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【小児科医監修】A、B、C型と複数の種類があるインフルエンザの予防法
治療方法や薬、ホームケアや注意しておくこと
Profile
上高田ちば整形外科・小児科 副院長/日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科医会 こどもの心相談医
上高田ちば整形外科・小児科 副院長/日本小児科学会 小児科専門医/日本小児科医会 こどもの心相談医
上高田ちば整形外科・小児科 副院長。小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。
毎年猛威を振るうインフルエンザですが、A、B、C型と複数の種類があります。今回はインフルエンザの症状や原因、潜伏期間、感染経路、流行時期について解説します。またかかってしまったときの治療方法や薬、ホームケア、薬を飲まないで完治できるのかについても詳しくご紹介します。インフルエンザをよく知って家族でしっかり予防しましょう。
インフルエンザとは
インフルエンザは、大人が感染しても全身状態が強く出やすく大変な感染症ですが、とくに子どもにかかった場合、子ども本人は当然ですが看病する大人もつらい思いをします。
インフルエンザは飛沫感染と接触感染を引き起こしますが、感染力が強く、学校保健法や保育所における感染症対策ガイドラインでも、幼稚園や保育園でも登園停止期間が設けられている感染力の強い病気です。家族に感染者がいる場合や保育園、幼稚園、住んでいる地域などで流行している時期には注意が必要です。
インフルエンザの原因や感染経路、具体的な症状を見ていきましょう。
原因
インフルエンザの原因となるのは、インフルエンザウイルスです。インフルエンザのウイルスにはA、B、C型と複数の種類があるため、1度感染してもほかの型に免疫がないと、同シーズン中に再度感染することがあります。毎年流行する型も変わります。
症状
・38℃以上の発熱
・頭痛
・関節痛、筋肉痛
・倦怠感
・嘔吐、下痢
風邪と同じようなのどの痛みや咳、鼻水も伴いますが、普通の風邪と比べて発症初期から発熱、倦怠感、関節痛など全身症状が出るのが特徴です。
インフルエンザA型は、熱のアップダウンがあることが多いようです。インフルエンザB型は、初期は高熱が大して出ない場合や、嘔吐や下痢などお腹の症状が中心の場合など、流行する型によって特徴が異なることがあります。また、同じシーズンの中でも流行する型は変わっていきます。((例)12‐1月はA型が流行したが、2月頃になってB型が流行する、など)
特にまだ十分に免疫力がついていない乳幼児や幼児は、感染しやすく、症状が重症化したり、熱性けいれんや脳症、肺炎などの合併症につながりやすいので注意が必要です。
インフルエンザの感染
インフルエンザウイルスはとても感染力が強いため登園や登校禁止期間が法律で定められている病気です。インフルエンザの感染について詳しく見ていきましょう。
潜伏期間と流行時期
インフルエンザの潜伏期間は、1~3日間程度です。発症後、1週間程度は感染力があり、発症から3日程度は感染力がピークになります。
例年、12月~3月に流行することが多く、短期間で感染が拡大し保育園や幼稚園でも学級閉鎖になることもあります。
感染経路
インフルエンザウイルスの感染経路として以下のようなものが知られています。
・咳やくしゃみで飛び散ったウイルスを鼻や口から吸いこむことによって感染する「飛沫感染」
・感染した人が手にウイルスがついた状態で触れたドアノブや物を触って感染する「接触感染」
インフルエンザの予防法
インフルエンザに感染しないためにどのような予防対策がとれるのでしょうか。子どもだけでなく、ママやパパもインフルエンザの感染予防を心がけることが重要です。具体的な予防対策を見ていきましょう。
予防接種
秋口になると、自分や子どものインフルエンザの予防接種を検討しだすママやパパもいるでしょう。
インフルエンザウイルスの種類は複数あり、B型には効きにくいとされています。
また、周囲での感染があり、濃厚接触があれば予防接種で感染を完璧に防げるとは限りませんが、症状の重症化は防げるようです。
手洗い、うがい
ウイルスを体内に入れないために、帰宅時や食事の前は手洗い、うがいを忘れずに行いましょう。
マスクの着用
インフルエンザの流行時期には外出時はマスクを着用するようにしましょう。また、人ごみへの外出をなるべく控えることも大事です。
インフルエンザの診断
インフルエンザの診断は専用の検査キットを使って行います。感染初期やインフルエンザを発症して間もなくは、体内のウイルス量が少なく、検査をしても診断が下りないことがあります。
インフルエンザの検査では、鼻のなかに綿棒を入れて鼻水を採取します。痛みを伴うこともある検査なので、子どもや赤ちゃんの場合、検査をうけさせるのに苦労するということがあるかもしれません。検査を何度も受けさせないで済むよう、インフルエンザを発症してから8時間程度は経過してからのタイミングで受診するのがお勧めです。
ただ、明らかに家族内での感染があり、急な発熱をきたした場合、検査をしないでも「臨床的に」インフルエンザと診断し、治療を開始することもあります。
インフルエンザの治療法
インフルエンザにかかったときの治療法と注意点をご紹介します。
抗インフルエンザ薬で治療
インフルエンザの治療では、抗インフルエンザウイルス薬を処方されるでしょう。抗インフルエンザ薬には、「タミフル」や「イナビル」、「リレンザ」、また、新しく承認された「ゾフルーザ」などの種類があり、処方通りに正しく服用することが大切です。
タミフルは、粉やカプセル錠があります。タミフルは、1ヶ月未満の赤ちゃんにも使用が可能です。1日2回で5日間内服します。
ゾフルーザは、1回内服の錠剤です。
イナビルとリレンザは、吸入するタイプのインフルエンザ薬です。イナビルは、1回の吸引のみで治療ができます。リレンザはイナビルより吸入の回数が多いです。(1回吸入で失敗すると治療できなかったことになるので、リレンザを敢えて選択する場合もあります)
どちらの薬も、インフルエンザA、B型両方に効果があるとされています。
抗インフルエンザ薬使用時の注意点
過去に小学生から10代後半くらいの子どもの間で、抗インフルエンザウイルス薬の服用後に、急に走り出す、部屋から飛び出そうとするなど異常行動が報告されています。また、まれではありますが、異常行動から転落等による死亡事例も報告されています。(2009年4月から8件(2017年8月末現在))
これまでの調査でも、抗インフルエンザウイルス薬の服用が異常行動の原因となっているかわかっていません。ただし過去にはインフルエンザにかかったときに、医薬品を服用していなくても、異常行動が現れた事例も報告されています。
昨シーズンまでは、タミフルは10歳代への処方は制限されていましたが、今年8月に、その処方制限は解除されました。しかし、インフルエンザにかかった際は、薬の種類や服用のあり、なしにかかわらず、少なくとも2日間は転落などの事故が起こらぬよう、子どもの行動をよく把握しておくことが大切です。
インフルエンザの際のホームケア
子どもがインフルエンザに感染したとのホームケアのポイントをご紹介します。
こまめな水分補給
インフルエンザでは高熱や食欲不振、下痢などの症状がでるため体内の水分が失われやすく、特に子どもや赤ちゃんが感染した場合は脱水症状に要注意です。スポーツ飲料や経口補水液などで積極的な水分補給を心がけましょう。
消化の良い食べ物
インフルエンザでは高熱や全身の倦怠感などから食欲が落ちることがあります。おかゆやうどん、バナナ、豆腐、ゼリーなどのどごしや消化がよいものにするなど配慮が必要です。
消化の良いもののなかでも、子どもが好んで食べられるメニューにするのがベストですが、子どもに下痢などの症状があるときには、アイスなどの冷たいものは控えるようにしましょう。
温度の調整
発症初期など子どもが震えたり寒がっているときは、熱が上がるサインです。衣類を増やして身体を温め、熱が上がりきったら、少し薄着にするように意識しましょう。
反対に暑がっているときには、冷たいタオルや保冷剤をタオルに包んで、脇の下や頭、足の付け根など大きな血管が通っている部位に当ててあげると子どもの身体も楽になります。
入浴
熱があるときでも、子どもや赤ちゃんに食欲や元気があれば入浴してもよいですが、高熱や頭痛があったり、元気がないときには入浴は控えるようにしましょう。一方で汗をかいたら、濡れたタオルなどでこまめに身体を拭くなど心配りも大切です。
異常行動対策
異常行動は主に10代の子どもに報告が多いのですが、乳幼児でも念のためベランダに面している部屋では寝かせない、部屋の窓は必ず施錠するなどの配慮をしましょう。一戸建てに住んでいる場合には、できるだけ1階で寝かせるようにするとよいでしょう。
インフルエンザは薬を正しく使おう
インフルエンザは、感染力が強く流行性があるため日頃の予防が重要です。予防ワクチンがあるので、流行時期になる前に予防接種を受けておくとよいでしょう。
普通の風邪より、倦怠感や頭痛が強く、突然の高熱などの全身症状がインフルエンザの特徴です。抗インフルエンザ薬を使用することで発熱期間の短縮が期待されますので、早めに解熱させることが本人にとって一番大事ということであれば、薬の使用を考慮するとよいでしょう。しかし、薬を使用しなかったら治らないわけではありません。なるべく副作用も怖いので薬は使いたくないという場合は、その選択もいいでしょう。しかし、薬を使用する場合も使用しない場合も、症状悪化の兆候がないかを確認することが非常に重要です。
流行している時期に子どもが突然の高熱や倦怠感を訴えたときは病院を受診し、医師の判断に従って検査を受けましょう。インフルエンザと診断されたときは医師の診断で処方された薬を正しく服用することが大切です。
感染を広げず、早く完治させるためにも、薬の使用量や回数、登園停止期間を守りましょう。
監修:千葉智子先生(上高田ちば整形外科・小児科 副院長)
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千葉智子
上高田ちば整形外科・小児科 副院長。小児科専門医として、その時代に合った子どもの医療の実践を心掛けている。3児の母として子育てをしながら、現役で活躍中。外来では、ホームケアの方法を分かりやすく説明し、自宅に帰ってから自信をもって看護できるように、保護者への説明を丁寧にするように心がけている。子育てに関する疑問、不安、工夫など、何でも相談しやすいクリニックを作り、「子どもの笑顔を作る」ために活動。
※記事内で使用している参照内容は、2018年10月19日時点で作成した記事になります。