「これって効くの?」お医者さんが考える、民間療法やサプリメントとの向き合い方

「これって効くの?」お医者さんが考える、民間療法やサプリメントとの向き合い方

2017.03.08

世の中には病院での一般的な治療以外に、いろんな民間療法やサプリメントなどがあります。「頭が良くなる」「身体の調子が良くなる」「背が伸びる」「おばあちゃんの知恵」「自然派」…など、さまざまです。それは本当に効くのでしょうか?医師が考えてみました。

著者:箕島みな

内科医として約10年間地方の病院・診療所に勤務した後、現在は総合診療医として非常勤勤務しながら、二人の子どもの育児中

医師の本音

世の中には、病院で一般的に行っている治療以外に、様々な民間療法 やサプリメント、健康食品などがあります。「これって効くの?」 と思ってネットで調べてみても、いろんな意見があってよくわからない…という方が多いのではないでしょうか。

そこで今回は、そんな民間療法やサプリについて、医師である筆者が外来で聞かれた時にどんなふうに答えているか、そして、本当はどんな風に考えているのかを書いてみたいと思います。

忘れられない指導医の対応

それは10年以上前、著者が研修医として内科を研修していた時でした。ある癌の患者さんが、癌に対する民間療法について、指導医に質問しました。

「先生、○○療法っていうのを聞いたんですが……?」

インターネット上の情報もまだ少ない時代、患者さんはご自分で情報を集められて、真剣に質問されたのだと思います。その時私はまだ研修医で、その「○○療法」についても知らなかったので(当然ですが、医学部では民間療法については習わないのです)「ふうん『○○療法』っていうのがあるのか、帰ったら調べてみよう」と思いながら、指導医がどんな返事をするのか聞きました。指導医ならその「○○療法」を知っていて、的確なアドバイスをするだろうと思ったのです。

ところが、指導医の対応は、私の予想とは違いました。

「あ、私はやっていません。○○療法をご希望でしたら、他の施設へ行ってください」

冷たいな、と私は感じました。とても優秀で尊敬していた指導医だったので、その時ちょっとがっかりしたことを覚えています。

こちらの記事も読まれています

膨大なデータと経験に裏付けられた「医学」

でも自分が医師として経験を積むうちに、どうしてその医師がそんな発言をしたのか、だんだんわかるようになってきました。

私たち医師が実践している「医学」は、膨大なデータと経験に裏付けられています。たとえば、ある病気の時にどんな治療をすると「どれくらい良くなるのか」ということを何万人という単位で調査し、また「その調査の方法が妥当かどうか」ということを常に厳しく科学的に追及しています。

その研究の結果は「ガイドライン」となり、患者さんにとって最善の治療ができるようにまとめられています。医師は、医学を信じています。それは、膨大なデータと経験に裏付けられたものだからです。

民間療法では「○○を飲んだら治りました!」などと宣伝されますが、治療効果の検証が不十分なものも多いと考えられます。「○○を飲んだら治りました!」と宣伝しているモデルさんは、ひょっとしたらたまたま治っただけかもしれません。ですが民間療法を推奨する業者は、ビジネスのために検証が不十分でもそれを売ろうとします。

そもそも、本当にしっかりとした治療効果があるならば、病院で保険診療として治療できるはずです。

強制することはできないけれど

ですから、医師としては、患者さんには「民間療法や高いサプリメントを摂るよりは、一般的な医学に頼って欲しいな」と思っています。しかし、どんな治療をするかを決めるのは患者さん自身ですから、強制することはできません。

あの時の指導医が「他の施設へ行ってください」と言ったことを患者さんに冷たいように感じましたが、今では「患者さんの選ぶ方法を尊重する」という、指導医なりの真摯な態度だったのかもしれないなと考えています。患者さんにも医学を信じて欲しい、でも医師がそれを「強制」することはできないからです。

どうお答えしているかの実例

さて、実際に私の外来では、民間療法やサプリメントを使いたいという患者さんには、以下のようにお答えしています。

■まず、それが「明らかに有害」な治療法であれば、「やめた方がいい」と申し上げる。

■「あまり効かないかもしれないけれど、有害でもない」と思われるグレーゾーンのもの(実際にはこれが多い)は、患者さんの様子を見て、答えを選ぶ。

■例えば、「孫が○○のサプリを買ってくれたんですよ〜」と嬉しそうなおばあちゃんには「よかったですね〜」とニコニコ同意する。

■「○○療法を勧められて、やってみたんですけど……」と高額な民間療法に戸惑っておられるようなら、「民間療法よりも、保険適応でできる○○という治療がありますよ」とお答えする。

と、患者さんのご事情を推し量りながら、ケースバイケースで対応しています(医師によって対応は異なると思います)。

その治療が本当に必要かどうか

もし事前にご相談していただけたら、医学的に考えてその治療が本当に必要なのかどうかを医師が一緒に考えることができます。たとえばビタミンのサプリメント等は、本当に必要ならば保険診療で、市販よりずっと安く処方することができます(ただし、普通にお食事が摂れている若い方では、サプリメント自体が必要ない場合が多いです)。

もしも民間療法やサプリメントなどを使うかどうかを迷うことがあったら、個人的には、一度ぜひ医師に相談してもらえたらうれしいなと思っています。


著者:箕島みな

記事一覧

内科医として約10年間地方の病院・診療所に勤務した後、現在は総合診療医として非常勤勤務しながら、二人の子どもの育児中

トラブルカテゴリの記事

天才はどう育ったのか?幼少期〜現在までの育ちを解明

天才の育て方

この連載を見る
メディアにも多数出演する現役東大生や人工知能の若手プロフェッショナル、アプリ開発やゲームクリエイターなど多方面で活躍する若手や両親へ天才のルーツや親子のコミュニケーションについてインタビュー。子どもの成長を伸ばすヒントや子育ての合間に楽しめるコンテンツです。ぜひご覧ください。
夫婦2人で全部は無理?「子育て・家事・仕事」現代子育てに素敵な選択肢を

共働き家庭が増加している昨今、夫婦ともに実家が遠いと、どうしてもシッターが必要になることもあるのではないでしょうか。今回の記事では、共働き家庭のママが有資格者のみが登録できるKIDSNAシッターのサービスをはじめて利用した様子をレポートします。