を割くことができるので、家事ができないと感じるストレスは減ったと思います」(20代ママ)


多くの方が、子どもの成長を側で感じられることが一番のメリットだと答えていました。身体が弱いことやアレルギーなどが心配だったので、復職せず慎重に子育てできたことで、子どもを守ることができたという回答もありました。



デメリット

「子どもが小さく会話もできない頃、家の中で子どもと2人きりで孤独を感じることがありました。また、育児と家事の両方を完璧にこなすのは難しく、しばらくしてパパにも頼るようになってしまい、少し後ろめたい思いがありました」(20代ママ)


「専業主婦になったので、働いていた頃と比べると家計や金銭面がどうしても気になり、自分の物を買うのに抵抗があります」(30代ママ)


子どもと離れずに育児をするのは、幸せでもありストレスを感じることもあるようです。一人で抱え込まず、パパや周りの人に頼りながら生活していけるとよいですね。また金銭面についてや、これまでのキャリアがストップしてしまうことの不安を抱えた方もいたようです。


復帰しない場合の育児休業給付金

育児休業終了日以降も職場に復帰しない場合、産休・育休中に受給していた育児休業給付金は、どうなるのか気になりますよね。ここでは、育児休業中の給付金について、基本的な合計額や延長時の合計額を見ていきながら、復帰しない場合についても解説します。

復帰しない場合

育児休業の開始時点で退職が予定されている場合を除き、育児休業中に退職した場合であって育児休業職場も、それまで受給していた育児休業給付金を返金する必要はないようです。


しかし、会社独自の産休・育児休暇に関する特別手当を受給していた場合は、返金する旨が会社規定に明記されているという可能性もあります。あらかじめ職場に確認しておく必要があるでしょう。


延長についてと給付金の合計額

育児休業給付金の受給期間は、原則として子どもが1歳になるまでとされています。ただし、特別な事情がある場合は、最長で子どもが2歳になるまで延長することができます。

この場合の特殊な事情とは、保育所に入所できない場合や、配偶者が疾病等で育児が困難な場合などが該当します。延長を希望する場合は、育児休業終了日の2週間前までに必要な手続きを行う必要があり、延長が認められると、最長で子どもが2歳になるまで給付金を受け取ることができます。

給付金の合計額は、育児休業開始日から最初の180日までは休業前の賃金の67%相当額です。また、延長期間中の給付金額は休業開始時賃金の50%となります。


たとえば月給30万円の場合であれば、最初の180日は月額約20万円、その後は月額約15万円の給付金を受け取ることができます。受給期間の延長は、経済的な面だけでなく、育児に専念できる時間を確保する上でも重要な選択肢となります。


出典:Q&A~育児休業給付~/厚生労働省

復帰しない場合の失業保険

退職を考えているときに心配なのは失業保険ですよね。産休・育休明けの失業保険について調べてみました。


産休・育休後に失業保険はもらえる?


書類を見ながら考える女性
※写真はイメージ(gettyimages/west)

失業保険の正式名称は「求職者給付」といい、離職日以前の2年以内に被保険者期間が1年以上ある人を対象に「失業の状態にある」と認められた場合に給付されます。


基本的に、働く意思がある求職中の人を対象とした制度なので、今は育児に専念したいという方は、すぐに就職する意思がないためという理由で対象外となり受給条件にはあたりません。


ただ、所定の手続きをすれば、受給期間を最長3年延長することができるので、妊娠・育児中にブランクがあっても、3年以内であれば求職活動をはじめたタイミングから給付を受けることができます。


手続きの方法

仕事を探し始めたいと思ったら、近隣のハローワークで給付金の手続きをしましょう。

受給開始の手続きをしたら、数週間以内に雇用保険説明会の日時が知らされます。その後28日毎の失業認定日にハローワークへ行き、受給条件を満たしているとの認定を受けると、給付を受け取れます。


認定を受けるには、28日以内に最低2回、ハローワークで求職活動を行なうことが必要です。子どもを祖父母や保育園などに預けていない場合は、一時保育をできる場所の確認も同時にできるとよいでしょう。


給付開始の時期

産休や育休明けに退職した場合、自己都合による退職扱いになります。この場合、一週間の待機期間+3カ月の給付制限がかかります。


実際に給付が開始されるのは1週間と3カ月後となりますが、指定口座に振り込む手続きのためさらに数日かかります。3カ月以上受給延長した場合は給付制限の対象にはなりません。

受給期間の延長をするには退職後30日以内に手続きが必要です。仕事復帰しないママは、延長手続きをするかどうか考えておくとよいでしょう。


給付額

失業給付がいくらかは、受給対象者の年齢と賃金日額(離職する直前の6カ月に支払われた賃金の合計を180で割った金額)によって給付率が変わります。

たとえば、29歳で賃金日額が1万7000円の人は、上限額(1万3890円)が適用されますので、基本手当日額(1日当たりの支給額)は、6945円となります。 


給付される日数は勤務年数が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上は150日となります。


出典:雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和5年8月1日から~

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育休中の休業給付金と受給条件

育休中の休業給付金について、詳しく見ていきましょう。育児休業給付金は、育児休業期間中の生活を支援するために支給される給付金です。

受給条件としては、以下の点が挙げられます。

  1. 育児休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上あること
  2. 育児休業期間中、賃金が休業開始時の賃金の80%未満に低下していること

休業給付金の支給額は、休業開始時賃金日額の67%(当初6カ月)または50%(その後)となります。

育児休業終了日までに、社内の人事部門に必要書類を提出する必要があります。勤務条件によっては、出勤日数に応じて給付金額が調整される場合もあります。

保育サービスの選択肢

育休明けに仕事復帰しない場合でも、場合によっては子どもを預けたいことがあるかもしれません。その際の選択肢として以下のようなものがあります。

「産休・育休後に復職せず退職しました。しばらく育児に専念していましたが、やはり少しは働きたいと思い、派遣やパートで短時間はたらせる会社を探しました。その際の転職活動や派遣登録で出かけるために、ベビーシッターや一時預かりを利用しました」(30代ママ)


「ゆるく求職しながら失業保険をもらっています。月に1回ハローワークに行く必要があるので、認可外保育所や認可保育園の一時保育やベビーシッターサービスが欠かせません。美容院などリフレッシュしたいときにも助かります」(20代ママ)


育休復帰せずに育児に専念しているから、育児中は子どもを預けられないわけではありません。必要に応じて、以下のような育児支援サービスを利用することができます。

  • 認可外保育所:柔軟な利用が可能で、一時的な保育ニーズに対応しやすい
  • ベビーシッター:自宅で子どもを見てもらえるため、環境の変化が少ない
  • 一時預かり保育:認可保育園などで実施されている、短時間の預かりサービス

これらのサービスを上手に活用することで、育児の負担を軽減し、自分の時間を確保することができます。職場復帰を目指す際の準備にも役に立ちそうです。


職場復帰を考える際の福利厚生

将来的に職場復帰を考えている場合、会社の福利厚生制度を確認しておくことも大切です。職場の福利厚生制度を活用して、育児と仕事を両立した方の体験談を聞いてみました。

短時間勤務制度

「育児休業終了後、短時間勤務制度を利用しています。保育園への送迎時間を確保でき、子どもとの時間も増えました。社内の理解もあり、勤務条件も柔軟に調整してもらえて助かっています」(30代ママ)

短時間勤務制度は、育児と仕事の両立を支援する重要な福利厚生です。通常、子どもが3歳になるまで利用可能で、1日の労働時間を短縮できます。この制度により、保育園の送迎や子どもとの時間確保が容易になります。ただし、給与は労働時間に応じて減少するため、家計への影響も考慮する必要があります。

在宅勤務制度 

「週2日の在宅勤務を認めてもらい、通勤時間を削減できました。子どもの急な発熱にも対応しやすく、育児との両立がしやすくなりました。社内でのコミュニケーションには気を使いますが、仕事の生産性は上がったと感じています」(30代ママ)

在宅勤務制度は、育児中の社員にとって非常に有用な福利厚生です。通勤時間の削減や柔軟な時間管理が可能になり、子どもの急な病気にも対応しやすくなります。一方で、在宅勤務中の業務管理や社内コミュニケーションの維持には工夫が必要です。会社側も、在宅勤務者の評価方法や情報セキュリティ対策を整備する必要があるため、導入には時間がかかることもあるでしょう。

育児サポート手当 

「会社から月々の育児サポート手当が支給され、認可外保育所やベビーシッターの利用に充てています。経済的な負担が軽減され、安心して仕事に集中できるようになりました」(30代ママ)

育児サポート手当は、育児にかかる経済的負担を軽減するための福利厚生制度です。保育費用や育児用品の購入など、幅広い用途に使えることが多いです。この手当は、育児休業給付金とは別に支給されることが多く、職場復帰後の経済的な不安を軽減する効果があります。

受給条件や対象期間、合計額などは会社によって異なるため、詳細を確認するようにしましょう。

復職支援プログラム 

「育休中に会社の復職支援プログラムに参加しました。最新の業務情報を得られたほか、先輩ママ社員との交流で不安も軽減されました。スムーズな職場復帰につながり、育児と仕事の両立にも自信がつきました」(30代ママ)

復職支援プログラムは、育児休業から円滑に職場復帰するためのサポート制度です。スキルアップ研修や情報提供、メンタリングなどが含まれることが多く、長期離職による不安や技術的なギャップを埋める効果があります。

また、同じ立場の社員との交流は精神的なサポートにもなります。会社にとっても、優秀な人材の流出を防ぎ、スムーズな業務再開につながるメリットがあります。


復帰しない場合でも育児休暇明けを有意義に過ごそう

ママと赤ちゃん
※写真はイメージ(gettyimages/itakayuki)

仕事と育児を両立するのも、退職する前向きな理由を見つけ、育児に専念している方もどちらも自分で選択したことに悔いを残さずやっていけるとよいでしょう。


産休・育休後に仕事に復帰しないでよかったと感じている方や、退職したけど、落ち着いたら認可外保育所などに子どもを預けてまた働きたいと休業給付金を受給しながら仕事を探す方もいるようです。育児児休業給付金や失業保険の受給期間や合計額について十分に理解し、長期的な視点で経済計画を立てるのがよいかもしれませんね。


働いている職場の社風や社内の雰囲気、出勤時間との兼ね合いなどを考慮しながら、育休明けにどう過ごしたいか具体的にイメージし、育児休業終了日までの期間を有意義に過ごせるとよいでしょう。


2017.10.04

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